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12月という季節柄、まだまだ大学の決まっていない生徒たちのいる中既に指定校推薦の決まっていた笹川優吾は学校へ来るのも面倒に思っていた。
しかし一応優等生で通っている事や今問題を起こして推薦が取り消しになるなんて事になった時の面倒に比べればやはり今を我慢して出席することのが割りが良い。
「はぁ」
ついと出た溜息。
「笹やん、何溜息なんてついてんのー。幸せ逃げるよー」
言葉と同時にバンと背中を容赦なく叩く男はオレンジ色の頭に見合う明るく豪快に笑う自分の友人であった事を笹川は確認する。
「志免……。叩くの激しすぎ……」
半目で睨めばとうの志免は気にするそぶりもなく「あー、悪りぃ悪りぃ」とたいして反省もしてなさそうに謝った。
「ってか、笹やん今日の放課後ヒマ? ヒマだよね? 綾女子と合コンあるから空けててね」
「いや、ま……」
「また、メールすんから! 」
志免は脱兎の如く去っていった。
「はぁ、」
またもや溜息が出るが志免の性格は昔からなので諦める。
「合コンね」
歩きながら考える。
女とは如何に面倒か。
笹川は185センチという長身に染めていない黒髪は少しだけワックスで弄っており、甘いマスクという事もあり女には不自由した事がない。
しかし、結局は笹川の優しさや甘さを果てはお飾りとしての見目の良い彼氏を常に強請られるばかりで女という存在に辟易していた。
それでも志免の誘いという事もあり行く算段である。
ドン
急に角から出てきた相手により笹川はぶつかってしまった。
相手のが小柄であるからだろう尻餅をついているのをみて手を伸ばす。
小柄な男は制服ではなくスーツ姿でいくつかの教材を持っていた。
明るすぎない茶髪はごく自然である。小柄な男は伸ばしていた手に気づいたようで「すみませ…ん。あっ、ありがとうございます。」と何故か敬語で礼を言ってきた。
明らかに教師であるだろうに。
「いえ。こちらこそすみません。ぶつかってしまって。」
と姿勢を少し低くして小柄な教師を立たせこちらも謝れば小柄な男はこちらを見上げた。
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