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白い部屋だ。
壁も、床も、机も、椅子も、何もかも白い部屋で、私は蹲っていた。
「また来たのかい? もー、早い。早いよ。 これじゃあいつまで経っても終わりゃしない」
誰ともわからぬ何かが私に話しかける。
「さて……きみは、関節の数や体の大きさには興味が無いんだったかな」
はい、おっしゃる通りです。私の神様。
私の……?
返事をしてからぼんやりと疑問が湧いて出る。私はそんなに信心深いほうだったか。それと、この声の主は、神様なのだろうか。
「よし、よし。 では、欲しいものはないかな」
背中が熱い。背中だけでなく、身体中が。焼けるように痛むというよりは、焼けて”いる”ように痛い。
どうして痛いんだったかーー火事があって。
どこが火事だったんだっけーー”不確かな終着駅”が、燃えていた。
火傷を負った理由は……そう、私、神様に、雨を願った。
そうだ。グレイターミナル。エースとルフィは無事だったろうか。サボは、貴族の家に帰ったと聞いたけれど、三人で過ごせているのだろうか。
「きみは本当に、思考が逸れるんだねぇ。いいかい、火事場に雨を降らせるだけなら、君の全てなんていらなかった。それにきみの弟を助けるのにも、そもそも雨は必要じゃあなかったし。きみがあの小屋で寝ていたって、彼らは帰ってきていたんだよ」
呆れたような声は、これもサービスだからね、全く。とため息をつくように言った。姿は見えないけれど、出来の悪い生徒を叱る教師のような、人間味のあるため息だった。
弟。私の弟。私が何もしなくても、帰ってきていた。
ーー良かった。それならそれで、良い。余計な怪我が減ったのかもしれないし、増えたのかもしれないけれど、私が最善と考えて行動した結果だ。生きていてくれたなら、もう全部、良い。
神様、教えてくださって、ありがとうございます。
「まったく、締まらないなぁ。いいかい、多くのものは、受け取らない。少なければ叶えない。で、きみは多くを無理矢理押し付けてきたからね。 これはおまけさ、おまけ」
優しい、神様。本当にありがとうございました。昔のことは覚えていないけれど、私、十年とちょっと、本当に幸せでした。苦しくて痛い時ばかりでもあったけれど、シスター達に会えたことも、サボに助けられたことも、エースや、ルフィに出会えたことも。
私とっても幸せでした。
神様のお陰です。
翼も、あまり役には立てられなかったけれど、空を飛ぶって凄く楽しかったし、私のお願いごとを聞いてくださったことも、二回目を、くださったことも。本当に、ありがとうございました。
「はい、はい。どういたしまして。 でもそれは既に貰った分だからね。君が気にする事じゃあない」
既に、貰った分?
疑問に思ったけれど、私はそれ以上は聞くのを辞めた。
ここはやはり、そういう場所なのだろう。魂とか、なんかそういう感じのものが来れる場所、みたいな。そんな感じ。であれば、もう私に出来ることなどない。彼らが生きていることを知れた。それで、十分だ。
身体をゴロリと横たわらせれば、白いカーペットが赤黒く変色する。
汚してしまったな、と思ったけれど、それも仕方のないことだし、と目を逸らす。すでに私が血や灰で汚れていて、そこに居るだけで汚れをつけてしまうような状態だからだ。
立ち上がる元気も無いしこのままここで寝かせて貰おう。もう目が覚めることはないだろうけど、神様の御許で眠れるのだ。なんちゃってシスターには光栄だろう。
そっと目を閉じると睡魔はすぐにやってきた。
「まったく。君にはお守が必須の様だね。……なんともまぁ、締まらない始まり方だ」
背中が熱い。身体中の痛みが麻痺していく。
眠る直前、現実と夢が混合して分からなくなるあのまどろみの中、腕の隙間へ入れるように丸くてツルツルとした何かを押し付けられた。
大きな、卵、だろうか。
それを抱くようにして寝転んでいると唐突に卵が動きだす。小さく音を立てて、表面にヒビが入る。
割れる、と思った瞬間、私は卵とともに、空へと放り出されていた。
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壁も、床も、机も、椅子も、何もかも白い部屋で、私は蹲っていた。
「また来たのかい? もー、早い。早いよ。 これじゃあいつまで経っても終わりゃしない」
誰ともわからぬ何かが私に話しかける。
「さて……きみは、関節の数や体の大きさには興味が無いんだったかな」
はい、おっしゃる通りです。私の神様。
私の……?
返事をしてからぼんやりと疑問が湧いて出る。私はそんなに信心深いほうだったか。それと、この声の主は、神様なのだろうか。
「よし、よし。 では、欲しいものはないかな」
背中が熱い。背中だけでなく、身体中が。焼けるように痛むというよりは、焼けて”いる”ように痛い。
どうして痛いんだったかーー火事があって。
どこが火事だったんだっけーー”不確かな終着駅”が、燃えていた。
火傷を負った理由は……そう、私、神様に、雨を願った。
そうだ。グレイターミナル。エースとルフィは無事だったろうか。サボは、貴族の家に帰ったと聞いたけれど、三人で過ごせているのだろうか。
「きみは本当に、思考が逸れるんだねぇ。いいかい、火事場に雨を降らせるだけなら、君の全てなんていらなかった。それにきみの弟を助けるのにも、そもそも雨は必要じゃあなかったし。きみがあの小屋で寝ていたって、彼らは帰ってきていたんだよ」
呆れたような声は、これもサービスだからね、全く。とため息をつくように言った。姿は見えないけれど、出来の悪い生徒を叱る教師のような、人間味のあるため息だった。
弟。私の弟。私が何もしなくても、帰ってきていた。
ーー良かった。それならそれで、良い。余計な怪我が減ったのかもしれないし、増えたのかもしれないけれど、私が最善と考えて行動した結果だ。生きていてくれたなら、もう全部、良い。
神様、教えてくださって、ありがとうございます。
「まったく、締まらないなぁ。いいかい、多くのものは、受け取らない。少なければ叶えない。で、きみは多くを無理矢理押し付けてきたからね。 これはおまけさ、おまけ」
優しい、神様。本当にありがとうございました。昔のことは覚えていないけれど、私、十年とちょっと、本当に幸せでした。苦しくて痛い時ばかりでもあったけれど、シスター達に会えたことも、サボに助けられたことも、エースや、ルフィに出会えたことも。
私とっても幸せでした。
神様のお陰です。
翼も、あまり役には立てられなかったけれど、空を飛ぶって凄く楽しかったし、私のお願いごとを聞いてくださったことも、二回目を、くださったことも。本当に、ありがとうございました。
「はい、はい。どういたしまして。 でもそれは既に貰った分だからね。君が気にする事じゃあない」
既に、貰った分?
疑問に思ったけれど、私はそれ以上は聞くのを辞めた。
ここはやはり、そういう場所なのだろう。魂とか、なんかそういう感じのものが来れる場所、みたいな。そんな感じ。であれば、もう私に出来ることなどない。彼らが生きていることを知れた。それで、十分だ。
身体をゴロリと横たわらせれば、白いカーペットが赤黒く変色する。
汚してしまったな、と思ったけれど、それも仕方のないことだし、と目を逸らす。すでに私が血や灰で汚れていて、そこに居るだけで汚れをつけてしまうような状態だからだ。
立ち上がる元気も無いしこのままここで寝かせて貰おう。もう目が覚めることはないだろうけど、神様の御許で眠れるのだ。なんちゃってシスターには光栄だろう。
そっと目を閉じると睡魔はすぐにやってきた。
「まったく。君にはお守が必須の様だね。……なんともまぁ、締まらない始まり方だ」
背中が熱い。身体中の痛みが麻痺していく。
眠る直前、現実と夢が混合して分からなくなるあのまどろみの中、腕の隙間へ入れるように丸くてツルツルとした何かを押し付けられた。
大きな、卵、だろうか。
それを抱くようにして寝転んでいると唐突に卵が動きだす。小さく音を立てて、表面にヒビが入る。
割れる、と思った瞬間、私は卵とともに、空へと放り出されていた。