「タケおはよう!準備できてるか?また朝食の時に会おう。」




ひまわりに落ちる 13


結局寝たようで眠れてないような感じで杏寿郎の声を聞いた。

起きて着替え、煉獄家でご飯を食べて自宅に戻り、持っていく荷物に忘れ物がないかチェックをする。

出発時間の5分前には家の鍵を閉め、煉獄家へ向かった。煉獄家の敷地内にある車庫へ向かうとちょうど杏寿郎が車を車庫から出してるところだった。
瑠火さん、槇寿郎さん、千寿郎くんに行ってきますと挨拶をして車に乗り込む。
さあ、楽しい初デートの始まりだ。


「もし運転疲れたら私が変わるから言ってね。SUVタイプの車運転したことないけど!一応免許持ってるし」
「それは遠慮しとこう!タケはペーパードライバーだからな!この車を傷つけられたら敵わん。」
「ひどいよそれ…ならこまめに休憩取ろうね。」

ペーパードライバーを言われたらもう何も言えない。
車は順調に目的地に向かい出した

「まずは俺の希望するところだな。今夜の宿もそっちの方にあるんだ。」
「うん。最近国宝に認定されたっていうお城だったよね。」
「前から気になってたんだ。教科書にも出てくるからな。実際に本物を見て、それを生徒に伝えたい」

教鞭を執ってる杏寿郎。
一度でいいから見てみたいなぁ。

「さすが歴史教師。杏寿郎に教えてもらえる生徒さん達って羨ましいな」
「そうか?なら今から授業でもしようか。苦手な生徒が多い室町時代以降を少し話そうか?」
「あ、いや…。車の中でそう言うの聞くと眠くなるかも」
「それもそうだ!なら手を繋いでいよう!」

手を繋ぐ?杏寿郎車運転してるのに何言ってるの?と思ったら「俺の左手の上に乗せてくれ。」と言われた通りシフトレバーにかけられている杏寿郎の手に被せるように私の手をのせた。

「こんなかんじ?」
「そうだ。手を繋ぐというよりただタケが俺の手を触ってるって感じだが、これがいい!」
「そういう情報どこで本当に手に入れるのよ…」
「まあ…いろんなところだ!」

濁された。どうせ宇髄くんでしょう。いやもしかしたら蜜璃ちゃんと付き合ってる伊黒くん?
何吹き込んでるのよ…

途中私が調べてたお店にお昼に入り、勿論たらふく平らげて、目的地のお城に着いた。
入場料を支払い、パンフレットをもらい、城の中を見て回る。城の中は展示場のようになっており、その場所の歴史などの説明が書いてあった。

「城の中は薄暗いから足元気をつけよう。タケはすぐ転けるからな。ほら、手。」

強制的に繋がれた。
嬉しい。だけど違う。

「杏寿郎。手は繋がなくて大丈夫。」
「なんでだ。繋ぐぞ」
「杏寿郎はここに何しにきたの?生徒にわかりやすく授業するために、お城のことをもっと知るために来たんじゃないの?
「ああ。そうだが。」
「なら、私の手を繋ぐんじゃなくて、調べてきた資料と照らし合わせたり、メモを取ったりしてよ。ちゃんと着いてくるからさ。」
「うむ!ではありがたくそうさせてもらおう!」
「でも…明日のアウトレットは…私に付き合って手も繋いでよね…」

「でも」と私が続けた言葉に杏寿郎は満面の笑顔で答えた。

「当たり前だろう!離せと言ったって離さないからな!」


その後は杏寿郎の心ゆくまで城の中の資料を見て回ったり、天守閣に登ったりした。あと併設されてる宝物殿も見に行き当時の装飾品などの展示物もゆっくりと見て回った。
出口にあるお土産物屋さんで杏寿郎は宝物殿に所蔵されているものがまとめられてる本を買っていた。

「付き合ってくれてありがとう。資料も買えたし満足だ!そろそろ宿に向かおう。」
「はーい。安全運転でお願いします」

車に乗り込み、宿へ向かう。
途中コンビニで夜部屋で飲むためのお茶やお酒、お菓子も少し買い、宿に着いた。

チェックインを済ませたら仲居さんが部屋まで案内をしてくれた。

「こちらの【椿】というお部屋が煉獄様のお部屋となります。」

部屋に入ると和洋室の空間が広がっていた。お茶を淹れながら仲居さんが説明を続けた。

「こちらのお部屋は露天風呂付きの客室でございます。24時間、いつでも好きな時にお入りいただけます。また、大浴場も女湯、男湯とございますので入り比べされるのもお勧めです。時間帯で女湯と男湯、入れ替わりますので暖簾を見てお入りください。
夕食は2階にある個室のお食事処で19時よりご用意いたします。個室もこのお部屋の名前と同じ【椿】の個室でご用意します。朝食も同じ場所です。
あと、お布団ですが、そちらのクイーンサイズのベッドを利用されますか?それともお布団を畳に敷きますか?」

「ご提案ありがとうございます。本日はベッドを利用することにしよう。」

「かしこまりました。では、ごゆっくりお過ごし下さい」

流れるような2人のやりとりを他人事のように聞き流す。部屋の中をぐるぐる見て回る。すると廊下の先にドアがあった。そこを開くと洗面所と脱衣所、そしてその先に内湯と露天風呂があった。

「うむ!さすが宇髄のおすすめする宿だ。露天風呂で月見酒ができるなって…タケ大丈夫か?!」
「う、うん。大丈夫。まさか露天風呂付きのお部屋だとは思わなくてさ!」

宇髄くんいつもこんなところに泊まるのか。すごいな美術教師。
仲居さんが入れてくれたお茶を啜る。

「杏寿郎、運転疲れただろうし夕飯まで時間あるし先にお風呂入っておいでよ。」
「そうだな!そうするとしよう!」

浴衣を持ち、脱衣所に入った杏寿郎。
こっちはドキドキが止まらない。冷静を保てない…
てか露天風呂付きのお部屋って書いてなかった…お布団じゃなくてベッドで寝るの?!
2人で一つのベッドに?!眠れるかな…


長い夜が、始まった。




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