相手は何をしでかすかわからない。
そこそこ夜だ。騒ぐとすぐ通報されるだろう。
もしもの時は叫べばいい。
そう簡単に考えていた。


 隣のお巡りさん 23  


「あなたに私が何をしたの?」


黙っている犯人。このまましらを切るつもりなの?

「君が、僕のことを好きだと思ったから」

え??なんでそうなるの?

「それなのに避けて、引っ越しまでして、あげく違う男だと?ふざけるな!」


ビクッと震えた。
はぁはぁと息が上がっている。さすがに怖い。
誰か気づいてくれないかな・・・
家はもうすぐそこなのに。


「そう思わせたならすみません。でも私はあなたのことを好きではありません」


「・・・なんだと・・・?」


じりじり、、と近づいてくる。何を言っても駄目かもしれない。


「私には好きな人がいます。ごめんなさい。もうこんなことしないでください。」


お願いします、、と深々と頭を下げる。
私が謝ることでもないんだけど、下手にでよう。
片手には防犯キーホルダー。お守りだ。


「バカにしやがって、、この女ぁぁ!」


走って近づいて来た。殴られる、と思った。

ガシッと捕まれた犯人の手。
つかんだのは紛れもないあの人。

「男が女に手ェ出すんじゃねェ」

「実弥さん…」

何度目だろうか。いつだって困ったときは助けてくれた。
すかさず犯人との間に割って入ってきた。
後ろからでも分かる、殺気。
顔の青筋が余計怖い。
ギギギ、と捻る腕が血管が浮いている。反対の腕は私を守るのように後ろに引いてくれてる


「ごめんなさ・・・」
「話はあとだ。てめェいい加減にしろよ、クソがァ…こいつがどんだけ怖い思いしたと思ってやがる・・・・」
「お前タケちゃんのなんなんだ?この前から邪魔ばっかりしやがって。ただのサツかぁ?俺たちの関係で邪魔すんなよ。」
名前で呼ばれて血の気が引く。そっか。知ってるんだ。
「サツとしてじゃねェ。」

え?

「好いた女守りてェだけだ!」

「いい加減にしろよ!!」


向かってきた犯人に一発。さらに一発。
威力が強すぎ。今までフードかぶっててわからなかった顔が明るみになってきた。
ラスト背負い投げ。つ、強い。

「お前にはいろいろと聞きてェことがあるかなァ…これくらいにしておいてやる。」


べしゃ、と崩れ落ちた犯人。
私は呆然と立ち尽くすしかなかった。


「なんで立ち向かっていった」
かなり怒ってる。そりゃそうだ。
「俺がメールに気づかなかったらどうなってたか・・・」
はぁぁぁあとため息をつく。そんな実弥さんをじっと見ていた。
「ありがとう、ございます・・・」
片手に握りしめたキーホルダーを実弥さんも握る。
手、二度目だ、とかそんなこと考えた私は不謹慎だろうか。
自分が震えていたことが分かった。

「頼むからあんま心配させんな。」

心臓にわりィ・・・そうつぶやかれ、手をひかれた。
ぎゅっと抱きしめられる。
そう困った顔をする実弥さんを見上げたら涙がでてきた。


ゆらぁと立ち上がる犯人。

ふらふらちこちらに向かってくる、手になんか持ってる。
あれは…


「死ねぇええ!」

は、と気づいたときには向かってきていた。
刃物だと認識するには遅すぎた。
「実弥さん!!」
「チィっ!」

咄嗟にかばわれる。と同時に生暖かい血がポタポタと落ちていた。
犯人はあわてて走り去ろうとしている。


「実、、弥さん・・・?」
「・・・怪我、ねェか・・・うっ・・・」



バタと腹を抱え込んで倒れこむ実弥さんを見て私も腰が抜けた。
じんわりと洋服に滲んでくる鮮血。夜でもわかる。


「実弥さん、しっかりして・・・今救急車を!」


携帯を取り出そうとしたらパトカーから見慣れた人が出てきた


「兄貴!!!」
「玄弥さん!!実弥さんが、、」

ぎゅっと実弥さんを抱きしめる、止血とかそんなのパニックでできなかった。


「心配すんなァ…」


こんな時でもなんでこの人は、と思った。
見たことのない歪んだ表情を見てことの重大さに血の気が引く。
震える手を実弥さんが握り返してくれた。
いつもの力はなかった。


そういって実弥さんは意識を手放した。



End




小説トップ


top