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「あれ?爆豪くん?」
補講終わりに図書室に行くと、ここでは会ったことのない珍しい後ろ姿を背の高い本棚の間で見つけた。私の声に反応して振り返った爆豪くんは眉をひそめて舌打ちをした。反応が酷い。まぁもう慣れたんだけど。
「こんなとこで会うなんて珍しいね」
「神出鬼没すぎんだろ」
「私からすると爆豪くんこそそうだよ」
「植え込みから登場する奴に言われたくねぇわ」
「わー、よく覚えてらっしゃる」
忘れてくれていいのに。無駄に頭いいのどうにかして欲しい。運動神経もいいし、爆豪くんの欠点は性格だけだね。それが一番破綻してるんだけど。爆豪くんの手元を見ると何やらよく分からない分厚そうな本。聞くと馬鹿にされそうだから触れないでおこう。うん。
爆豪くんの持っている本から目を離して爆豪くん本体の顔を見ると、爆豪くんは私が胸に抱えている本をじっと見ている。
「人の胸元ガン見するなんて、爆豪くんのエッチ」
「あ゛ぁ゛っ!?誰がてめぇの胸なんぞ見るか!!」
「シーッ!!ここ図書室だって!」
どこかで誰かがゴホンと咳払いの牽制が入る。うるさくしてすいませんほんと。話がしやすいように近づいて声のボリュームを下げる。
「怒られちゃったじゃんか」
「てめぇがカスみたいこと言うからだろが」
「誰の胸がカスだって?」
「てめぇの頭がカスだって言ってんだよ」
「ひどい」
おかしいな、この前までいい雰囲気じゃなかったけ私たち。いや、変に恥ずかしがる空気感とかなくて良かっただけどさ。ただもうちょっと情緒があってもいいと思う。
「なにブツブツ言ってんだきめぇぞ」
「…なんか今日やけに辛辣じゃない?」
むっとして爆豪くんを見上げると、眉間にシワを寄せて怖い顔だけど意外にも困ってるようなそんな雰囲気でこっちを見ていた。え、なにそれ。なんなんだその卑怯な顔。まさか爆豪くん、照れてるのか。今日の辛辣は照れ隠しなのか。
「ちょ、爆豪くんかわいいかよ!」
「あ゛あ゛ッ!?ブッ殺すぞ!」
「照れるなよー!」
『図書室ではお静かに!!』
図書室の秘密