「炎ノヨウナ色ノ髪ダァッ!」
「へぇ〜っ。間違いないんだ、劣鬼(れっき)」
「間違イナイ!オレハ間違エナイ!間違ウハズガナイ!」
「怒るな怒るな、分かったから」
「賢鬼(けんき)ガオレヲ疑ッタ!疑ッタァァッ!」
紅葉が黒く見える程入り組んだ深い森の中。
月明かりに照らされた二匹の鬼が静かに語らい合っている。童の如く地団駄を踏み、感情を爆発させている鬼の名は劣鬼。人間とは程遠い、妖怪、化け物、そんな表現が適当な容姿をしている。自分が疑われたことに酷く逆行して、許セナイ!許セナイ!ともう一匹の鬼へと怒りをぶつけ鋭い歯を鈍く光らせた。
「だから怒るなって。疑っちゃいねぇよ、ただそれが本当ならドえらいご馳走にあり付けると思ってよ」
「ソウダ!ソウナノダ!オレハイツモ腹ガ減ッテル!イツモダゾ!」
「ああ、分かってるって。だから遥々移動して来たんだろ?」
「半分ズツダ!独リ占メスルナ!!」
「おいおい劣鬼〜っ、そりゃあまた人聞き悪いぜ」
いや、人じゃねぇから鬼聞きか?とふざけた口調で笑った賢鬼と呼ばれた鬼は、劣鬼とは違い知性があり流暢に人の言葉を話している。見た目も完全に人に近い様をしているが、一目で鬼だと見て取れた。賢鬼が大きな岩の上に腰掛けると、ようやく自分よりも大きな体を持つ劣鬼と視線を合わせることができる。
「オレたちゃ兄弟だぜ?独り占めなんかするかよ」
「縦ニ半分体ヲ引キ裂イテ食イタイ!腹減ッタ!」
「上手くいけば十二鬼月に昇格できるかもな!」
「絶対食ウ!アノ男モロトモ殺セバイイ!」
「あれは柱だろ?下手に戦っても馬鹿見るだけだ」
「ダガアノ男カラハ別ノ"稀血ノ女"ノ匂イがシタンダ!隠シテル!」
一度やめた地団駄を、再び再開する劣鬼。
「稀血にあり付ける機会は本当に少ない。逃しては損。ここは慎重に動くぞ、劣鬼」
「逃ガシテハ駄目ダ!アノ鬼狩リガ隠シテル!稀血ヲ!独リ占メダ!」
「フフフフッハハハハハッ!どんな味だろうなぁっ」
待っていろよ、稀血ぃ。
絶対お前を、喰ってやるから。
忍び寄る影
(三章.始)
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