19



1学期もだいぶん過ぎた。去年もそうだったけれど、この時期になると必要最低限の道は大まかに覚えてきた。迷子になる回数が減ってきたのだ。私としてはとても誇らしいことで、人に迷惑をかけないいいことなのだ。ただ、そのため最近爆豪くんとは会う機会が減ってきている。今まで週1回は会ってたのに、2週間に1〜2回くらい。あれ、結構会ってるかも。まぁ爆豪くんも忙しいんだろうしいいことだよね。



「あ、先輩!」
「お!上鳴くん」
「また迷子っすか?」
「まだ迷子にはなってない」
「どこ行くんすか?」
「体育館」
「逆っす」
「あれ」



あれ、おかしいな。行き方友だちに教えてもらったはずなんだけど。
上鳴くんは暇だから連れてってあげますよと言って先導してくれる。なんと自ら教えてくれるなんて、ほんといい子だ!かわいい後輩を持って私は幸せ者だ。

上鳴くんと取り留めもない話をしながら体育館へ向かっていると2人の共通の知り合いで見慣れた頭を見つけた。爆豪くんだ。
上鳴くんが爆豪!と呼びかけると後ろを振り返り、私たちの姿を確認すると舌打ちして無かったことのように前を向いて歩きだした。



「うわ、見ました上鳴さん、無視ですわよ無視」
「まぁほんと!爆豪さんったら感じ悪いわ」
「「ねー」」
「うっぜェんだよクソ共が!!」
「まっ、怒りんぼ」
「怖い怖い」
「ブッ殺すぞ!」



手から火花が散っているの見て2人で口を押えた。怖い人だね爆豪くん。上鳴くんたちは同じクラスだし大変なんだろうな。チームワークとか皆無そう。
イライラしている爆豪くんにどこに行くのか聞いてみれば用事を済ませて教室に戻るところだったらしい。体育館への道のりも途中まで一緒だそうで、先頭を歩く爆豪くんの後ろを上鳴くんと2人でついていくような形で歩き出す。



「そういや先輩体育館に何の用事っすか?」
「人に呼び出されてて」



そう言うと上鳴くんは身を乗り出して告白っすか!?と聞いてきたので、どうだろうねぇとだけ返す。下駄箱に昼休みに体育館に来て欲しい旨のメモが入っていただけだから告白かは分からないし、しかも一度も話したことのない他クラスの人だ。もしかしたら果し状かもしれない。なんとも言えない。
上鳴くんはぐいぐい聞いてくるけど、実際本当に分からないから適当に受け流す。陰で見とこうかなとまで言う上鳴くんにそれは辞めてとだけ伝えた。ふと前から視線を感じて見ると爆豪くんがチラリとこっちを見ていた。



「え、なに?前見ないと危ないよ」
「趣味悪いヤローだな」
「は?」



思わぬ発言に思わず立ち止まってしまった。爆豪くんは前を向き直して歩き出す。ちょ、なにあの失礼な発言は酷くないかねぇ上鳴くんと聞くと、歯切れの悪いああうんはいと曖昧な反応が返ってきた。なんだ上鳴くんも爆豪くんと同意見ってか。爆豪くんは1人歩くペースを上げて、あっという間に私たちと距離ができてしまった。なんだか感じ悪い。私たちも早く体育館に行こうと上鳴くんを見ると、あーあと呟いて爆豪くんを見送っていた。