昼休み、志免を隣に置きながらクラスメート達のたわいもない話に愛想よくしている一方、頭に浮かんでくるのは昨夜の小柄な教師をどう脅してオモチャにしようかという事。

あの抱き合っていた二人のやり取りから肉体関係もあった事は伺える。

しかも後で見返した動画を見ていて気づいた事が一つ。
相手である初老の男の薬指に指輪が嵌められていたのだ。

ソレが指し示す事実は一つ。
あれは既婚の男という事。

しかも音声までしっかり入っていたので聞いているとどうやら初老の男は『先生』と呼ばれる職業。

オモチャを雁字搦めにする為のピースが揃いそうになり、笹川の脳裏には自然と初老の男に縋り付いていた小柄な教師の姿が浮かんだ。

涙を流して懇願する姿は笹川から見ると酷く扇情的で。

「あぁ、壊したいな」

クラスメートがいる中、ついボソリと吐いてしまった。

「ん? 笹川何か言ったか? 」

隣にいたクラスメートが笹川の吐き出した音に反応したものの聞こえていなかった為聞き返してくる。
が笹川はその問いに対し「いや、何も言ってないよ」と笑顔でかわすと。

「俺、ちょっと用事思い出したから抜けるね……」

と、志免たちのいるクラスメートの集団から抜けた。

『人の弱みを握り、人をオモチャの様に扱う』

甘美な響きに笹川はまだ名前すら知らぬ小柄な教師を探す為歩きだした。
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