22
※架空の会社名出てきます。



ひまわりに落ちる 22



「マツくん。突然ですまないが、今夜営業二課の佐藤くんと飛跳製薬の会長の接待に行ってくれないか?」


昼前に部長に呼び出され、接待に行くこととなり心の中でため息をつく。まあ煉獄家でご飯とか今夜は取る予定もなかったので大丈夫か。明日が休みでよかったと胸を撫で下ろした。一応杏寿郎には連絡しておく。

『今夜は接待という名の飲み会になりました。夜も遅くなるかもです。その時はタクシーでも捕まえて帰ってきます』
『承知した。気をつけて。俺も今夜はいつものメンバーで飲むことになった。』
『そうなんだ。楽しんできてね!』



退社時間より少し早めに会社を出て向かった先は場所は老舗の割烹料理店。
飛跳製薬の会長と社長、部長と佐藤さんと私の五人。私たちの会社の製品と飛跳製薬でオトナ女子向けのコラボができないか?という商談だった。

美味しい料理を食べつつ話をし、お酒を注いで回る。
向こうの会社の方々も今回の提案にかなり前向きに捉えてくださり、週明けに契約内容などを詰めることになった。

無事に商談は終了し、向こうの方々をタクシーに詰め込んで会食もお開きとなった。

「タケちゃん。今日はありがとう。ほんと助かった!」
「いいえ。佐藤さんこそお疲れさまでした。この商談上手くいきそうでよかったです。」
「あのさ、慰労会を兼ねてもう少し飲んで行かない?一杯だけ。」

そう言われてついて行った先は落ち着いた雰囲気のバーだった。個室のソファ席にはすでに先客があり、カウンターに2人で並んで座る。

「ここ、たまに1人で飲みたい時に来るんだよね。何が飲みたい?」
「こういうところに来るって佐藤さん大人ですね。何頼めばいいかよく分からないので、とりあえず無難にカシスソーダにします。」
「ならそれと、俺はバーボンのロックで。」
「かしこまりました」

頼んだものが出され、2人で乾杯する。

「タケちゃんと一緒に飲むのってこの前の合コン以来だよね。この前はごめん。一気に飲んでしまって酔いが回るの早かったんだ。」
「佐藤さん倒れるように寝てしまったからびっくりしましたよ。」
「言ったかもしれないけど、タケちゃんのことがずっと気になっててさ、絶対話そうって、次に繋がろうって思ってたら頭の中真っ白になったんだ。」
「はあ、そうだったんですね。」

この前の合コンとは打って変わり、目の前の爽やか佐藤さんはこういうふうにお酒を飲む人なんだなと思いながら飲み物を飲んだ。

「でさ、ずっと聞きたかったんだけど…」
「はい。何ですか?」

グイッと寄ってきた佐藤さんに少し疑問を抱きつつも続く言葉を待つ。

「タケちゃんって彼氏…いる?もしいないなら…俺なんかどう…かな?」
「さ、佐藤さん?もしかして今日も酔ってます?」
「いや、全く」

グラスを持ってた手を握られる

「ちょ、佐藤さん…離してください…」
「俺、本気なんだけど…タケちゃん…」
「あの…私…彼氏がいるんです…!」
「え?」
「あの合コンの後すぐに出来たんです…」

パッと握られてた手が離れる。それと同時にチェイサーとして出されてたグラスのコップがこぼれて私のスカートにかかった。

「ご、ごめん!!水が、スカートに!!」
「いえ、大丈夫です。ハンカチを膝に乗せてたのでそこまで濡れてないですし」
「このハンカチ使って!少しスカートに当てて!」
「す、すみません…お借りします…」

ハンカチを受け取り、少し濡れたスカートへポンポンと押さえつけるように水分をとっていく。

「そ、そうだったんだ。ごめん!なのにこんな手を握ったりして!」
「い、いえ…私も佐藤さんにはそういう事話をしてなかったので…」

「あー、俺の一方的な片思いだったかー。で、その彼氏ってどんな人なの?」と笑いながら言う佐藤さん。

「彼は…とても暖かくて、小さい頃から私の中心にいるんです。嫌なことや楽しいことを常に共有したいって思える。2人ならどんな事も乗り越えられるって思える人です。もちろん、頼りがいもあります。」
「ベタ惚れだね。俺が付け入る隙もないってやつか。」
「…すみません…」
「全然!気にしないで!とは失恋してすぐだから言えないけど…タケちゃんが幸せならそれでいいんだよ。でもそこまでいわれる彼氏ってすごいわ。本当に大好きなんだね。」
「…っ!!は…はい…大好き…です」
「タケちゃんに好かれるとかどんだけ幸せ者なんだよ!その彼氏!」


チビチビと飲んでたバーボンのロックを煽るように飲み干し、おかわりをした佐藤さんに苦笑いをしつつ、カシスソーダの入ったグラスを口につけた。




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