これはまだ、入学したての虎杖と釘崎が、五条と純の関係を知らされていない頃の話し。

「……は?????」

その日、修行中のグラウンドの端で、虎杖が思わず声を上げた。

「ちょっと!急に大っきい声出さないでくれる!?」
「お前も五月蝿いだろ」
「ああ!?」
「いや無理無理無理無理!!無理っしょあれ!!」
「だからうるさっ…」

虎杖が指差した先。
そこにいるのは先ほどまで自分たちの指導に当たっていた純と、いつから居たのか分からない五条の姿。ベンチに座っている純の隣に五条が腰を下ろしているが、虎杖が違和感を覚えたのは二人の物理的な距離感。

「近くない!?!?」
「いつもあんなじゃない?」
「あんなだろ」

いたって冷静な釘崎が即答すると、虎杖が全力でそれを否定する。

「いやいやいやいや!今日の近さレベル違うって!なあ伏黒!」
「んなことどうでも良い…」

関心の無いフリをしながらも、ちらっと二人に視線を向けた伏黒。その瞬間。

「確かにちょっと近いな…」
「でしょ!?!?!?」

二人の関係を固く口止めされている伏黒だが、さすがにアレはないだろうと表情を歪め、五条先生わざとやってんな…と内心つぶやく。

『五条先輩離れてください』
「やだ。あ、さっき伊地知からこんな連絡きたよ」

五条が自然な動作で純の肩に肘を置き、スマホの画面を見せる。

『任務ですか?』
「ううん。僕のわがままで悠二入学させたから、上がめっちゃくちゃキレてるって」
『それで?』
「純も一枚噛んでるだろって」
『…え?』
「だから僕らに呼び出しかかった☆」
『先輩話しついてるって言ったじゃん!』

そんな二人のやり取りを、ショックを受けたような表情で見つめている虎杖。そして叫ぶ。

「あれ付き合ってる人の距離じゃん!!!」
「いや無い。純先生があんなふざけた教師選ぶわけない」
「………」
「いやでも明言されてなくない!?」
「そうだけど100%ないわよ」
「なら余計にアウトじゃん!!!」
「というか…問題そこじゃねえだろ」

伏黒が死んだ魚のような目をしながら口を開く。

「教師があれって、普通に教育的に良くねえだろ」
「はい!俺もそう思います!」
「ガキね。別に問題ないでしょ」
「あるよ!!俺の情緒に!!」
「あんたの情緒?」
「純先生とあんなん羨ましい!!!」
「「…………」」

拳を握り、悔しそうに唇を噛み締めた虎杖に、伏黒と釘崎は引きつった表情を浮かべた。



俺の名前は虎杖悠仁。
タッパとケツのでかい女が好きな、超健全な16歳男子校生。俺たちの副担任、橘華純先生は、明るいし優しいし強いし、ちゃんと褒めて叱ってくれるめっちゃいい大人!そして何より!見た目が異次元。田舎じゃ見たことないってくらいレベル高くて超美人。都会すげえって洗礼を受けた俺は、普通に純先生のことを好きになった。

「五条先生と純先生っててさ…」
「ん?」

だからもう、本人に直接聞くしかねえ。

「付き合って…」
『付き合ってない。先輩と後輩ってだけ』

圧倒されるくらいの即答。
隣で五条先生がヘラヘラと笑う。
だけど納得できねえ。

「だとしても二人、なんか距離感近くない!?!?」

そういうと、

「え、そう?」

五条先生はガチで分かってない顔で首を傾げた。
いや嘘だろ。無意識なの?この人。

『…ちょっと離れてください』

純先生が五条先生を普通に押しのける。

「ひど」

本当に仲が良いだけ…にも見えなくはないけど…。

「で、何?もしかして悠二…」

五条先生がニヤニヤしながらこっちを見る。

「羨ましいの?」
「羨ましいっすよ!!!」
『………』
「生徒の俺らより青春してるじゃないですか!!」
「青春って年齢じゃないでしょ僕ら」
「してるもんはしてる!な、伏黒っ」
「俺に振るな」

気まずそうに表情を歪めた伏黒を見て、五条先生がめちゃくちゃ楽しそうに笑う。

「へえ。そんなに羨ましいと」
「うっす!」
「どこが?」
『先輩やめてください』
「えーと……なんかこう……自然なのがいい!」
「自然?」
「うん!無理してない感じっていうか!」

恋人っていうより、先生たちは昔からの親友って感じがする。気づいたら隣にいるのが当たり前みたいな。そう言うと、一瞬、純先生がこっちを見る。

「あと!」

まだ止まらない。

「なんかめっちゃ楽しそうじゃん」

ビシッと指差す。

「普通に理想!」
「お前何言ってんだ?」
「え?ダメ?」

あ、やばい言いすぎた?って思った瞬間ーー、

「だってさ」

五条先生がくすっと笑う。

『…生徒に何言わせてるんですか』

鬱陶しそうに五条先生を手で押し退ける純先生。
でもその声は、ちょっとだけ柔らかい。

「まあ僕ら仲良いから」

五条先生が軽く肩をすくめる。

「見習って青春してよ。呪術師といえど恋愛は自由!」
「こんな仕事してたら堅気は無理だろ」
「それは頑張って」
「雑!!!」
『悠二ってどんな女の子がタイプなの?』
「え、純先生」

ーし〜ん……。

「えっ、何この沈黙!?」
「やっぱ悠二は駄目だ。まだ恋愛は早いよ」
「ですね。宿儺の器は監視対象ですし」
「ひど!!俺華の高校生よ!?」
「精神年齢が小学生じゃちょっとね〜」
『自分のこと棚に上げて良く言えますね』
「ひどくない!?」

でもまあ、悔しいけどーー

「…先生たちが仲良いと、なんか楽しいからまあいっか」

そんな風にちょっとだけ思った。
そんな高専生活のはじまりが、俺には楽しみで仕方なかった。

〜END〜


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