閃光


幼き清浄を口ずさむ


あ、やらかした。そう思うと同時に腹に重い衝撃ひとつ。こりゃ死ぬかもと一瞬で全身に駆け巡る痛みを奥歯で耐えながら他人事のように呟く。痛いし何より熱い。患部に風の炎を集中的に当ててるはものの、範囲は広いしあの一瞬で失った血液の量が多すぎた。崩れ落ちた身体は重く、指先ひとつ動かすのが億劫になる。まじかー。いやこんな職業柄いつ死んでもいいよう準備してたし覚悟の上だったけど、こんなに呆気ないものとは。沢田には悪いことをした。頼むから泣かないでくれたまえよ。まあ涙腺激弱のお前には無理な話だろうけど。視界が



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シリアス漂う殺伐とした現場にインド象が(ФωФ)!!!なんてな。目の前に表れたのはインド象でも猫でも犬でもハムスターでもなく雲ハリネズミ、ロールであった。え、おまなんでいるん……?と痛みも忘れ、矢安宮重清まではいかなくても理解不能で脳みそが埋め尽くされる私にロールはきゅぅと可愛らしく鳴いた。かわいいが私死にかけなんだけど、何?時世の句でも聞いてくれるつもりなの?ぐらぶる?FGO勢なのに他のソシャゲに手を出す戦犯野郎の生死はどうでもいいようで、ロールはくあっと戦場であるまじきあくびをひとつかまして寝転がった。ちょっと、気抜きすぎじゃない??確かにお前のご主人様はボンゴレ版阿修羅大魔王様ですけどね、お前自体はそこまででも……いやお前も結構強かったな。触る者みな傷付ける、ギザギザハートの子守歌かなって??感じだったし。
………ってちょっと待って。こいつがいるってことは阿修羅大魔王様もいるって………

「やあ、生きてるかい?」

シャ、シャベッタアアア!!!いや雲雀さんとてしゃべるよ。人間だもの。みつを。いやこんなことしてるひまはない。口を開けば吐血不可避なのでなんでいるんすか……?と視線で聞けば、ふんと鼻で笑われた。えぇ……
そして、気がついたら身体を担がれ、徹底的な迷彩効果を施された自動車(医療設備完備)に乗っけられドナドナ。風紀財団に保護された。

「少し気になることがあってね。君には世間的に死んでもらうことにした」

いや軽々しく殺すなや。むちゃくちゃ痛かったぞ。思わず近くにあった体温計を投げつけるがさっと避けられ、脳天に軽くゴヅンッ!と拳骨を落とされた。動作の軽さと効果音が一致してないぞ怪我人なんだから綿で包むように優しくして。

「その怪我は僕のせいじゃないよ。その怪我含めておかしいことがあるってことさ」
「んじゃこれは誰の仕業だったんすか……」
「天城朔。証拠はないけどね」

嘘だろ。事なげなく漏らした名前に思わず雲雀さんの顔を三度見ぐらいした。相も変わらず端正な顔立ちである。眼福。現実に帰ってこい。
天城朔とは!中学二年生の頃突然イタリアからの帰国子女としてうちのクラスに転入してきたイケメンである!しかしその正体はボンゴレファミリーから「ボンゴレ10代目候補を監視せよ」という命令を受け派遣された天才暗殺者であり、正体を隠すためスカートを捨て学ランに腕を通したおんにゃのこでもあったのだ!デデドン!!属性盛りすぎィ!!
しばらくはリボーンの知り合いとか何とかで沢田達から恐れられてたんだけど、あいつ誰でもすーぐ懐に入れるからさあ〜〜〜。最初は任務絶対だった天城ちゃんも徐々に絆されて、暗殺者として教育でなくなっていた年相応の喜び……感情が蘇りだしたらしい。
まあリング戦とか未来とかも、守護者じゃなくても沢田達を助け、ボンゴレの反九代目派に沢田暗殺を依頼されても決死の覚悟で抵抗し、ディーノさん達の協力の元、見事反勢力を壊滅させ、本当の仲間として受け入れられたのだった………。ちなみになぜ他人事かというと私が加入したのがその後だったからです。二年の冬にボンゴレ本部に長年保管してあった風のリングが行方不明になったかと思えば、日本の私の枕元に転がってるという謎現象が発生。その後の諸々は省くけど、今の主要メンバーで圧倒的に仲間入りが遅いんだよね。最初は色々苦労したぜ……まあ今じゃちゃんと受け入れられてるから……られてるよね??私だけハブられて飲み会とかしてない??話が逸れた。
驚きはあったものの、私は妙に納得してしまった。何せ天城ちゃん、私のことが好きじゃなさそうだからである。
なんでも、私が風の守護者にするという話が上がった頃からその傾向があり、私のマフィアなりたくない主張を聞いて何故かこの人なら守護者でもいいんじゃね……?みたいな雰囲気が沢田一味に流れていた中、唯一最後まで反対していたのが誰であろう彼女だったらしい。「一般人をこうやって巻き込むのは〜〜」とか「覚悟のない者に務まるほどボンゴレ守護者は〜〜」とか覚悟云々は即沢田に否定され論破されたらしいが、それでも納得できずにいたという。まあこれに関しては散々拒否ってたのに少ししてんじゃ入るわ〜って手のひらころー!ってした私が悪いところは正直ある。やるんだった最初からそう言えよみたいな。


で、正式に沢田ファミリーに入ってからもあれだよな。私と天城ちゃんが揃うと空気悪いんだわ。激重よ。転校したばかりはオールウェイズポーカーフェイスだったけど沢田達と触れあう内に笑顔を見せることも多くなった天城ちゃんが昔に戻るんですわ。感情なんていらない。だって私は暗殺者。心は必要ない……みたいなナレーションが流れそうなほどザ☆真顔。思わずいつもニコニコスマイルが眩しい京子ちゃんやハルも超戸惑うレベルに空気が凍る。こんなときどんな顔をすればいいかわからない。笑えるわけないだろいい加減にしろ。
流石にあからさま過ぎるし場の雰囲気も悪くなるとリボーンの方から注意されてからはなんとか真顔はなくなったが、代わりに無理矢理震える口角を上げて視線を頑なに合わせようとしない天城ちゃんが爆誕した。むしろこっちの方が精神的にクる。なんか私が悪いみたいな感じやん……
なんかね、山本と獄寺みたいに信頼の上での喧嘩とか、雲雀さんと骸みたいに信頼はしてないが信用してるみたいな感じじゃないの。ただひたすら嫌い。交渉など余地ない。私から話し掛けるや否や用事を思い出して……ってすぐ逃げられる。てか最近だと私とのエンカウントすら避けてるよね??私なんかした??まっったく記憶にないし、なんなら天城ちゃんとちゃんと話し出したの風のリング手にしたときからだよ??それまで同クラとはいえ接点/zeroだったよ??なに、生理的に無理ってやつ??一番心に来るやつぅ……
今までどうにかしようとしてきたんだけど、もう私も周囲もこれ以上は無理って悟り、なるべく私たちが関わらないように動くことになった。まあぶっちゃけたところ、守護者な私に対して天城はボンゴレ所属なだけの単なる構成員にすぎないっていうところもある。勿論沢田はしたっぱのしたっぱにも気を掛けるし、特別な役職のない事務員の京子ちゃん達やフリーの殺し屋のビアンキさんたちのことはちゃんと大切な仲間だと思ってるし私もそれは同じだ。でもさ、やっぱ守護者は別格なんだよね。ボンゴレリングに認めてもらったか否かってのは大きいんだよ。いくら天城ちゃんが優秀でも守護者と同等の地位には立てないし、発言権や権力も私の方がある。

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