『杏寿郎さん!!甘露寺様の隊服の様子が変です!』
「蜜璃って呼んでよ灯華ちゃんっ」
『そんな場合ではないですっ。前を隠して下さいっ』
「だって前閉まらないんだもの〜っ」

煉獄が炎柱を担う前、紹介したいと連れて来た弟子の甘露寺とはすぐに打ち解け仲良くなれた。可愛くて素直で優しい彼女が鬼の頸を切るため刀を振るう…そのことに初めは驚きもしたが、話しをしてみて煉獄の弟子に相応しい人物だと灯華は思った。病弱で物を知らない自分と対等の立場で接してくれるその思いやりに満ちた温かさが、煉獄に良く似ていたからである。

『こんな仕立てはあんまりですっ』
「でもほらっ、動きやすいよ?」
『女性隊士の隊服は全てこうなのですかっ?』

そんな良き友となってくれた甘露寺がめでたく鬼殺隊に入隊した。最終選別通過を嬉しく思い、お祝いをしたいからと彼女を屋敷に招いた灯華。嬉々としながらやってきた甘露寺を笑顔で迎えたのだが、着ている隊服を見るなりその表情はみるみるうちに青ざめていき今に至るのだ。ひぃぃ…と顔を引き攣らせる灯華の肩に手を置き、煉獄が割って入った。

「あられもないだろう!だが正式な物だそうだ!」
『えぇっ、これがですか!』
「うむ!」
『う〜ん…正式なら、仕方ないですね』

納得はいかないが隊で決められた隊服ならば仕方がないと苦い表情を浮かべた。

「それより灯華ちゃん!煉獄さんから聞いたよ」
『え、何をですか?』
「煉獄さんが炎柱になったら、灯華ちゃんを外に連れて行くって約束のお話!私感動しちゃったよぉ〜」

ふえ〜ん!と灯華に抱きつきながら「私煉獄さんがお休み取れる様に頑張るね〜っ」と彼女なりの気遣いを見せてくれる甘露寺。本当に優しい子だなあとしみじみ感じながら、穏やかな笑顔を隣にいる煉獄へと向けた。病気の話を甘露寺にした時、知り合って間もないと言うにも関わらず、彼女は泣いて悲しんでくれた。初めはどうして灯華や敬愛する師範にそんな試練を与えるんだと悔やんでいたのだが、今はしっかりと現実を受け止めてくれている様だと煉獄から聞いた。本当に感謝している。

『ありがとう甘露寺様。でも無理はなさらないでね』
「うぅっ、灯華ちゃん優しいから大好きっ」
『ふふっ、私もです。貴女が杏寿郎さんのお弟子さんで良かった』
「灯華…!」
「灯華ちゃぁぁんっ!」

前から甘露寺、横からは煉獄に抱き寄せられてもうよく分からないまま二人に笑顔を浮かべると、その刹那ー、ずっとこの場所に居たいと強く思った。もっともっと長生きをして、もっともっと大切な人たちとの幸せな時間を共有したい。二人の温かい体温を感じながら、心底そう思った。




*前次#