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まぁ、何というか。
笹川の目の前にいる桐島と言う教師はまるで小動物の様で、本人は気づいていない様だが微かに震えてもいる。
『聞かれて困るの先生でしょう? 』
自分の発する一つ一つにこうも反応されると色々虐めたくなるのも仕方あるまい。
扉の鍵を閉めた笹川は桐島の元へ戻ると「先生、話するんでそこに座ってくださいよ」と先程まで自分が座っていた椅子へ誘導し座らせた。
そして自分はその桐島の前に近くの椅子を持ってくると逆向きに跨がりジッと見つめた。
逃亡を阻止するかのように窓際に座らせられた桐島は緊張した面持ちで膝の上で拳を作り全体的に強張っている。
笹川はそんな桐島を見ながらやはり沸々と湧いてくる支配欲や嗜虐欲を己の内に感じながらもグッと押し込めた。
そして、ここは先ず順を追っていこうと笹川は先ず名前を告げる。
「俺は三年の笹川優吾」
「.........」
俯いたままの桐島は何も発さない。
しかし膝の上の拳が小さく震えているのが見え歪んだ欲が笑みを浮かべる。
「先生、コレわかります? 」
未だ俯いたままの桐島だったが、笹川が取り出したスマートフォンの動画が流れ出すと顔を上げ真っ青になった。
『な…何にもいりません……側にいるだけで…』
『せんせぇ……。邪魔にならないようにするから…』
流れている映像は桐島が振られたあの最悪の日の出来事で二人の声まで鮮明だ。
「コレ...」
映像は更に二人が路地に入って抱き合っているところも映っている。
「っ.....」
桐島の手が自然とスマートフォンに伸びた所で笹川は自分の元に戻すと桐島を見た。
笹川の視線と重なるが直ぐに手にあるスマートフォンへと移すとそれを見ながら唇を噛みしめる。
「...なんで、そんなものが...」
桐島の尤もな疑問には答えず、笹川は確認するように話しだす。
「桐島先生はあの日、振られてたんですよね? 」
思い出したのか真っ青な顔から悲痛な面持ちへと変化する桐島。
「先生と抱き合ってたもう一人の先生って既婚者ですよね? 」
「って事は桐島先生は浮気?愛人て事ですか? 」
間違ってはいないが、他人に言われる内容でもない。
「しかも相手も『先生』って事はこの学校?ではないですよね、あんな先生知らないし」
畳み掛けてくる質問に桐島は対処できないのが見て取れる。
「って事は桐島先生のいた高校?」
「それとも大学?」
「っ....」
ポーカーフェイスなど柄ではないのだろう。
桐島の明らかな動揺に笹川は笑いが込み上げてきた。
目の前の人物が酷く滑稽に映る。
「はは、そうかあの男は大学の....つまり桐島先生が愛人やってたのは母校の大学教授なんだ」
導き出した正解に笹川は嬉しくなり大きく笑った。
「..ちっ、違う!先生は...」
途端、急いで否定しようと椅子から立ち上がり、笹川に詰め寄るも掴もうとした腕は逆に笹川から掴まれ、相手にならない桐島は己の不甲斐なさに泣きそうになる。
そんな桐島に笹川は女たちがよく好きだと言っていた甘いマスクを作り満面の笑みを浮かべ口を開く。
「ああ、大丈夫ですよ。別に桐島先生が俺のいう事聞いてくれるならバラしたりしませんよ」
そして優しく脅した。
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