56



「そろそろ戻る」



そう言って爆豪くんはコンクリートの階段から立ち上がってお尻についた砂を払った。外に設置されてる時計を見ると高校生が出歩いてはいい時間をとっくの前に過ぎていた。もうこんな時間だったのか。慌てて私も立ち上がる。明日から久しぶりに学校があるから夜更かしは禁物だ。爆豪くんの方を見ると、私に背を向けて帰り道の方向へ向いていた。久しぶりに会ったせいか、別れるのがなんだか寂しいような気もするようなしないような。



「こ、ここから爆豪くんとこの寮って近いの?」
「遠くはねぇ」
「ふーん、今度行ってみようかな」
「やめとけクソ迷子」



ぐ、言い返せない。間違いなく迷子だもんなぁ。せっかく新しく色々できてるなら見てみたかったのに。残念と小さくため息をついた。

するとぽんぽんと頭を優しく撫でられた。ビックリして頭に伸びる手の先を見る。やっぱりそこには爆豪くんしかいない。




「今度連れてってやる」
「ど、どうしちゃったの爆豪くん。えらく優しい」




いつもと様子が違うことに焦る。いつもだったら、ふざけんな!勝手にしろや!の暴言オンパレードなのに。心なしか表情も柔らかい気がする。
焦っていると、頭に乗っている手がするりと降りてきて頬を滑るようになぞる。自分とは違う手の感触が変な感じがして、今触れられていることが現実なんだと熱い頭でも分かった。




「ば、ばくごうくん」
「目ぇ、つぶれや」




潰すぞの聞き間違いじゃないだろうか。心臓が煩くてなにも考えられなくて、その言葉に素直に従ってしまう。爆豪くんが近づく気配がして、耳に心臓があるんじゃないかってくらい心臓が煩い。ぎゅっと目をつぶって、もうどうとでもなれ、と思った時だった。





<ビービービービービービービー>

「うひゃあっ!」




びびびびっくりした!振り返ると迷子になった私の強い味方、雄英が誇る高性能ロボがそこにいた。



<深夜ノ外出ハ禁止。即刻部屋ヘ戻レ>
「びっくりした…。ロボ、夜でも活動してるんだね」
「…」
「怒られたし、戻ろうか」
「…んの」
「爆豪くん?」
「っクソロボがー!!」
「うわあっつ!!!暴力反対!!」