お風呂から上がっても悲しくて、カーテンを閉めたままの真っ暗な部屋で、ベッドに潜っている。


ひまわりに落ちる 26


瑠火さんに「朝食は今日いりません」と連絡を入れ、誰とも会いたくなくて携帯を電源を切って枕の横に置く。

隣の部屋から音は聞こえない。まだ宇髄くんの家かな。

昨日の夜の事を振り返り、さっきまでの事が頭の中でループする。
また涙が溢れてきた。

何が杏寿郎を怒らせたんだろう。

佐藤さんと2人で飲んだこと?
別れ際の佐藤さんとの会話を知りたかったのに教えなかったから?
それともその後簡単に宇髄くんの家に上がったこと?

杏寿郎が怒るようなことを私がしたから、こんなことになったんだ。
嫌われちゃった。やっと両想いになれたのに、嫌われるのは一瞬か…

もう朝、起こしてくれることも無くなるのかな。朝ごはんも一緒に食べられなくなるな。
夜のおしゃべりもなくなるのか…

もう、あの明るい太陽みたいな笑顔を向けてくれることはないんだな。
今考えると楽しい思い出ばかりだなぁ。

優しい杏寿郎に甘えてばかりで調子に乗ってたのかもしれない。

そして私はボロボロと涙を流しながらも疲れ果てて深い眠りについた。




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「ちょっと待てェ!煉獄!」
「善は急げだ!早く行って佐藤に話をしなければ!」
「そんな草臥れた格好で相手のところに乗り込むのかよ!」
「それもそうだな!一度家に帰ってスーツに着替えてから向かおう!」

今にも走って出ていきそうな煉獄をどうにか引き止めようとするが無駄だった。
もうこうなった奴は止められない。
宇髄の運転する車にみんなで乗り込み、煉獄家へとりあえず向かう。


「まあ、好きな女のためにライバルのところに乗り込むのは派手にいいけどよ、少し落ち着けよ。」
「理性的にこういうことは話さないとまたややこしい事になるぜェ」
「時には本気で話し合うことも大事だ。それが友情というもの…」
「テメェ冨岡…!お前は黙ってろォ!!!」
「うむ!俺はいつでも冷静だ!」
「そろそろつくぞ。」
「ありがとう宇髄。」

煉獄家の駐車場に車を停める。
「待ってるからしっかり準備してこいよ!」
すると煉獄は「ありがとう!」と返事をし、車から降りていった。

「はーー。煉獄も派手に嫉妬とかするんだな」
「ずっとタケも煉獄もお互いのことしか見てなかったからなァ。それぞれ違う人と付き合ってた時も嫉妬じゃなくて絶望、って感じだったしな。」
「ああ、それわかるわー。まあ、俺たちは煉獄と佐藤が警察沙汰にならないように地味だが見守っとこうぜ。」
「そうだなァ」


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自室に向かう。
父上が「朝から騒がしい。少し静かにしろ、千寿郎はまだ寝てるんだぞ」と声をかけてきて自分がそんなに音を出してたのかと情けなく感じた。

クローゼットからワイシャツとスーツを取り出す。着ていた服を脱ぎ、着替える。

そうだ。俺は仲良さそうに話すタケと佐藤を見て、頭を撫でられるタケをみて「俺の彼女なのに」と嫉妬したのだ。
心のモヤモヤ、嫉妬。心が狭いと言われたって構わない。一等好きな女の事を想って何が悪いんだ。

そして、一等好きな女を泣かせた。
煉獄家の長男として、いや、男として情けない。

今朝のやりとりでタケに嫌われたかもしれない。これから勝手に佐藤に会いに行く事を知ったら怒るかもしれない。
別れを切り出されるかもしれない。

でも、俺は知りたい。このモヤを晴らしてタケに謝りたいんだ。


隣の部屋のカーテンは閉まったままだった。




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