気づいた時は見慣れぬ天井。
と、同時に脇腹の鈍痛。
かすり傷、と思っていたが何針かいってんな・・・
無機質な部屋に点滴が落ちる音さえ響きそうな静かさ。
タケは無事だっただろうか。
そんな心配ばかりして、また深い眠りについた。
好きです。お隣さん 23⁺
「ここにお食事置いておきますね」
看護師がきた気配ではたと起きる。
「状態は?」
「あ、起こしましたね、すみません。5針縫いました。脇腹ですね。傷口がよくなれば退院ですが、深かったのでしばらくは無理されないでくださいね。」
咳をするだけでもズキっとする痛み。
怪我をするのは慣れてることだが。
「俺もまだまだだなァ…」
飯を食う気にもなれずぼーっとしてると、コンコンとノックされた。
「兄貴、俺です」
「おー玄弥。入れ」
相変わらず困ったような顔だ。手招きするとおずおずと入ってきた。
「仕事かァ?」
「そうだよ。傷は?」
「5針。心配すんな。犯人は」
「捕まえたよ。ほんと無茶するから」
「怪我したのは俺のミスだ」
あいつをかばって受け身がとれなかった。
刺した後に犯人が逃げたのがよかった。
そうでもなきゃあいつを守れなかったかもしれない。
「兄貴のマンションの人が揉めてるのを見て、通報したんだ。間に合ってよかった」
「そうかァ…」
「あのさ、タケさん、連れてきてるんだけど。」
「は?」
本来これないはずだ。ここはサツ御用達の病院だからな。
「事件のことを話すって上には言ってある。どうしてもってタケさんが大泣きするから、根負けしてさ。どうする?帰ってもらってもいいけどさ」
「・・・怪我してんのかァ?」
「無傷だよ。兄貴のおかげ」
顔を見て安心したいのもある。
大丈夫だ、そう一言だけ言えばタケは気が済むんじゃねェか?
気にしすぎのタケのことだ。
「いいぜ。少しだがなァ…」
ぱああと玄弥の表情が明るくなった。
「じゃ、連れてくる。兄貴やっぱり好きだったんだね。」
「あ゛!?なんのことだ」
「だって好きな女守りたいって叫んでたの聞こえてた」
…
・・・マジか。
「犯人に事情聴取したらタケも好きな人がいるって言われたと暴れてた」
兄貴のことかもな、そういって部屋を出て行った。
おいおい俺はそんなことを言っちまってたのか。
しばらくしてノック。
「失礼します」
おずおずと入ってきたタケ。顔は下を向いている。
「…あーー。ここ座れェ」
手はぎゅっと自身を握りしめたままだ。
「怪我なかったかァ?」
「実弥さ、、」
ぎょっとした。涙で顔がぐちゃぐちゃだ。
目も腫れてる。パンパンに。
わあああと泣き出す。
「ごめんなさい…っ、私が、いたから怪我をさせてしまって…」
「俺がへましただけだ、気にすんな」
「だって、血がたくさんでて…!」
「あーー…心配すんな。」
「―――ううーっ」
「まぁ落ち着け。俺はお前が無傷で安心した」
そう言って頭をポンポンとした。
「手、握っていいですか‥‥?」
「な゛!」
「ありがとう言いたいんです、守ってくれて。」
少しぬれぼそった手が重ねられた。意外と冷たいタケの手はとても小さくて折れそうだ。これで立ち向かっていったかと思うとぞっとする。
小声でありがとうを言ったら落ち着いたのか、嗚咽もなくなっていた。
「すみません…」
手を離そうとしたけど俺がそれをさせなかった。
「実弥さん?」
「俺が、お前をこれから守るって言ったら笑うかァ?」
「へ?」
しばしの沈黙。しばらくして顔が真っ赤になっていくのが分かった。
ほんとわかりやすいやつだ。
ただの隣人だと思ってた。
妹みたいな。
関わることが増えて、気になってしょうがない存在になっていった。
本当はいいやつなのに自分に自信がなくて。
人に頼るのが苦手で。俺に頼ってくれてるのがだんだんと心地よくなっていった。
俺が守りてェ、そう思ったんだ。
今回みたいに無茶してまた危険な目にあったら俺がどうかなっちまいそうだ。
サツとしてじゃねェ。
一人の女として。
笑ったり、泣いたり怒ったり。忙しいやつだけどよォ。
そんなタケがどうしようもなく。
「好きだ。」
小さい手をぎゅっと握る。
この手をもう離さなねェ。
End
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