閃光


花冠と約束の喪


ゲーティアが召喚されたとき、彼の右腕は既に失なわれていた。それに私は、何故か涙を流したのを覚えている。初対面なのに。彼のこと何もしらないのに。残った左手を両手で包み込んでぼろぼろ泣いていた。そんな私に彼は「相変わらずだな、我が憎悪よ」と呆れたような慈しむような、そんな口調で私の頬を撫でた。
グランドキャスターである『魔術王』ソロモンと、彼の魔術式であるゲーティアを一度に召喚させたせいで、暫くは魔力不足で寝込んでいた。その間、父親であるダビデに全てを押し付けたが、彼は父親らしくこの世界のことを色々説明してくれたらしい。そして、そして五日後、復活した私は真っ先に二人の元へ向かった。

二人の部屋は既に彼ら好みにアレンジされていた。空間魔術でも使ったのか明らかに元の部屋の広さより広くなっているし、天井も高い。四方にステンドグラスが嵌められ、ソファや机、謎の草花が置かれていた。二人は奥の寝室にいた。高い天井はガラス張りで満点の星空が覗いている。そして、視界を遮るように薄布がだらんと何枚も宙吊りにされ、彼らの寝台に向かうには何度も避けなければならなかった。

「やあナマエちゃん。身体の調子はどうだい?」
「遅い」

ソロモンはコンビニに売ってある百数円のアイスを、ゲーティアは同じ値段のスイーツを口に運んでいた。この豪奢な装飾の部屋にはミスマッチすぎるおやつに即刻ずっこけた。しかし、表情は天地の差はあれど、二人ともその味に満足しているようだった。

「いやあ、今の時代は便利だねぇ。コセイ?だっけ?それを聞いたときにはどうしようと心配したけど、この分じゃなんとかなりそうだ」
「どんな力を得ようとも、人間の本質は何百年前から何一つ変わっていない。愚かな生物らしいな」
「私もその人間なんだけどね……」

そう、彼らがこの時代をどう生きようかは特に問題ない。自由にしてもらって構わないが、最低限守ってほしいと思ったのが……

「ゲーティア、服、きよ」

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