あの事件からしばらくして平穏な日常が戻ってきた。
私も風邪が治って元気になったんだけど、、


「はえェな」
「ひゃあぁ!」


実弥さんと会うとドキドキしてどうにかなりそう。
この感情は、恐怖でも、熱でも、なんでもない。
お巡りさんだからじゃない。
実弥さんだから。





隣のお巡りさん  21  



「おはようございます今日も暖かいですねそれでは私はこれで」
「あ、おい!」


どうしていいか分からなくて、恥ずかしくて。
挙動不審がさらに増してただの変な人になってる。



「はぁああー…」


あれからまともに話ができてない。
避けてるわけじゃない、本当はもっと話したいし顔だってみたい。
けど、自分の心がもたなくて、勝手にそこから去ってしまう。



このままじゃいけない、と思って久しぶりにメールを送ってみた。


【ご飯でも行きませんか?】


深呼吸して携帯画面を見る。送信ボタンを未だ押せず。
忙しいかな、迷惑かな、以前はそんなこと気にしなかったのに。
最近気づいた新しい感情はというと非常に厄介で。


(昔のほうがよかったかな…)



ええい、と送信した。
よし。送った。送ったぞー


それからはずっと携帯を気にしてた。
トイレにも風呂にも携帯持って行った。
やっと来たと思ったら何かの勧誘メール。こんなときに…




【明日の夜はどうだ?】


さっそく返信来た!嬉しい!そして明日とな!
心の準備が…一日あれば足りるか。
自問自答してたけど素直にうれしくて。すぐ返信を打った。

【楽しみにしています】





****



はぁぁぁーっと深いため息。
いつも通りの格好でいいのに。
化粧もちゃんとした。居酒屋でもどこでも何でも来い。



大丈夫私。心臓よ、しずまれ〜


待ち合わせ時間まで結構ある。
この前の風邪の時のお礼してないし、何かお土産買っていこう。
そう思ってデパートの地下へと向かった。


「何がいいかなぁ〜」

目の前にある和菓子を見てうっとりする。どれもおいしそう。



自分にもご褒美と思って買いすぎた。だっておいしそうなんだもん。

すると着信が鳴った。
画面には不死川の文字が。




「「わりィ、急用が入った」」

急用…。なんだろう、仕事関係かな?きっとそうだ。
こんなこともあるよね。しょうがない。


「大丈夫ですよ、まだ家ですので」



咄嗟についた嘘。仕方がない。
後ろがざわついてるから気づくかもしれないけど。


要件だけいうとプツっと切れた。
真っ暗になった携帯を見て溜め息。
手土産も買ったのになぁ〜…残念だけど。
自分が思ったより楽しみにしてたことを痛感する

(だってこんなにショックなんだもん)



さっきまでキラキラしていた町が一気に無機質なものに見えた。
せっかくおしゃれして出てきたからご飯食べて帰ろう。


「こうなったら好きなものたくさん食べてやる!」

と、以前から気になっていたお店に向かってる途中だった。


「あれ?」

今日会うはずだったであろう実弥さんが歩いている。
咄嗟に隠れた。なんで?今日は急用だって。
私まさか日にちを間違えた?そんなはずはない。電話がきたんだもの。

そして隣には胡蝶さん。
並んで歩いてる二人に胸が締め付けられそうになった。


夕飯をすますどころじゃない。



私は走り出していた。



二人を視界にいれたくなくて。
その場から離れたくて。
苦しくて苦しくて、無我夢中で走っていた。




「ハァっ…ハァ…っ…」




ポタポタと流れる涙。




「あれ?」




あふれ出る涙をぬぐうけど出てくる。どうしよう


どうして悲しいんだ。
ごはん食べられなかったから?断られたから?お土産買っちゃったから?


違う。



仲良さそうな二人を見るのが辛かったから。



気づいてしまった。





私、実弥さんが好きなんだ。







どうしようもなく。
貴方のことが。


End




小説トップ


top