ひまわりに落ちる 30
パッと杏寿郎から離れる。
「え…いま、なんて…」
「これからも喧嘩をするかもしれないし、何が起こるかもわからない。だが、2人で手をとりあい、同じ方向を向いて、同じスピードで、これからの長い人生をタケと歩んでいきたい。
お隣さんでも、幼馴染でも、彼氏彼女でもなく、夫婦として。
だから、タケ。俺の、お嫁さんになってくれないか?」
ぶわっと心の中が熱くなる。
また涙が溢れる。
どうしよう。さっきまで地の底に落ちたような気持ちだったのに、杏寿郎が発した言葉によってその気持ちが急に浮き上がる。
とても嬉しい。
今度は悲しい涙じゃない。嬉しい涙。
ボロボロ頬を伝う涙を杏寿郎が拭う。
「杏寿郎…」
「ん?」
答えなんてもうとっくの昔から決まってる。
涙を拭いて、杏寿郎の目を見る。
「わたしを、杏寿郎の、お嫁さんに、してください…」
その返事を聞いた杏寿郎は、今までにないくらいの笑みをこぼした。
そして、それから何度も何度も優しい口付けをした。
とても長い夜が明けた。
ーーーーーー
2人で抱き合って、笑いあって、キスをして。いつの間にか夕方になっていた。
「うむ。もう少しこうしていたいのは山々なんだが、そろそろ千寿郎にも連絡せねば!俺の家に帰ろう。」
「うん。わかった。ならまた夜、こっちにくる?」
「何を言ってるんだ?タケも一緒に俺の家に行くんだ。」
「え?なんで?」
「結婚の報告をしに行く!」
「えええ?!いま?いまから?」
「良い報告は早い方がいい!」
着替えてメイクするからちょっと待ってて、と杏寿郎に伝えると「わかった!」と元気な返事が聞こえて来た。
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