家の前まで送ってくれた宇髄たちに礼を言い、自宅に入る。


ひまわりに落ちる 28


自室からタケの部屋に向かって話しかける。いつも通りの声色で。

「タケ。いるか?話したい事があるんだ。」

「タケ?寝てるのか?」

何度か呼びかけるが何も反応がない。
タケの部屋のガラス戸を開けようとするが、いつも空いてる鍵がかかっていて開かない。
カーテンがしっかり引かれていて中も確認ができない。


電話をかけるが電源が切れてる旨のアナウンスにすぐ切り替わり、呼び出し音にすらならない。

まさか家に帰っていないのか?
ならばタケはどこに行った?
冷や汗が出て来た。心臓の音がうるさい。

外に探しに行こうと部屋を出ると、後ろから声をかけられた。

「兄上。おはようございます。」
「せ…千寿郎か…おはよう。どうかしたか?」
「兄上、もしかして姉上をお探しですか?」
「ああ、そうだが…」
「姉上、今朝早く帰ってきたみたいです。でも朝ごはんは要らないと母上に連絡して来たみたいですけど…」
「そうなのか…だが、部屋の鍵がかかってたし、声をかけても反応がない。電話しても繋がらないんだ。」
「え…連絡つかないんですか…?!父上と母上にも言って探さないと…!」

千寿郎の顔が一気に青ざめた。

「落ち着いてくれ、千寿郎。タケと連絡が取れなくなった原因はこの兄にあるのだ。」
「兄上が原因ですか?」
「ああ。だから俺はタケを探して謝らなければならない。」
「お、俺も探します!」

顔色の悪い千寿郎の頭をくしゃっと撫で、少ししゃがんで目線を合わせる。

「千寿郎。タケは俺が探しに行く。だから千寿郎は家にいて、俺と入れ違いになるかもしれないタケを待っててくれないか?」
「わかりました。」

「待ちなさい、杏寿郎。」
玄関で靴を履き、出ようとした時に母上に呼び止められた。

「母上…どうかしましたか?」
「千寿郎。向こうへ行っていなさい。」
「はい…では兄上、お気をつけて…タケさんが戻ってきたら連絡しますね。」

千寿郎が自室へと戻っていくのを確認し、母上が口をひらいた。

「杏寿郎。あなたは強く、思いやりのある優しい子です。ですが、その強さを違う方向に向けてしまったら周りの人から恐れられてしまいます。大切な人を守るにはどうすればいいのか、しっかりと考えるのですよ。」
「はい。」
「そしてタケさんは今自宅にいるみたいですよ。」
「本当ですか?!」
「ええ。先ほど私に連絡が来ました。」
「ではタケの部屋に行ってきます!」

靴を脱ごうとすると母上から制止された。

「杏寿郎。タケさんに謝りに行くのですよね?いつものように部屋越しに話すのですか?」
「…!!!玄関から周っていってきます!!!」


靴を履き直し、タケの家へ走った。




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