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「あ」
「え?」
自販機で飲み物を買ったところ、隣の自販機で買っていた黒髪の男子に声を掛けられた。顔をジッと見るも知り合いの顔ではない。私何かしたかなと思って見ている、その男子は何でもないっすと慌てたように言った。人違いかな、と思っていると瀬呂ー!と知っている声が聞こえて見てみれば上鳴くんが手を振ってやってきた。
「置いてくなよー!」
「だって上鳴いきなりナンパしだすじゃん」
「だってー。あれ、間宮先輩ちわっす!」
「ちわっす上鳴くん」
「なんで瀬呂と?知り合い?」
「いや、知り合いではないけど」
「俺がちょっと声上げちゃって」
気まずそうに頬をかく瀬呂と呼ばれた少年は、話から察するに上鳴くんたちと同じクラスっぽい。可哀想に、瀬呂くんも爆豪くんと一緒のクラスなんだね。私が同情の目を向けていると今度は瀬呂くんが私をジッと見る。そして少し小さめの声で、上鳴くんになぁと話しかけた。
「この人って」
「ああ、うん、そうそう」
「え、なになに?私も混ぜて」
「爆豪の彼女」
「はっ!?」
なんの話!?2人に詰め寄ると今学内で密かに出回っている噂らしい。先日爆豪くんが私のクラスに押し入り、一緒にパンケーキ屋へ行ったことに尾ひれが付いて回って噂になっていた。なんだそりゃ!違うよ、パンケーキ屋に行っただけで付き合ってないから!力強く念を押せば瀬呂くんは眉をひそめて上鳴くんにこそこそと喋りだす。ちょっと、他の人の前でコソコソ話すなんてコソコソ話のルール違反でしょ。あれ、このくだりなんか前にしたな。
「ちょー怖え」
「だろ」
「君たち1年生はほぼ初対面の先輩を怖いやつ扱いするのが流行ってんのか」
「だって」
だってじゃないと上鳴くんに言えば、えーっと不満そうだった。私も不満だよ。瀬呂くんがまぁまぁと私と上鳴くんの間に入って宥める。しかし、次の時には私の方を再度見て、でも正直なところと続けた。
「パンケーキ屋に一緒に行くくらいなんだから爆豪のこと好きなんすよね?」
「瀬呂くんは意外にズバッと言うね」
「先輩どうなんすか!」
「あのね、爆豪くんが女子で満席のふわふわパンケーキ屋にいるところ見てみたいと思わない?」
「「それは思う」」
「でしょ」
その証拠写真が私のスマホの中にあります。欲しかったら後で送ってあげようと言うと上鳴くんと瀬呂くんはガッツポーズしていた。ちなみに証拠写真は究極に目の吊り上がった爆豪くんがふわふわパンケーキ前で渾身のピースをしている写真で全然フォトジェニックじゃなかった。まぁ笑えるから良しとしよう。
「正直なところね」
「うん?」
「私じゃなくて爆豪くんがどうよって話じゃん?」
「は?」
「いや、爆豪は先輩のこと好きでしょ」
「え、ちょ、おい、瀬呂何言っちゃってんの!?」
「まさかー!好きな子相手に暴言暴力する?」
「えっ」
「えっ」
「え?」
「俺今ゾッとする程引いてる」
「同じく」
「おい」
外堀が埋まっていく