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昨日の寒さとは打って変わり小春日和の中、笹川は機嫌よく登校していた。
昨日までは面倒だ、面倒だ。と嘆いていたのが嘘のように足が軽く意気揚々と学校へ赴く。
校内にいるであろうあの『痴情のもつれ』を見せてくれた小柄な教師を思い出せばつい笑みが深まった。
「笹やん! オッス!」
上機嫌の笹川に背後から声をかけてきたのはオレンジ色した頭の友人、志免である。
笹川自体は優等生といえる模範的な生徒だ。
一見すると見た目から不良である志免とは接点がなさそうに見えるが結局の所、笹川も根が不真面目な同じ穴の狢といえる。
そんな見目は正反対だが中身は一緒な二人が並んで歩けば基本誰も近寄らない。更には二人とも体格が良く揃えばやたらと威圧的に映るのだ。
ところが不思議とクラスメートたちが威圧的に感じるような事はなく笹川は勿論、志免も成りは不良のようだが誰にでもフレンドリーでクラスの中心になるような奴なのだ。
「ナニナニー? 朝からニヤニヤしちゃってさー、笹やん機嫌いいの? 」
友人にまでバレるほどの機嫌の良さに笹川は更に目を細め口元が釣り上げる。
「まぁね」
ほくそ笑む笹川に志免も興味を持って聞き出そうとする。
「おいおい、何だよー、教えろよー! 」
隣の友人を見れば瞳をキラキラとさせた子供のようだ。
そんな友人に少しの自慢をしたくて
「ちょっと、いいオモチャを見つけてね」
志免に目を合わせニヤリと嗤い正面で答えてやれば、笹川の物言いに志免もまた興味を持った。
一瞬目を瞠った志免だったが即座に反応する。
「ちょっとナニソレー! 卑猥な香りがプンプンなんですけどー! ちなみにオンナ? オトコ? まぁ俺どっちでもいーから関係ないかー」
志免がワクワクしているのが伝わる。
「なぁなぁ、俺にも勿論貸してくれよ? オ・モ・チャ」
朝から下衆な話題であるが誰に聞かれるでもないので気にしない。
優等生の面は校内で被れば良いのだ。
「貸して、貸して」と強請る志免に
志免の顔を一瞬見た後、視線を前に戻して薄く嗤いながら言った。
「飽きたらね」
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