▼2025/09/18:異色の琥珀、稀なる紺碧
幼い頃からずっと両手を酷使している。物を作る、書く、描く、塗る、調理する、読む為に捲る、写す為に押さえる、縫う為に抓むなどなど、指先から手首にかけて過重労働を強いている人生だ。ちなみに両手とも骨折した事があり、未だ可動域に制限があるなど結構ボロボロである。手術の痕跡がまあまあ目立つしメンタル疾患と相性の良くない箇所にある為、初対面の人は存在を認識しても訳を訊き辛いらしい(以前就労移行支援事業所の同期に元柔道整復師の人が居て、『解放骨折の跡ですか?』と訊かれたくらいで、ぶっちゃけ自傷行為の痕跡と思われる事がある)。しかし当の私はまったく気にしていないらしいと言うか、たまに存在を忘れる。具体的に言うと左手首と左肘関節の内側にそれぞれ十数針縫った跡があるのだが、内側にあると意外と気にならないから不思議だ。私自身よりも両親の方が気にしているらしい。『女の子なのに』と言われたのはその時が初めてだった。右手の方はと言うと、傷跡は残らなかったが小学生の頃に車のドアに右人差し指を挟んだ結果パキッと折れた。今でも若干動かしにくい方向がある。利き手は右なのだが、特に問題なく使えているので幼い子供の回復力はすごいなぁと今更感心してしまう。
で、書き続けているとペンやら鉛筆やらを握り続けるわけだけど、案の定腱鞘炎を患う事になった。高校生の頃と就職してからも何度か整形外科に赴いている。多くのケースでは痛み止めの湿布薬なので症状を緩和して手を休ませつつ(つまりは作業量をセーブして)経過観察していることになるのだが、それだと駄目な場合、私は注射をお願いすることがある。腱鞘炎とは利き手の親指側の関節内部の腱が納める鞘のような部分が腫れて炎症を起こしているから腱鞘炎と書くのだが、それを緩和する(それも結構劇的に効果がある)のがその注射だ。ただしこれ、少なからず痛みを伴うし、それは治療する医師の腕にかなり左右されるらしい、と高校生の頃に思い知った。
その時は学校の紹介で(漫画研究部だったのもあり校医を紹介して貰った)と或る診療所へ赴いたが、診察してくれるのは80歳すぎのご老人。注射器を持つ手がプルプルしていた。ちゃんと針が目的の場所に刺さるのか、そっちの方が怖かった。この時、結構ぶっとい針が親指の付け根の関節に捩じ込むように刺される。結果としてきちんと刺さったし、薬は注入されて、一週間ほどかかって痛みはほぼなくなった。しかし注射の後は手首と親指の根元が腫れてとんでもなく痛いし、丸一日水にも濡らせないしでトラウマになるくらいの出来事だったので、暫くは加減して両手を使っていた。
時は流れ社会人になってから、事務職で手を酷使してしまった結果腱鞘炎が復活。再び湿布で急場をしのぐも結局は注射での治療を選んだ────しかし、その時受診した病院の先生に『神的に腱鞘炎治療の注射を打つのが上手な先生』がおられたのだ。診察の後、注射での治療を怖がる私に彼は何と言ったと思うだろうか。
「大丈夫。僕、上手だから」
これを執筆している現在なら既視感を覚える台詞と共に、先生は注射器を構え、真っすぐに関節に突き刺し、薬を注入した。針が突き刺さった瞬間だけ痛みを感じたが、その他は全く痛くなかった。
薬液が注入されて患部に染み渡る感触のみを覚え、刹那に炎症由来の痛みそのものが無くなる。とんでもなく上手な先生だったのだ。「本当に痛くないです。薬液って冷たいんですね」と私が言うと、「でしょ。もうちょっとかかるけど、頑張ってね」と笑顔を見せる。この時私は先生が神様に思えた。
結構な量の薬液が注入され、針が抜かれて傷の処置を施され、その後の注意点などを聞いたのち診察は終了する。そしてお会計の時、受付のお姉さんは「良かったですね〜。あの先生うちの病院で一番注射が上手なんですよ」とこそっと教えてくれた。
さて、皆さんは先生の台詞にどんなキャラクターヴォイスを当てただろうか。私はこの時の事を現職の店長に伝えた際「五○悟w」と言われた。つまるところ『CV:中村悠一』である。ちなみに狙って言ったわけではない。あの時先生は本当に上記の台詞を述べたし、多分だけどあの頃呪術○戦は連載前だ。
まあそんな神医者が存在する整形外科に出逢えたのは幸運である。その後は先生の指示や言いつけを守り生活しているおかげで腱鞘炎の影くらいは見えても直ぐに対処して湿布も要らない状態を保てている。
具体的に言うと『手を酷使しない』に尽きるのだが、長時間の作業が予想されるときには小休憩を挟み手のマッサージやストレッチを取り入れている。お陰で此処五年ほどは整形外科に通院していない。
以前『舌回し運動』の事を書いたが、両手をいたわる為に行なっている事も書こうと思う。基本的に私はキーボードを打ったりイラストを描く際には最低でも30分に一度は手首や指の付け根、腕のツボっぽい所をマッサージしてストレッチするようにしている。
腕を伸ばし、もう片方の手で伸ばした手を抑えて腱や筋を伸ばすのと、手首から肘にかけてきもちいいと感じるくらいの強さで押さえるようにマッサージする。序でに肩凝り防止で首の筋肉も伸ばしたり首の裏側を伸ばすようにしている。これが習慣になって頭痛や肩凝りが劇的に減った。両肩を竦めてグルグル動かすのも良いと思う。人生で一度しか与えられない身体をケアしておくと、大きな不調には陥りにくい。
思えば筋トレを始めてから腰痛に悩まされる事が激減した。頭痛に関しても両方の耳をマッサージしたり、回す事で其処まで大きな不調に陥る事も減った。身体はある程度動かしておく方がいいんだなと感じる。筋肉量も或る程度維持しておきたいし、何より、鍛えていると目の前に現れた理不尽(主にアレなお客)にも内心で『殴り合ったら私が勝つんだからな? お前が客じゃなかったら既に鳩尾に一発入ってるぞ?』と思うと不思議とそこまで心に波は立たない。
そう、筋肉は全てを解決する──と言うのはさておき、最近あまり心が荒れない事に気が付いた。凪いでいるわけでもないが、気付いたのだ。『目の前の理不尽に心を乱されている時間の方が勿体無い』事に。人生や心のリソースを嫌なものの為に割きたくない。ので、もし乱暴な物言いのお客やいきなり失礼なレベルのタメ口を聞くお客には心のシャッターがガラガラッと下がって最低限のサービスしか提供しないようにしている。下手に出ろとは言わないが、人として最低限の礼節を弁えるべきなのは、何もサービス事業者ばかりではないのだ。販売員も人なので、より良いサービスを提供するなら好ましいお客様を優先したいのが正直なところ。
ので、自分が客側に回ると良いお客でいたいと強く思う。その時礼節を弁えていない店員に当たると悲しい所だが、まあこれも勉強の機会であり、『自分ならこうするかな』と言う脳内シミュレーションをしておく。で、それを仕事に活かす。
この前、うちのお店で仔犬をお迎えしたお客様のご相談に乗って話が弾んだ結果、ご飯やおやつも当店で買ってくれるようになった方が増えた。一応記憶力が良いのでワンちゃんの話も覚えているし、商品をお勧めしたりご飯の食べさせ方を色々とお伝えしたらまたたくさん買ってくれたしクリスマスケーキ(わんこ用)も予約してくださった。
相変わらずと言うか、お年寄りや年上の女性への受けが良いタイプのスタッフである。母曰く『孫オーラ』を纏っているらしい。そして甘える方の孫じゃなく頼れる方の孫オーラらしく、声も大きく聞き取りやすいし元気が良いのでお年寄りには適している接客なんだろう。
そんなこんなで毎日遣り甲斐を感じつつお仕事している。働く時間が伸ばせた関係で賃金も上がるので、このままいい感じに働いていきたい。こう思える心の余裕は、恐らく趣味の筋トレを含む運動のお陰もあるのだ。良くも悪くも寝たら大体の事を忘れられる性質なので、適度な疲労の為にもと積極的に身体を動かしている。
今年が終わるまでにあと5キロくらいは体重を落としておきたい、と言うのが当面の目標だ。案外達成できそうな気もする。毎日それなりに動く仕事内容且つ、身体を動かすのがストレスコントロールだから。