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午後8時。辺りはすっかり暗くなっていた。迷子防止だからって繋いだ手は最後まで離されることはなく、無事に私の家までたどり着いた。いや、無事の定義が怪しい。少なくとも私はよく分からないこの状況に混乱してる。なんとかその動揺を見せないように素知らぬ顔してたけどもう限界だ。すごい緊張した。家の前まで着いて、爆豪くんを見る。



「家まで送ってくれてありがとね」
「ん」
「じゃあ爆豪くんも気をつけて帰るんだよ!痴漢に合わないように!」
「てめぇ馬鹿にしとんのか」
「いだだだだ!握り潰されるー!!」



繋いでいた手を慌てて離した。この馬鹿力ゴリラめ。まぁ、なんとなく漂っていたしんみりとした空気が消えたから良しとするか。じゃあね、と爆豪くんから離れて家の中へ向かう。



「おい」
「ん?」



振り返ると爆豪くんの顔がすごく近くにあった。あれ、これなんか見覚えがある。咄嗟に手が動いて爆豪くんの口を思わず塞いだ。
私の顔ギリギリに近づいていた爆豪くんと目が合う。爆豪くんの目がパチクリと瞬きをして、そしてつり上がった。わぁ怖い!



「ふぇめぇー!」
「いやいや意味わかんないから爆豪くん!!」
「ぷはっ、口塞いでんじゃねぇよ!!」
「だってあのままじゃキスするところだったじゃん!」
「ざけんなや!しようとしてんだよ!」
「からかわないでよ!!」
「誰がてめぇみたいなクソカス迷子からかうか!空気読めや!!」
「失礼な!バリバリ空気読んでるわ!」
「どこがだクソが!」
「読みまくってるっつーの!爆豪くんのからかい読みまくったわ!!」
「だーかーらー!からかってねぇっつってんだろがこのアホ迷子!!」