「少しでもやばい雰囲気になったら俺たちが止めに入るからな。いいな?煉獄」



ひまわりに落ちる 27


タケの会社に着いた。土曜日だが出勤してくる人たちがちらほら増えてきた。

入り口近くの柱に立って待ってしばらくしていると、昨日の男ー佐藤ーが歩いてきた。


「佐藤さん、おはようございます。」
「え、煉獄さん?お、おはようございます…」
「昨日も遅かったのに出勤、お疲れ様です!」
「いやあ、お酒入ってたから朝起きるのキツかったですよ。どうされました?タケちゃんなら今日休みですよ?」

タケちゃん、か…と心の中でつぶやく。

「…今日は佐藤さんに話があって来たんです。」
「俺に、ですか?…場所、少し移動しましょうか。ここだとほかの社員にも聞こえるので」
「わかりました。」

2人で歩いて近くのコーヒーチェーン店に入る。ホットコーヒーを頼んで席に座る。

「で、煉獄さん。ご用件とは?」
「タケのことです。」
「タケちゃん?」
「はい。単刀直入にお伺いします。佐藤さんはタケのことをどうお思いですか?」
「本当に直球ですね。その質問の真意はなんですか?」
「そのままの意味です。」
「そうですか…」

沈黙が長い。何時間にも感じてしまう。
何か言った方がいいのだろうかと思ったとき、佐藤の口が開いた。

「タケちゃんのこと、好きでしたよ。」
「やはりそうでしたか。」
「んで、昨日告白してすぐに振られました。」
「よもや…」

「どんな彼氏か、って聞いたらとても幸せそうな顔をしてこう言ったんです。【嫌なことや楽しいことを常に共有したいって思える。2人ならどんな事も乗り越えられるって思える人です。】って。そんなこと言われたらそれ以上口説くこともできないですよ。隙あらば俺に傾くかなとか思ってたのにそんな隙すらない。2人で飲んでる間、惚気話をずっとしてましたよ。そしてその後煉獄さん。貴方本人と会って、聞いていた通りの人だなって知りました。タケちゃんがすごく嬉しそうな顔したのを見て、俺にはタケちゃんにこんな顔させられないなって思ったんです。」

そして佐藤は続けた。

「だから、これからはタケちゃんの惚気話を聞いて、俺も彼女ができた時は惚気話でも思いっきり聞かせてやろうと思ってます。もしかして俺、なんかやらかしました?」
「……いや、何もしてない!そう言うことだったんだな!」
「タケちゃんが煉獄さんの事嫌いになるはずないですよ。ずっと好きだったんだから……ってそろそろ時間だ!すみませんお先に失礼します。お幸せに!!」

バタバタと走り去る佐藤を見る。
姿が見えなくなってからコーヒーを一口飲み、ふーーーと息を吐いた。

頭の中で色々整理をする。

「よかったじゃねェか。話が出来て。」
「派手にいい奴だったな!佐藤!」
「相手に真正面から向かい合う。さすがだ、煉獄。」

「俺は…とても酷いことをタケにしてしまった。謝って許されないかもしれないが、謝りに行かねばならん。」
「そうだな。しっかりと謝れェ」
「タケから1発派手にビンタでもされろ。それで仲直りだ。ほら、行くぞ。乗せてくぜ。」
「うむ!すまない、みんな。ありがとう!」


早る気持ちを押さえながら、帰路についた。




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