閃光


夜明け前に恋を置いてきて@


「実は、ボンゴレリングは君たちが持っている物とは別に、もう一つあるんだよ」
そう言って九代目が見せてくれたのは純白のリングだった。ツナ達が持っているリングは元々ハーフリングで盾のような板にボンゴレのシンボルが刻まれた装飾だったが、目の前のガラスケースに重蔵に仕舞われたそれには透明な美しい宝石が輝いている。
「風のリングだ。初代ボンゴレボスジョットの妻が最初の持ち主で……現在までで最後の使用者だ」
九代目の話によれば、風のリングには特別な炎、風の炎が必要らしい。初めて聞いた種類の炎にツナ達は慌てふためいている。風の炎とは、ジョットの奥方に特異的に発現した炎で、雨や雲と言った様々な炎がブレンドされて出来たものらしい。言葉にすればさほど珍しくはなさそうだが、ただ体に複数の炎の波動があればよいというわけではなく、ボンゴレの技術を駆使しても尚、風のリング及び炎の研究が全く進んでいないらしい。現在の見解では、個々人の突然変異として扱われているらしく、奥方以外での発現報告は上がっていない。
「更にこのリングは極めて特殊でね、持ち主を選ぶリングなんだ」
まるで自我を宿らせているように、リングを持つ資格がないものが触れようとすると、まるで何かに拒まれるかのように弾かれるという。九代目すら触れないというのだから、ひどくワガママなリングだ。風の炎がある者のみ接触できると研究者は言っているが、指輪が持ち主を選り好みするのは些か釈然としない。しかし、伝承によれば、風の炎の属性は「浄化」。邪悪を風化させ、清らかなる風を運ぶ力はひどく美しく思えた。
「君たちはボンゴレの多くを変えた。未来、過去の因縁、呪縛、罪。本当に素晴らしい偉業を成し遂げてきた」
君たちにこそ、このリングはふさわしいと思うよ。
九代目がゆっくりこちらに振り返った。九代目の穏やかな瞳が私を捉えた。この視線の交差が意味するものは私には到底わからないが、キラキラと照明に照らされて虹色に乱反射するリングが視界の隅に入って、どくんと心臓が跳ねた。
獄寺ほどではないが、私の中にも複数の炎が流れている。一応一番多い雲を主体としてリングとボックス兵器を使っているが、それでも一つの技に費やすには少なくてずっと悩んでいたことでもあった。風の炎はそれ単体の炎ではなく、いくつもの炎がブレンドされて生み出されたもの。
ああ、まさか。もしかして、九代目のあの視線は、ああ、うそ、でも、私の予想が当たっていたとしたら、それはほんとうに大変で、素晴らしいことで。期待?不安?興奮?わからない。わからないが、ツナ達の役に立てるなら、私はどんな敵でも勇敢に立ち向かおう。その覚悟はいつでもあった。
頬の高揚が自覚できた。キラキラ煌めくあの透明な宝石の輝きが私を惑わすように揺れている。ツナ達は新しい炎について話し合っていて私の様子に気付いていない。九代目は静かに微笑んでいるだけだった。

「はー。びっくりしたね」
九代目が宿泊していたホテルからの帰り道、ツナの呟きに他のメンバーも頷いていた。私も少し間を開けて同意するように微笑む。頬の赤らみは取れたといいのだけれど。
きれいだったとか、風の炎はどういうものだろうとか、ジョットの奥さんはどういう人だったんだろうとか、疑問と憶測が飛び交う。私は話題の対象は同じだったが、その胸の内は将来への羨望で溢れていた。もし、もし、私が本当にそうであれば私は喜んでリングを指に通すだろう。色は何色だろうか?ボックス兵器はどうすればいいだろう?そんなことばかり考えた私を他所に、ツナは少し悩ましげに俯いていた。
「これはその、なんとなくっていうか、漠然と感じたものなんだけどさ」と口上に添えたツナの言葉にその場の全員が話をやめてツナの方を見た。なんとなくなど常人ならほとんど気のせいと一蹴されるが、ツナには超直感がある。ツナの勘は馬鹿にできないと誰しもが痛感していた。
「あのリングさ、誰かを待ってるみたいだったんだ。然るべき時が来るまでここにいてやるよ、みたいな」
なんて、少しおちゃらけてるけど。照れを隠すように爆破した頭を乱暴にかき回すツナ。獄寺がそんなわけありませんとキラキラした目でツナの手を握りしめ、へー流石ツナだなと山本がにかりと笑った。
ぐちゃり、と胸の奥底で何か重くドロドロしたものが沸いた。
誰かを、待ってる?誰かって、誰?私じゃないの?待ってるなら、今日のあのときがベストタイミングだったはず。でも、風のリングに変化はなかった。まるで、お前など知らんと言われているようで。さっきまではあんなに美しく思えたリングが一気に薄汚い何かに見えてくるようだった。
笑いを繕うことも忘れ、呆然と足元を見つめる私に気付かず、獄寺は不思議そうに首を捻らせた。然るべき時とはいつだろうと。
「うーん……やっぱり持ち主じゃない?まだ若すぎるとか、覚悟を持ててないとか?」
ツナの適当な返答に、はっと頭に光が走った。そうだ、私はついさっき覚悟を決めたばかりだった。こんな程度の覚悟では満足に炎も出せないだろう。猶予を与えてくれているのだ。もっと美しい炎を出せるようになるその時まで。心のわがたまりが一気に吹き飛んだ気分だった。そうだ。ボンゴレの守護者たるもの、この程度で心を揺さぶられてはいけない。常に気高く、自分を保たせる芯を忘れぬよう努めないと。
「どうかした?」
ツナが私の顔を覗き込んでくる。何でもないと今度は心の底からの笑顔を見せて数歩先を歩いた。世界はこんなにも美しい。私もこんな美しいものになれるのかと思うと、足取りは自然と軽くなった。

ドロドロした何かがまだ、胸の内に存在していることに目を背けて。




「なあ沢田、これ多分首に掛けてるやつと同じシリーズの指輪だと思うんだけど……なんかよくわからんうちに部屋の机の上に転がっててさ、どこに保管してても気付いたらポケットに入ってんだけど、何これ?曰く付き?お祓いいる?」

そう言ってクラスメイトの彼女が見せた物はつい数日前突然行方不明になったと知らせが来たあのリングで、本来なら誰にも触れられない筈のそれを彼女は平然と摘まんでいて、恐る恐る覗き込んでいる透明な宝石は、特別強い光を当てている訳でもないのに昨日よりも輝きを増して煌きを放っていた。

どろりとあのドロドロしたものが全身に行き渡ると同時に、ああこれが嫉妬かと他人事のように理解したのだった。

机の上に転がっていた色の割にはゴツい指輪を見つけた瞬間、「あ、これヤバイやつ」とコンマ三秒と察した。特殊な形状がアサリなあの組織のやつだったからである。え、こんな指輪あったっけ?と思うが一瞬で、創作守護者ですねわかります!とすぐ側にあったクッションに投げつけた。え、マジ??確かに転生したては期待してたところはあったけど、中学校で天城朔というどっからどう見てもおんにゃのこなのに男装して沢田達と関わっているクラスメイトを見つけて以来はお察し状態だったから。彼女はトリッパーではなさそうだけど、まああれがモブなわけないよな。雲雀さんのお気に入りだし、よくディーノ先生に絡まれてるし、あの例の暗殺集団と仲良さげにしてたの街で見たことあったし。最近男装やめてきゃわいい女の子になってモテ期入ってるみたいだから、イベント回収お疲れ様でっす!みたいな心境だったんだよ。創作守護者かどうかまでは流石にわからなかったけど、配送先間違えてますよ!!私マフィアになる気ないからね!いやだって、二学期に入った途端生傷が絶えなくなった沢田見てガチで命の危機を感じたから。物語の展開はわかってても14歳の子どもになにさせとんねん……ってドン引きよボンゴレ。あのときは思わず声を掛けてしまったが、もしやあれがフラグだったのか?いやいや!!あのぐらい誤差でしょ!?私だって先生に頼まれたときとかプリント回収するときとか普通に山本とか笹川さんに話し掛けるからね!?なるべく関わらないようにしてるけど露骨には避けてないから!なんならクラスのヤンキーとなんかここ一年話したことないから!なんもおかしいことないよなハム太郎!?そうなのだ!全くなのだ!!
無意識の内に暴れていたのか、「朝から騒がしいわよ!」と一階にいる母から怒られた。は〜〜〜い!!とヤケクソ気味に返事に返して件の指輪をハンカチでグルグル巻いて野球選手ごときフォームでゴミ箱にシュート!私は何も知らないし見ていない!はい終了ごはん食べよ!!
どすどす階段を下りて「うるさい!」とまた怒られながらも食パンを無理矢理口に詰め込んでコーヒーで流し込んだ。やってやれるかこんちくしょー!ガチャらなきゃやってけねーよ!星5ノッブはいつやってくるの??早く夢女になりたいんだけど??
普段の無気力が嘘のように荒々しい私に引き気味の母からお弁当を受け取って三分で身支度を済ませると家から飛び出した。実は結構時間がヤバい。いやいつもなら余裕で間に合う時間なんだけど、今日風紀委員会の身だしなみチェックが校門であるからさぁ……生憎化粧にもオシャレにも興味がないため私は一度も引っ掛かったことはないが、前の人が違反して反発したりするとすーぐ滞るからそぁ……どうせ雲雀さんのトンファーが火を吹くんだからさっさとしてほしいものだ。
校門の前に着くと、時代錯誤のリーゼント集団が周囲に圧を掛けていた。こっっっわ。というか制服とはいえ旧制の学ランは校則違反ではないのかと入学したときから思ってたんだけど多分これ言ったら明日から学校いないやつだよね知ってる!チャレンジでやってた!私だけならまだしも親に迷惑を掛けるわけにはいかないので同じタイミングで登校してきた友達と合流して大人しく列に並ぶことにした。つい昨日までは男として振る舞っていたが今は立派な女子として認められたので、女子の担当は件の天城ちゃんだった。セーラーを身に纏い凛と背筋を伸ばしている様はおっぱいのついたイケメンである。男子ならここまで見ないだろうと高を括っていたケバい女子達が次々と摘発されていくのを心の中で合掌しつつ、私も一応カバンの中をチェックする。一回スマホ持ってきちゃったときはエチケットセットに隠してたらなんとか誤魔化せたが、あんなホンテットマンションよりハラハラする絶叫イベントはもうごめんである。この前の漫画明日貸すねと小声で友達と話しながらなんとなくポケットの中に手を突っ込んだ。
……ん"ん"〜〜〜〜〜?この形状、このひんやり感、嫌な予感が全身に迸る。やっぱこんなイベントラクショーだよね!と天真爛漫な笑顔を浮かべる友人にまじそれなー!と全肯定してポケットの中のそれをナプキン入れ袋の中に突っ込んでカバンの奥底にぶっこんだ。いやいやいやいや。私確かにゴミ箱に捨てたよ??家出るときも確かにくるまったハンカチあるの確認したよ??え、なんであんの??ボンゴレの呪い??こっっわ!!
「おはよう。早速カバンを見せてくれ」
とうとう私の番が来て、禁教令が発布された江戸で突然家に幕府の役人がやって来たキリスト信者の気持ちでカバンを手渡した。もしくは命からがらドイツから亡命しようとするユダヤ人。どちらにせよバレたら即☆死!みたいな。待って私星5ノッブと夏イベまでは死ねない〜〜〜。ごそごそとカバンをチェックする天城ちゃんになんもきな臭いものはありませんよアピールでニコニコ笑顔だけは保ったまま待つ。手汗はヤバいけど。あの袋を掴まれたときは口から心臓飛び出すかと思ったけど軽く揉まれて、あああれかとすぐ元の場所に戻された瞬間脳内コロンビアよ。勝ったわ。もう少し下の部分触られたら終わってたけど、天城ちゃんが女子の気持ちがわかる人でよかった!!!荷物チェックとはいえ他人にそれ見られるの結構抵抗あるよね!!その通りです女子中学生の繊細さをよくわかってらっしゃる!!一通りチェックが終わって制服を軽く見られると「問題なし。行っていいぞ」とカバンを返された。そのあとで少しスカートの長さを注意されて友達を他所に私は一人で小さくガッツポーズを残した。来たわ。この幸運値、今のガチャったら多分☆5来るわ。油断してた〜〜!とパタパタ駆け寄ってきた友人に十年に一回しか見せない笑顔を向けて教室に向かう。
頬を掠める風で心地いい。今日も世界はこんなにも素晴らしい!!あとで焼却炉にこれ捨てよう。

リングの執念こっっっっわ!!!!
朝のドキハラ体験から放課後まで何度もゴミ箱に捨てたり焼却炉に投げ入れたりボンドでガッチガチに固めてトイレに流しても、気付いたら汚れ一つない状態でポケットに入ってる件について。完全にお祓い事案。寺に奉納してきたほうがいいんじゃねぇのこれ。指に通すのは流石に怖いので取り敢えず今はポケットに突っ込んだままだが、今日の私大分情緒不安定だったと思うよ。友人に超心配されたから。そりゃことあるごとに何か(指輪)を壁に投げ付け始めたらまず頭の調子を疑うよね。正直すまないと思ってる。でも全部このボンゴレの呪いのせいなの……許して……
ボンゴレといえば、沢田達がいつもの仲良さげな空気が嘘のように重々しい雰囲気醸し出してた。さりげなく耳をすませていれば、風とか保管とか単語しか聞こえてこなかったが、リングの一言で全てお察しだよね。絶対これのせい。てっきりボンゴレがやらかしたと思ってたけど、どうやらこいつの単独行動らしい。お前人に迷惑しかかけてないじゃん……我慢覚えよ?
無機物の指輪に自我があること前提に話していることはさておき、これ私が所有していたことがバレたら結構ヤバくない??下手したら家族まるごとイタリア最大のマフィアの制裁下されるやつ?勘弁してよ私被害者なんですけど!!まじ疫病神だな!!いい加減にしろよ!!確かに頑なに平々凡々な人生を求めている訳ではないけどマフィアデビューは辛すぎるって!!跳び箱何段飛び跳びだよ。踏み切れずに激突するわ。
というか、時期的に本編は終了してんのよ。雲雀さん長期入院してたし。山あり谷あり見解の違い方向性の不一致、たくさんぶつかり合いながらもお互いを信じて今まで命懸けで手に入れた信頼が既に構築されているあいつらに「ちょりーす!新しい守護者でっす!」なんて入れると思ってる?無理だよ。あ、うん、よろしくね。みたいになるじゃん!あのとき大変だった……あ、秋山さんはこのこと知らないよねごめん……みたいになるじゃん!気まずさ1000%!絆レベルマックスだよ??もうイベントもない中であと何回周回すればいいと思ってんの??私自身特別何かの覚悟があるとは思えないしさ〜〜これ絶対なんかのバグだって〜〜〜。一回きちんと精密検査した方がいいよまじの話で。多分これ天城ちゃんが持つべきものなんだよ。いいじゃんお似合いだよ。なんのリングかは知らんがあの凛として咲く花のごとき天城ちゃんにぴったりだよきっと。多分沢田達もボンゴレズも世界も何もかも、そう望んでるし然るべきものだと思ってる筈だ。そんなもん私が持つべきものじゃないだろそれぐらいわかるわ。
もうさ〜〜〜どうしたって指輪が私の元から離れないって言うならさ〜〜〜この際死んでもいいよ〜〜〜。一回体験済みだから死というものがどういうものかわかってるし、ワンチャン別世界に転生出来るかもしれんし。もうそこで平和に暮らすわ。
あ、でも親は干渉しないで。幼い頃ってか、転生を自覚したとき私結構やばかったのよ。今まで必死に生きてきた十数年間は何だったんだって、端から見れば訳もなくぎゃん泣きしたり喚いたり勝手に暴れたりする問題児だったわけ。多分親すげー困っただろうし余計な心配もいっぱいかけちゃったんだと思う。前世を諦めてなんとか今の世界に向き合えて自分で自分を傷つけるの止めたとき、母親なんか泣いて喜んでくれたんだわ。今でも体には少し傷痕が残ってるけど、私よりもそれを悲しんでくれてるし、本当に自由に生きさせてくれた。すごく感謝してる。"親"って見れなかったときひどいこと何度もしたのに見放すことなく叱ってくれた。今なら胸張って言えるよ。うちの自慢の両親ですって。
だから、今まで私に使ってくれたお金を溝に捨てるようなことになっちゃうけど、せめてこの後の人生ぐらいは。私には願うことしか出来ないけど、我が親愛なる二人に祝福を。末永い安寧と幸福が、天空の星々の光のように注がれることを心の底から祈っています。

さぁてまずはこいつをどうやって渡すかだな…………よし!これを沢田に投げつけた直後死ぬか!カッターで首の頸動脈切れば流石に死ぬっしょ!あ、でも沢田にトラウマ残すかもしれんな……。直で見ててマジで沢田漫画以上にダメツナだなって痛感したけど、普通にいいやつだったからな。マフィアのボスという立場じゃ難しいかもしれないけど、なるべく後々幸せだと感じれるような人生を送ってほしい。あいつバカでどうしようもないお人好しだから目の前で死なれたら……うん完全にアウト!!一生もんの傷確定!それはアカン。私なんか心に残しておく必要ないから。私は単なるクラスメイト。自殺とかよくある話。現に山本やらかしかけたし。直接はダメなら下駄箱にでも入れとくか。タイミング的にお得意の超直感で勘づかれるかもしれんが気付いたときには真相は全て闇の中。後は仲間との思い出や笹川ちゃんとのイチャラブで記憶上乗せセーブしといてくれ。よし、そうと決まれば遺書と身の回りの片付けをして……あ、どうせだし残ってるお小遣いで親にプレゼントでも買うか。シャネルのカバンとか?グッチの財布とか?に、似合わねぇ〜〜〜。








『ルンルンと明日の遠足の準備をしているかのように鼻唄を歌いながら死ぬ準備をしているあなた』

『あなたが幸せを願う人の中に、あなた自身は含まれていますか?』

『全く、相も変わらず自己犠牲精神の素晴らしいお方だ』

『どうしようもないぐらい優しくて、残酷な我が主人よ』

『そんなあなただからこそ、この力は相応しいのですよ』


「やってられるかこのやろーー!!!」
キスを迫ってきた自称弟らしい沢田の顔面にストレートを決めて悶えてるうちに部屋から転がるように逃げ出した。マジでどうかしてるぜここはよぉ!!朝起きたらなんかきゃわいいお姉さんの体に精神入りこんじゃったし、なんか色んな人から脅迫紛いのプロポーズされたりさあ!!頭おかしいって神様ここバグ発生してますよ!さっさとメンテ入れてくださいそして詫び石寄越せ!!
通りかかった人たちが顔を青ざめて道を開けてくれるのをいいことに全速力で自分の部屋まで帰ると五分で準備をした。何のかって?退職だよ!!こんな毒蛇の巣みたいな職場にこれ以上いれるか!!何?マジでなんなの??確かにこの忍ちゃんかわいいよ?でも組織トップ勢がメロリンするようなほどでもないと思うんだな。というか私の意思ね??人をなんだと思ってるんだあいつらは。嫌だよ奪われるぐらいなら貴女を……!ルート。近親相姦は地雷ですさようなら!!!
スマホと財布と身分証明書とパスポートだけをバッグに詰めて部屋を飛び出す。この部屋も中々やばかったからな。大量の全方向カバー盗撮器&盗聴器。動物園のパンダかな??って感じ。多分あの様子じゃお風呂やトイレにも付いてんだろ知ってる。そういうのマジで無理だから。この身体は私のものじゃないって割り切ってるからなんとか耐えられたものの、多分これ忍ちゃん知ったら自殺するかもしれんで??プライバシーってそれほど大切なのよ??小学校の道徳の授業参加してこい。
まるで今から鬼ヶ島にカチコミにいくかのような覇気を纏いながら廊下を進む私に忠犬野郎やアルコバレーノ勢が何か言ってるが、もう私を止められる者は誰もいない。腕を掴んできた獄寺に「しゃらくせぇ!!」と脇腹に肘鉄を打ち込んで全力疾走。鼻を抑えて踞っている沢田の顔面に即興で書いた辞職願を叩き付けた。
「実家に帰らせてもらいます!!!」
あばよボンゴレ!!!自分の罪を自覚するまで私の前に顔出すんじゃねぇぞ!!


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