楽園症候群
最近マーリンがやたら迷惑らしい。王様の玉座にブービートラップを仕掛けたり、王様の珈琲を黒酢に差し替えたり、王様の服穴が空いた部分を縫われたりと主に王様に被害が及んでいる。さすがにぶちギレた王様だったが、耐久に優れたマーリンが簡単にやられるわけがなく、屋敷内を逃げ回って被害が拡大した。この間の大規模な修復作業の原因はこれか。ケッツァコル姉さんが首根っこ掴んで宝具ぶっぱなしたことでなんとかその場は収まったが、マーリンはその後も幾度なく迷惑行為を繰り返しているらしい。
「ねぇマーリンどうしたの?確かにマーリンはろくでなしで人の心がわからないけど、ここまで矢鱈めたらに喧嘩売るような性格じゃなかったよね?」
「マイロードマイロード、今日も変わらずかわいいねぇ」
「ダメだこりゃ聞いちゃいねぇ」
サーヴァント達の苦情を飲み、事の原因をマイルームに呼び寄せたのは良いものの、花をいつもの倍近く散らせて満面の笑みで駆け込んできたマーリンに嫌な予感が過った。ベッドに腰かけて私を抱き締めると、マイロードマイロードと声を掛けるばかり。
「ボクはね、とっても嬉しいんだよ。キミ最近ずぅとボクに構ってくれないのだもの」
「そりゃあテスト期間だったし……」
「今日はマイロードを独り占めできるんだねぇ。ふふ、何をしようかな」
「マーリンあんた確信犯だな」
「ん?なんのことかな?」
にっこりと笑うマーリン。世の女性が見たらコロリと行ってしまいそうなほどイケメンだったが、そんなものに惑わされる私ではない。つまり、迷惑行為をする→他のサーヴァントがぶちギレる→マスターである私に文句を言う→私がマーリンを呼び出す、という作戦だったのだ。マーリンまじマーリン。
通りでこんなに機嫌が良いわけだ。私を膝に乗せながら、ベッドの上に散らしたDVDのケースを順に手に取るマーリンは鼻歌を歌いそうなほど上機嫌だった。因みにもう片方の腕はしっかり私の腰に巻かれている。名前 は 逃げられ ない !
「ねえマーリン、」
「うーん、ジブリかディズニーか迷うねぇ。でも洋画もいいし、いっそのこと甘酸っぱいラブストーリーでもいいかもね。ねえマイロードは何がいい?」
「何がいい?じゃなくて、今日は一緒に居られないよ」
「…………ん?よく聞こえなかったなぁ。もう一回言ってくれる、よね?」
怖い怖い怖い怖い!!手にしていた某トトロのケースを放り投げると、マーリンはそのまま私の頬に手を当てた。顔は笑顔だけど、目が笑っていない。腰に回る腕に力が入り、今にも鼻と鼻がくっついてしまいそうなほどマーリンの綺麗な顔が近付いた。
「……だからね、今日はダメ」
「何でだい?」
「テスト一日前だからだよ」
そう、年に数回しかない学年末テストは明日からである。本来なら今すぐにでも机に噛りついていないといけないが、それ以上にマーリンの被害が深刻だった為、こう呼び出したのだ。
「明日は大切な日だから、マーリンと遊んでいられないんだよ」
「……ふうん。それは困る。とても困る。これ以上マイロードにほったらかしにされたら、ボクは何をしでかすかわからないよ」
「それはダメ」
「あれもダメこれもダメ。少しばかり我が儘が過ぎるんじゃないかい?」
お前の方が我が儘だよとは言えず、本来の夢魔の感情を持たない眼差しが私を貫く。サーヴァントと見せかけて実は違うマーリンには令呪が効かない。
しかし、やってやるぜ。こちとらどんだけめんどくさいサーヴァント相手にしてると思ってんだ。
「だからね、マーリン。今度二人で遊びに行こう」
「………ボクとマイロードで?」
「うん。テストが終わってからになるけど、朝から夜までマーリンの好きなようにしていいよ」
「好きな、ように?」
「うん。……言っとくけど、その、え、え、えっち、なことはダメだよ!あくまで健全なことならなんでも付き合うってこと!」
これホント重要。でないとこの人外は何をやらかすかわからない。今ここで強引に引っ付くか、後々精一杯遊ぶかかなり迷ってるマーリンに止めの一言を突っ込んでやる。
「そうかー。せっかくマーリンに新しい服選んで貰おうと思ったんだけどなぁー」
「よしテスト後だね!楽しみにしてるよ!」
チョロい。
少々小悪魔チックになったが、コイツにはそれぐらいしないと主導権を握られてしまう。どうやら私を自分色に染めたいらしいマーリンはよく私に贈り物を届けてくる。だから服とか言ってみたが、効果は抜群だったようだ。
「テストが終わった日曜日、どこ行きたいか決めておいてね」
「ああ勿論だとも!楽しみだなぁマイロードとのデート!」
「デート違う」
しかし、実質デートなんだよなぁとは口には出さないのであった。まる。
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