さあっ、みんなで焼き芋をしましょう!
両手を重ねて心底楽しそうにそう言った灯華の言葉に、皆が心を躍らせた。集めた落ち葉から白い煙が立ち込める中、縁側に腰掛け芋が焼けるのを待つ三人。甘露寺たちはお菓子を作りに厨房へ。遊び相手がいなくなった十四紀の標的が煉獄に移ったのは言うまでもない。

「勝負しろよ杏寿郎!芋焼けるまでさ〜!」
「しつこい!無理だと言っている!」
「なら稽古付けてくれよ!オレは将来炎柱になるんだから!」

そう言いながらぴょん!っと縁側から飛び降りた十四紀が煉獄の前に立ち、勢いよく小さな拳を突き出した。灯華と同じ青色の瞳が、憧れの炎柱を前にきらりと輝いている。煉獄は好奇心旺盛で元気がいいのは結構なことだ!と笑顔を浮かべ、わしゃわしゃとその頭を撫でつけた。

「オレにだって曾曾曾爺ちゃんの血が流れてんだ!」
『柱を目指さなきゃ宝の持ち腐れになる、でしょ?』
「そう!支援じゃなくて鬼をやっつけたいんだよオレは!」

これは十四紀の口癖のようなものだ。お鶴の祖父が鬼殺隊の柱を担っていたという武勇伝を聞いてから、鬼狩りという存在に強い憧れを抱くようになった。そして実際、煉獄杏寿郎という柱を目の当たりにした時から、その憧れが目標に変わったのだ。

「だが君は長子だから、家業を継がなくてはなるまい!」
「藤の家は姉ちゃんが継げばいいだろ〜っ!」
『……』
「桃葉も居るしさ〜。母ちゃんは嫁に行った身だから無理だけど」

十四紀の言葉に灯華の表情が一瞬曇ったのを、煉獄は見逃さなかった。本来であればお鶴の跡を継ぎ、藤の家を守るのは灯華の筈なのだ。しかし彼女に与えられた時間はあまりにも短く、いつ終わるかも分からない戦いを見届けることは出来ないのだ。幼いいとこ二人は灯華の病のことは知らない。体が弱いとだけは伝えてあるが…。
瞳を伏せて答えに困っている灯華を横目に、煉獄がいつもの調子で助け舟を出す。

「灯華は煉獄家へ嫁ぐのだから無理だろう!」
『…!(杏寿郎さん…)』
「あーっ!それ鶴婆から聞いたぞ!オレまだ良いって言ってない!」
「もう遅い!言っておくが返さないぞ!」
「姉ちゃん取りやがって!やっぱり勝負しろ!杏寿郎!」

こんにゃろー!と言いながら振り回される木の棒を、余裕の笑みを浮かべながらビシッと片手で受け止める煉獄。そんな活気ある二人のやり取りを見つめながら、灯華は心の中で『ありがとう、杏寿郎さん…』と呟いた。

「なら刀振らせてくれよ!それで許してやる!」
「それも駄目だ!」
「だぁぁぁ!さっきからダメダメばっかだな!腹立つ!」
『こら十四紀、いい加減にしなさい』
「なんだよ!姉ちゃんには持たせるくせに!」
「当然だ!彼女は俺の妻だし、刀の扱いを知っているからな」
「ちぇっ。なんだよそれ。姉ちゃん贔屓!」

ぶーぶーと口を尖らせて納得のいかない表情を浮かべる十四紀に、煉獄がハ、ハ、ハーと腕を組み笑う。つられるようにして灯華が笑顔を浮かべると、トタトタと急ぎ足の音が聞こえて来る。視線を向けると満面の笑みを浮かべて駆け寄って来る桃葉の姿が映り込んだ。

「おかしできたよー!」

とても穏やかなこの束の間に、煉獄は隣に座る灯華の左手を取りぎゅっと握りしめると、愛おしむように目を細めて微笑んだ。

『貴方が居るといつも賑やかですね、杏寿郎さん』


愛おしい日々は、
君の
笑顔が連れて来た


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