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「あっ」
迷子になっていたらいつものように爆豪くんに会ってしまった。こんな時でも通常運転な自分の土地勘を恨む。あれ以来爆豪くんに遭遇しなかったものの今日、今、遭遇してしまった。
ついつい目をそらす。う、気まずい。爆豪くんがどんな顔してるか全然分からないし、見るのも怖い。どうする?ここはいったん逃げる?いや、始めが肝心だ!ここで逃げるな行け自分!
「やっ、やぁ!爆豪くん!」
「おう」
「またもや偶然だね!今日は天気が良くて絶好のトレーニング日和で何より何より!」
「なに言ってんだてめぇは」
ぐっ、緊張からいつもどうやってたかよく分からん。覚悟決めて爆豪くんを見ると思った以上に普通の顔で、呆れていた。あ、なんだ、普通じゃん。ホッとした。
相変わらずの爆豪くんはもういいかと言わんばかりに私から視線を外してトレーニングを始めた。本当にいつも通りだ。私が意識してただけ、か。私もいつも通りの爆豪くんに合わせていつも通りに木陰に腰を下ろす。あー、なんか恥ずかしくなってきたぞ。意識してたのは私だけだったっぽい。自意識過剰ってやつだったんですか私。痛いやつじゃん自分。顔熱くなってきた。ぐっ、爆豪くんからかって挽回したい。爆豪くんを見るとあっちも私を見ていたらしく目が合った、と思ったら馬鹿にしたニヤリ顔。
「うぶかてめぇ」
「なっ!」
「あんくらいのことでうろたえてんじゃねぇクソ迷子」
「うぶなめんな!初めては夕暮れの公園のベンチでって決めてたのにこのクソ野郎!」
「…は」
爆豪くんと違って真面目な中学・高校生活を送っていた私にとって憧れのファーストキスは大事だったんだよこんちくしょう!というかなんか思い出してまた恥ずかしくなってきたぞ!結局意識してたのは私だけだったし、思い出し恥ずかしと自意識恥ずかしがすごい。穴があったら入りたい。
私が恥ずかしさで唸っていると、爆豪くんはこっち歩いてきた。ヤンキー座りでしゃがみこんで私をすごい顔で睨む。めっちゃ怖いんですけど、なんですかこの溢れんばかりのチンピラ感。
「おい」
「な、なによ」
「…」
「爆豪くん?」
「初めてだったんか」
「うっ」
そこ聞くか。あんまりつっこまれたくなかったんだけど。よく分からない恥ずかしい感情が出てきて俯いて、初めてで悪いかと小さく答えた。弱みをひとつ握られた気分だ。しょうがないじゃないか、個性事故に巻き込まれたんだから。
俯いている頭をぽんっと叩かれた。
なんだ、慰められてるのかこれ。顔を起こせば爆豪くんと目が合った。その瞬間後頭部を掴まれて引き寄せられた。あれ、デジャブ。唇がくっつく。個性事故で遭った個性の効果はもう随分前に切れているはずだ。なのになんでこの人私にキスしてるんだ。
離れていった爆豪くんの顔をポカンと見てしまった。相変わらず綺麗な顔してるなぁ。考えがまとまらない。なんだこれ。爆豪くんは立ち上がってアホがアホ面さらすなクソがと小さく言った。アホなのかクソなのか統一しろよ。なんで爆豪くんが赤くなってるんだ。
赤に翻弄されて