※大人設定
※痛い表現があるので、苦手な方はご注意下さい。






先月のバレンタインデー、4粒で3,000円くらいする高級チョコレートと耳当てをプレゼントした。甘い物がそんなに得意じゃない勝己くんはそのチョコレートの半分を私に食べさせて満足そうな顔をしていたっけ。爆心地宛のチョコレートも大量だったので、まぁ私のチョコレートはしょうがない。

今日はホワイトデー。仕事終わりに私の家で一緒にご飯を食べ、片付けを終えて二人でソファでゆっくりしていると、普通の紙袋より数倍しっかりしている高そうな紙袋を私に渡してきた。紙袋には雑誌によく載っているブランドのロゴが上品に描かれている。これ、結構高かったはず。勝己くんをチラリと見る。


「これ、高いよね」
「あ?3倍返ししろっつったのはてめぇだろう」
「え、冗談のつもりだったんだけど。というか3倍以上かかってるよねコレ」
「いらねぇんか」
「いります」


奪われそうになった紙袋を自分の方に引き寄せた。本気で取る気が無かった勝己くんは手を引っ込めて、しのごの言わずにさっさと開けろやと開封を促すので、私はうなづいて紙袋を開けて中の物を取り出した。手のひらサイズの小さな箱。開けてみるとシルバーのオープンハートのピアスが綺麗に収まっていた。ピアスは小ぶりで甘すぎないデザインなため仕事でも使えそうだ。だけどひとつ大きな問題がある。


「私、耳に穴開けてないよ」
「知っとるわ」
「?」
「今から開ける」
「え!?今!?」


私があたふたしていると、勝己くんは立ち上がって冷凍庫から保冷剤、救急箱から消毒液を取り再びソファに座った。広いソファの端に座っていた私にこっちこいと言わんばかりに隣をバシバシ叩く。ああなんだこの怖い人。逆らえず私が隣に座ると勝己くんが私の髪を耳にかける。持っていた保冷剤を耳朶に当てられて思わずひっと声が漏れる。そんな私を無視して、片手で保冷剤を当てながら、もう片手で買ってきていたらしいピアッサーを開封している。


「ねぇ、ほんとにやるの?」
「あ?いらねぇんか」
「それはいるけど…。うう、もう耳朶の感覚なくなってきた」
「そろそろいいか」


勝己くんは私の耳朶を触って確認しているようだけど、感覚がなくなっている私には何をしているか分からない。目つぶっとけと言われ、怖いと思いながら心の何処かで勝己くんに開けられるならまぁいっかと楽観的な思いもあってぎゅっと目をつむった。耳元でバシンと音がしたと思ったら、冷やされていた耳朶がジンジンし始めた。手で触ってみると、自分の身体に今までなかったものがくっついている。


「あ、あいたー」
「痛ぇか?」
「ジンジンしてるだけで痛くはない」
「じゃあ逆向け」
「次に行くのが早い」


ちょっとは余韻があってもいいんじゃ、と言うと早く終わった方がいいだろと強制的に逆を向かされる。同じような手順で逆耳にもあっという間に開けられてしまった。
勝己くんは満足そうに私の耳朶を見ながら1ヶ月はそのままにしておくこと、毎日ちゃんと消毒することと注意する。結局もらったピアスをつけれるのは1ヶ月先らしい。残念だな。


「イヤリングだったら今すぐつけれたのに」
「いいだろ別に」
「せっかくのプレゼントなのに」


耳朶はジンジンしていたところから徐々に熱を持ち始めている。後で痛くなるのかな、いやだな。気になって耳朶を触ろうとすると先に勝己くんが手を伸ばして触ってくる。冷たくて気持ちいい。さっきまで保冷剤触ってたからか、それとも私の耳が熱を持ちすぎているのか。


「閉じんなよ」
「うん」


ぐいっと引っ張られて勝己くんの腕にすっぽりと入った。勝己くんが抱きしめるのに合わせて私も抱きしめ返す。ジンジンと熱を持つ耳元で、これで俺のもんって証ができたなと低い声で囁いた。


prev next
back