目の前に広がるのは、ひまわりのような大好きな人




ひまわりに落ちる 15




杏寿郎に強く抱きしめられた。そのあと、杏寿郎の唇が私の唇に当たった。瞬間的ではなく継続的に。

杏寿郎の目は閉じられている。
私も閉じた方がいいのかなとどこか他人事のように思ってたらそれを感じ取ったのかのようにゆっくりと杏寿郎の瞼が上がった。

そして目が合い、あ…と本能で感じた。



タベラレル



何度も何度も角度を変えてリップノイズを出しながら啄むように唇を奪われる。
息ができず、口を開けるとそれを待っていたかのようにさらに口付けが深くなった。
嫌な感じは全くしない。それよりもふわふわ。頭が朦朧とする。唇が離れたかと思ったら息つく暇なくまたくっつく。その繰り返し。
足の力がガクッと抜けてしまいそうになるのを頑張って耐えて杏寿郎の胸をパシパシと叩くと名残惜しそうに距離が離れた。

「き…杏寿郎…苦しい…」
「す、すまない。だが…そんな可愛い姿を見て我慢できなかった…嫌だったか?」
「いやじゃ、ない、けど…」
「ならまだ大丈夫だな。」
「うぇ?!」

抗議の声を上げる間もなくまた唇を奪われる。次は目を瞑れた。段々と杏寿郎が覆い被さってくるような体勢になり、耐えきれずしゃがみ込むとそのまま畳の上に倒された。
私の上に乗っかってくる杏寿郎がとても色っぽくてドキドキする。

また杏寿郎が近づいてきた…と思って構えてたら部屋の電話が鳴った。
杏寿郎が電話に出てすぐに叫んだ。

「よもや!今から向かいます!」

電話を切って一言。

「夕飯の時間だ。」

時刻は午後7時を20分もオーバーしていた。



部屋を出て、手を繋いで食事処【椿】へと向かった。
係の方に平謝りすると何かあったのかと心配で電話かけてしまったとのこと。
続けて係の方が「ご主人様と奥様、お飲み物はいかがなさいますか?」と聞いてきたためかなり恥ずかしかったが、とりあえずビールと梅酒ソーダ割りを頂くことにした。


「いつのまにか時間が経ってたんだな!」

そう言う杏寿郎のセリフで今更ながら恥ずかしくなった。

注文したドリンクが届き、前菜が運ばれた。
2人でグラスを合わせ、乾杯をして呑む。

前菜から始まる料理もとてもおいしく、箸が進んだ。杏寿郎も「うまい!わっしょい!」と叫ぶほどに。
食事が終わる頃には追加でオーダーしたお酒も呑み切り、2人揃っていい気分になっていた。



部屋に戻り、それぞれ好きなことをして過ごす。
杏寿郎は今日買った本を縁側のチェアで読んでいた。その姿がとても槇寿郎さんに似ていて親子だなぁと思った。

その隙に部屋のお風呂に入ろうと、クレンジングや着替えやらを準備してお風呂に向かう。先輩から貰ったボディクリームも忘れない。
下着は……うん…とりあえずレースを持っていこう。

なんとなくいつもより入念に体を洗う。
洗った髪の毛を頭の上でお団子にしてまとめ、湯に浸かり、ふーーと息を吐く。
大浴場も良かったけどこっちもなかなか雰囲気あっていい感じ。
ちょうど月も見えるし、月見酒とかいいかも。

杏寿郎、キス上手かったな。あんなふわふわするんだな。
またやりたいな…って何考えてんの私!
やらしい考えをかき消すように頭をふる。

「何さっきから1人でバタバタしてるんだ?」
「ヒイィ!!」

「何で入ってきたの?!」と言う問いかけに「俺も風呂に入りたくなった!」と言いしれっと体を流して湯船に入ってくる杏寿郎。向こうはタオル巻いてんのにこっちは真っ裸。装備がない。
あー、もうこれは腹を括るしかない。杏寿郎が先に上がるのを待とう。

「…タケ。こっちを向いてくれないか?」
「やーだー!恥ずかしい!!」

断固として杏寿郎の方を向かないでいると杏寿郎は「うむ…」と静かになった。
すると突然お腹に手が回り、杏寿郎の方に引き寄せられて後ろから抱きしめられた。そして私は杏寿郎の足に挟まるように座らされた。

「ききき杏寿郎…!!なにやっちゃってんの?」
「んーー?」

頸・首元、お湯に使ってないところに唇を落とされる。たまに吸われる感覚がある。
耳も舐められ、ゾクゾクする。
やばい。熱い。クラクラしてきた。
杏寿郎が上がるのを待ってたら私は病院行きだ。

「ホントごめん。倒れそう!先に上がるね!!」

真っ裸とかもう言ってられない。ザバッと立ち上がり、お尻くらいなら見られてもいいやと杏寿郎の顔を見ずに脱衣所へ向かった。




夜はまだ、長い。




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