「本当にありがとうございます!!」


ひまわりに落ちる 21



とある休日。
先輩とランチをしていた。
事前に予約しないと入れない、とても人気なカジュアルフレンチ。
ちょっとオシャレして、お昼から普段はあまり飲まないスパークリングワインを飲んで、とってもとっっってもいい気分で美味しいご飯を食べれて幸せだった。


食事が終わり、先輩と別れ、今。
私は目の前の男の子にとても感謝をしている。

「いいえ、こちらこそ、大怪我とかされてなくてよかったですよ!」
「お礼をしたいので良ければあそこのカフェに入りません?ご馳走させてください…」

「お礼なんて、そんなことしないでいいです」と言う男の子に無理やり「お願い!そうしないと私の気がおさまらない!」と懇願し、カフェに入る。
男の子に何が飲みたいか聞くと、「コーヒーって少し苦手で…」と言ってたのでクリームの乗ったフラペチーノを頼む。自分用にアイスティーも。そして席に座り、再度お礼を言う。

「まさか自分がが歩道橋の階段踏み外して転げ落ちそうになるとは思わなかったよ。上から引っ張ってくれてありがとう。」
「あの高さから落ちると絶対怪我すると思ったので、間に合ってよかったです。」

ほろ酔いなのが祟り、歩道橋の階段の上から転がり落ちそうになったのだ。いい大人なのに不甲斐ない…
助けてくれた人の名前を聞くと「竈門炭治郎です。」と元気よく教えてくれた。

「竈門くんは学生さん…だよね?高校生?」
「そうです!キメ学に通ってます!」
「え…?!私、キメ学OGなんだよ。煉獄先生と同級生なの。」

偶然だねぇなどと話をしていると竈門くんが言った。

「マツさん、俺の気のせいかもしれないので気を悪くしたらすみません。煉獄先生とマツさん、同じ匂いするんですけどもしかして煉獄先生とよく会ったりします?」
「に…におい…?なんか匂いする?くさい…?」

杏寿郎には失礼だが、臭いのかしら…

「臭くないです!臭くないんです!なんて言うんですかね?最近煉獄先生すごく甘い匂いすることがあるんです。その匂いがマツさんの今の匂いと一緒で…!」
「あ、あまい、匂い…!」
「はい。綿菓子?ふわっとしたお花みたいな甘い匂いです。」

顔がカアァっと赤くなるのが自分でわかる。
甘い匂い…多分あのボディクリーム…毎晩塗ってるし、なんなら買い足して使ってる。
そしてほぼ毎日杏寿郎は夜に私の部屋に来る。匂いがうつってるんだ。
私の様子を見た竈門くんは何かを察したのか私以上に顔を真っ赤にした。

「で、でも、煉獄先生って甘い匂いする日は特に機嫌がいいんです!!だからなんでかなぁって思ってたので理由がわかりました!あ、そろそろ俺行かないと!では、失礼します!飲み物ありがとうございました!」


竈門くんが走り去っていった。

もし、ボディクリームの匂いが杏寿郎の仕事に支障をきたすようなら付けないようにしよう。
教師だもん。女子生徒に匂いで色々と言われるかもしれない。
もしくは塗っても一緒にベッドに横になるのは週末だけにしよう。



夜、いつものようにやってきてベッドに腰掛ける杏寿郎にローテーブルを挟んで正対する。

「ん?今日は横に座らないのか?」
「いえ、少しお話があります。」
「どうした?タケ?」

「実は…」と竈門くんに偶然助けられ、と今日起こったことを話す。

「なので、杏寿郎とベッドでゴロゴロするのは杏寿郎が次の日が休みの日にしよう。思春期真っ只中の生徒さんたちに変な気を使わせるかもしれないし!」

勢いよく言った私をポカンとした表情で見られたが、すぐに返答が来た。

「問題ない!竈門少年は特別鼻がいいからな!気づいてるのは竈門少年のみだろう。」

竈門くんだけ…?すごいな…と思っていると、杏寿郎は続けて言った。

「それに、この2人で過ごす時間は俺にとっての癒しの時間だ。タケはそんな俺の楽しみを奪ってしまうのか…?」
「で…でも青少年の発育にはあまり…よろしくないんじゃない…?」
「俺がタケ不足で倒れてしまう!無理だ。俺はタケを甘やかしたいし甘やかされたい。」

腕を組み、ドヤ顔で言う杏寿郎。
もう、こうなると頑なに譲らないだろうなと感じた。

「……わかった。なら私ボディクリームぬらな「塗るんだ。塗っていい。」

「了解です…」

「ならこの話は終わりだ!さあ、タケ。こっちにおいで。」

言いくるめられた感じがするけど…もういいや…と私は考えることを放棄して杏寿郎の腕の中に収まった。




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