「ただいま帰りました!」
「お、お邪魔します…」



ひまわりに落ちる 31


急いで化粧と着替えをし、2人で杏寿郎の家に向かう。

「姉上!大丈夫でしたか?!」
「千寿郎くん、心配かけてごめんね…大丈夫だよ。」
「さあ、タケ。行こう。千寿郎も居間に集まってほしい。」


いつもの煉獄家。
居間に行くと、槇寿郎さんと瑠火さんがお茶を飲んでいた。

「父上、母上、千寿郎。少しいいですか?」
「2人とも、おかえりなさい。ちゃんと話ができたみたいですね。」

槇寿郎さんと瑠火さんに正対するように並んで座る。千寿郎くんの顔色が少し悪いように思える。

「はい。2人でちゃんと話し合えました。そして、ご報告です。タケと結婚をします。お許しいただけますでしょうか。」
「お願いします。」

2人で頭を下げる。

「2人とも、頭を上げなさい。」と口を開いたのは槇寿郎さんだった。

「わかっていると思うが、結婚というのはその場の勢いで決めるものではない。これからの一生の話だからな。結婚すれば喧嘩した、言い合いになったくらいで簡単に別れるということもできないんだ。杏寿郎、タケさん。そういうことも含め、今後2人でしっかりとやっていけるのか?」

槇寿郎さんの言いたいこと、すごく分かる。さっきまでの私たちのことを言われてるみたいでもある。
けど、私たちはもう、大丈夫。

杏寿郎がテーブルの下で私の手を握った。

「父上。父上のおっしゃってる事はよくわかります。タケとは今後も喧嘩することがあるかもしれません。ですが、それはお互いを高め合うために必要な過程だと思います。そして、喧嘩をしたからと言って俺はタケと離れるつもりもありません。」

「杏寿郎。お前の考えはわかった…ではタケさんはどうなんだ?」

「わ、私は、夫婦になるという事は2人で手を取り、支え合って生きていく事だと思います。その中で意見の食い違いも出てくるかもしれないけど、杏寿郎となら、ちゃんと話し合って、乗り越えていけます。」

「なので、お許しください。」と再度頭を下げる。

「本気なんだな。」
「はい。」

「許すもなにも、2人が幸せになるなら俺は反対しない。さっき聞いた事は2人が本当に夫婦となる覚悟ができているか知りたかったんだ。
杏寿郎。タケさんをしっかりと守るんだぞ。こんなにお前を好いてくれる人などなかなかいない。
そしてタケさん。これからも、杏寿郎このことをよろしく頼む。」

頭を下げる槇寿郎さんに、こちらも再度頭を下げる。

「杏寿郎、タケさん。幸せになるのですよ。」
「兄上、姉上、おめでとうございます!姉上が本当の姉上になるんですね!」


「はい!ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします。」

「だが杏寿郎。タケさんのご両親にも挨拶に行かねばならないが…休みは取れそうなのか?」
「休みならテスト期間が終わったら調整つきそうです。」
「なら、私の両親にも日程調整してもらうように連絡します。」
「うむ。そうしてもらえないだろうか。」

今度は私の両親への挨拶。
連絡を取ろうとスマホをポケットから取り出し、お母さんへ発信した。
数回コールが鳴る。

「もしもし?お母さん?」
『あ、タケ?どうしたの?』
「実はね、杏寿郎からプロポーズされて、お願いしますと返事したの。私、杏寿郎のお嫁さんになります。」
『きゃーーー!本当に?!本当?とうとう結婚するのね!お父さん!きいた?』

キーーンとお母さんの声が響く。
隣で「よもや!」と口にする杏寿郎。目を見開く槇寿郎さん。

『タケ!杏寿郎くんに代わって!』

杏寿郎にスマホを渡す。

「代わりました。杏寿郎です。お久しぶりです。」
『タケをお嫁にもらってくれてありがとうねぇ!』
「いいえ、こちらこそありがとうございます。改めてご挨拶にお伺いしたいのですが…」
『あら、そうねぇ。私たちはタケの相手が杏寿郎くんなら安心だから挨拶なんていいんだけど…杏寿郎くんもタケも小さい頃から私たちの子供みたいなものだし!って…お父さんが代わりたいって!まっててね!

杏寿郎くん。タケを嫁に…本当にありがとう!いやあ、本当にめでたい!
挨拶とか堅苦しいの無しにして、せっかくならこっちに遊びにくるといい。休みが決まったら教えるんだよ。』

スピーカーにしなくても周りによく聞こえる声で話すお母さんとお父さんに少し恥ずかしく感じつつも、喜んでくれてよかったという安心感が大きい。

電話を切り、みんなでホッと息をつく。

「2人とも。おめでとうございます。これからも仲良く、朗らかに過ごすのですよ。」
「兄上、姉上、本当におめでとうございます!!」



その日の夜は、煉獄家でご馳走をたらふくみんなで食べた。
杏寿郎は槇寿郎さん…お父さんとお酒を飲み交わしていた。





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