「え?学園祭?」


ひまわりに落ちる 18


お泊まりデートした日を境に、お風呂から上がった後、夜寝る前に杏寿郎が私の部屋にやってきて話をするようになった。
最初はお互いの部屋を交互に行き来していたが、杏寿郎が「彼女を寝る前に外に出したくない」とかいう謎の持論を唱えはじめ、杏寿郎が私の部屋へ来る事の方が多くなった。
(因みに私の部屋と杏寿郎の部屋は一歩レンガの低い垣根を跨げば行き来ができる)
(なんなら地上に降り立つこともない)
(そして私の部屋より杏寿郎の部屋の方が広いのに何故かこっちに来たがる)

22時過ぎ。
部屋を暗くし、ベッドに並んで寝転び、今日1日あったことを話す。
そんなやりとりをしていたある日の夜、杏寿郎から「来週の土曜日に学園祭があるんだが来ないか?」というお誘いを受けた。

「俺はクラスのフォローなどをしないといけないから構ってやれないが、遊びに来ないか?」
「え?行っていいなら行きたい!」

杏寿郎が先生として働いてる姿が見れるなら行きますとも…!

「蜜璃ちゃんを誘って行こうかな。伊黒くん喜ぶよね」
「もちろんだ!伊黒もきっと喜ぶ。」
「千寿郎くんのクラスの出し物も見に行ってみよう!」
「そうしてくれ。千寿郎もとても喜ぶ!」

卒業以来行ってない母校に久しぶりに行けるんだと思うと嬉しいと同時に懐かしい気持ちになった。

「そういえばタケ。この前の旅行からずっと聞きたいことがあるのだが、いいだろうか?」
「どうしたの?」
「なぜそんなにいい匂いがするんだ?」
「はい?」
「寝る前、今この時間、とてもいい匂いがする」

うーん。これはボディクリームのことか。
そうだ。ちょっと揶揄ってみようかな。
横に寝転んでる杏寿郎の方に寝返りを打ち、思いついたことを言ってみた。

「女の子はお砂糖とスパイスでできてるのよ。好きな人が近くにいるとドキドキしてスパイスが弾けて匂いするのかも。」
「……そうなのか!だからいい匂いがするんだな…」

納得した…そして抱きしめられた。

「宇髄たちにも教えてあげねば!」

そんなこと言ったら宇髄君たちに杏寿郎揶揄われるじゃん…

「杏寿郎ごめん!嘘!」
「ん?」
「女の子は杏寿郎と同じ人間だから!砂糖とかでできてないから!私から匂いがするのはお風呂あがりにいい匂いがするボディクリームを塗ってるからなの!だからお願い宇髄くんたちにはそれ言わないで…」
「はははっ!わかった。言わない。必死なタケが面白くてな。」

頭を撫でられる。
そして笑っていた杏寿郎の目が変わった。

「さて、タケ。俺を揶揄って楽しかったか?これからは俺のお楽しみの時間だな。」

いい匂いを嗅がせておくれ、と私を組み敷き、2人で布団の波に沈んだ。



0時過ぎ。
何度も愛され、気がつくと隣に杏寿郎が寝ていた。自分の部屋に戻らなくていいのかな。
杏寿郎の方を揺らし、声をかけたが起きる様子もない。疲れてるのに。
いつも時間を作ってくれてるんだよね…申し訳ないと思いつつ、それが嬉しかったりする。

起きれなかった時のため、スマホのアラームを4時と6時にセットする。杏寿郎なら起きて止めてくれるはず。
そう思いながらスマホの画面をタップすると、メッセージが数件届いていることが表示されてた。

一件はお母さんから生存確認のメッセージ。「生きてます」と返信する。
二件目はこの前の合コンメンバーのグループメッセージ。「来週の土曜日に再度同じメンバーで飲まないか?」とのこと。
時間が時間だけどまだピコピコメッセージが届き続けてるから返信しても大丈夫だろう。
「すみません、予定があります。皆さんで楽しんでください」と返信する。
残りの数件は洋服屋などのDMだった。

一通り返信が終わり、画面を消して杏寿郎の方を見る。安心しきってる寝顔がいつもの凛々しい顔とはかけ離れてて可愛いなぁ。子供っぽいなぁ。
この寝顔をこの近さで見れるのは彼女の特権だなぁ。
ふわふわの髪の毛に触れる。
そして寝顔を充分に堪能し、杏寿郎にくっ付いて眠りについた。




小説トップ






top