「ぎゃあ!!杏寿郎!?!!」
「静かに。みんなが起きてしまう。」



ひまわりに落ちる 24


心臓がまろび出そうになった。
朝から心霊体験かと思った。
心臓がバクバクいっている。

「おはようタケ。驚かせてすまない。聞きたいことがある。昨日はあの人…佐藤さんだったか。接待はあの人と2人だったのか?」
「うちの会社からは2人だよ。商談相手の会社の方はもう一次会でタクシーに乗せ込んだし。」

タオルで濡れた顔を押さえながら答える。

「では、その後の二次会は2人きりだったのか?」
「そうだよ。打ち上げって感じで、2人だったけど、どうし「ならば、俺が挨拶した後、佐藤さんはタケになんと言っていた?」

私が話す言葉を遮るように杏寿郎が言葉を発した。
いつもの杏寿郎じゃないみたいだ。


「ってか杏寿郎、何かあった?怒って…るの?」
「タケ。俺の質問に答えるんだ」
「…佐藤さんが言ってたこと…」

【さっき聞いたまんま、明朗でいい人そうじゃん。】

杏寿郎のことを褒めてたなって思い出すと少し嬉しくもあり、クスッと笑ってしまった。
本人に向かって「二次会の間中、杏寿郎の惚気話してた」とか言えない…すこし顔に熱が集まり始めた。

「そんなに笑顔で頬を赤く染めて…俺に言えないことなのか?」
「別に杏寿郎には関係ないじゃん…」

「悪いこと言ってなかったし」と続ける前に杏寿郎が私に荒々しく口付けてきた。

「んっ…?!…っ…」

動けないように肩を抱かれ、頭も固定される。その力が強すぎて痛い。
いつもの優しいキスじゃない。目の前の杏寿郎の雰囲気が違う。
目が合う。いつものように微笑んでくれない。
睨まれてるようにも感じる。
その視線に含まれる感情は、怒り…?


怖い。


涙が出てきた。
なんで怒ってるの?
肩が痛いよ。
ココロも、痛いよ。

「き、っ…きょ…じゅろ…」

名前を呼び、息を吸おうと口を開けるとさらに深くなる口付け。
こんな乱暴な口付けをやめて欲しくてその場にしゃがみ込もうとした時だった。

「おーおー、朝っぱらから人の家で何派手に盛ってんだよ…」

寝ぼけ眼の宇髄くんが洗面所に入ってきた。
驚いたのか、込められていた力が一瞬抜けた杏寿郎を押しのけ、荷物をとって挨拶もままならずに玄関を出てタクシーを拾い、家に帰った。



家に帰ってすぐお風呂に向かった。お湯を溜めよう。その間にシャワー浴びよう。
着ていた洋服を脱ぎ、鏡を見る。肩にくっきりと痣ができていた。痕が残るくらい、強く握られてたんだ。

杏寿郎が何を思ってこんな事したのか分からない。
温かいシャワーを頭からかぶりながらさっきの出来事を思い出して泣いた。


湯船に浸かり、また涙が出る。
杏寿郎の考えてることが、わからない。
涙を誤魔化すように頭まで湯船に浸かった。
息ができなくて顔を出すとまた涙が出てきた。
なんどか潜ったり出てきたりを繰り返した。




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