11+
『賞味期限、2時間!』
『わー!おいしいー!!』
『ここのお店の場所は…』
『栗以外にもいろんな種類のモンブランが…』
ひまわりに落ちた後のおはなし
とある休日。
何気なく見ていたテレビに映ったのは最近駅の近くにできたモンブラン専門店。
秋晴れで天気も良く、布団を干していたタケに声をかけて家を出たのが20分前のこと。
「うわー。テレビ効果?すごく混んでるね…」
「だが、回転は良さそうだ!待ってみよう!」
目的の店には長蛇の列ができていた。
タケの手をとり、指を絡め、列に並ぶ。
親指でタケの手をなぞると「外だからそんなことしないで」と顔を赤くして照れたように言った。
「大変お待たせしております。先にメニューをお渡ししますのでご覧になられてお待ちください。裏面がテイクアウトメニューです」
さらに20分ほど待ったところに店員がやってきてメニューを渡される。
「ここのお店の推しは目の前で絞り出される和栗のモンブランかぁ。あ、杏寿郎。サツマイモのモンブランもあるよ?」
「芋のモンブラン!美味しそうだ。テレビで言ってたようにバナナに芋、かぼちゃ、いろんなモンブランがあるから迷うな!」
「イートインだけど…一つに決められないね」
「他のは持ち帰ればいい!家でも食べられる!」
そんな話をしながら2人でメニューを見ていると先に店員がメニューを聞きに声をかけてきた後、程なくして入店をした。
テーブルに案内され、少し待つと和栗のモンブランとサツマイモのモンブラン、そしてタケにホットのダージリンティーと俺はアイスコーヒーが運ばれてきた。
「見事にカップルか女子だけだな!美味しかったら不死川達とまた来ようと思ってたが、キツいな!」
「別に周りは気にしないと思うけど…テイクアウトだったらいいんじゃないかな?」
「今度差し入れに持って行こう!」
スプーンですくい、一口、口に運ぶ。
「うまい!!!」
「おいしい!!」
2人で顔を見合わせ、もう一口、もう一口と食べ進めていく。おいしいものを食べると無言になるのは蟹を食べる時だけではなかった。
じんわりそう思っていると、目の前のタケが「杏寿郎のサツマイモのやつもちょっとちょうだい?」と言ってきた。
皿ごとタケに渡そうと思ったが、ピコンといいことを思いついた。
己のスプーンでモンブランをすくってタケの口元に運ぼうとした。
「き、杏寿郎…ここ外だから…」
「誰もこっちを見ていない。さあ、口を開けて。早くしないとクリームがスプーンから落ちてしまうぞ」
顔を赤くして「あー…うー…」と葛藤しているタケがとても可愛らしい。そして意を決したようにパクッとスプーンに乗ってるサツマイモのそれを口に運んだ。
「!!おいしい!!サツマイモはサツマイモで滑らか!」
「そうだろう!うまいぞ!」
さっきまでの恥じらいはどこにいったのか。パアァ、と周りに花が咲いたかのように明るい雰囲気になった。そして「お礼に和栗の方もどうぞ」と皿を俺の方に寄せてきた。
「俺にはあーんをしてくれないのか?」
「え、え…やりたいの…?」
「もちろん」
「わ、わかった…」
顔を赤くし、スプーンですくって俺の前に出されたクリームを口に運ぶ。
「うまい!!やっぱりテイクアウトもしよう!和栗と南瓜と芋を二つずつ!」
「そんなに食べるの?!」
「問題ない!千寿郎にも食べさせてやりたいからな!」
「そうだね。お持ち帰りして千寿郎くんたちにお土産持ってこう」
2人で目を合わせ、微笑み合う。
ここはカフェのはずなのに周りに誰もいない、2人だけの世界なんじゃないかと錯覚しそうになった。
それはいけないと気を取り直し、タケの嬉しそうな顔を見ながらモンブランを食べ続けた。
そして残りのケーキとドリンクも飲み終わり、テイクアウト分までお会計をし、手を繋いで煉獄家に帰った。
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「き、きゃあああああ!!!伊黒さん!!見ました?!!?!!煉獄さんたち、ラブラブだったわぁぁぁぁ!!!!!」
「あ、ああ。そうだな、甘露寺。煉獄もこんな公の場であんなことをすることに驚きを隠せない…」
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「ねえ、お兄ちゃん…あそこのテーブルに座ってるのって煉獄先生だよね?」
「本当だ。一緒にいるのは…先生の奥さんかな…って…うわあぁ!禰󠄀豆子!何をテイクアウトするか決めたか?」
「お兄ちゃん?!煉獄先生見ていきなり叫んでどうしたの?」
「いや、な、何でもない…!(あんな先生見たことないぞ!あんな顔して「あーん」してるところなんか俺たちは見たらダメだ!!)」
翌日、自分を見て顔を赤くした炭治郎と、少し焦ったような伊黒の態度に疑問を抱き、それぞれに尋ねたら2人から「モンブランは美味しかったですか?」「そんなに美味しかったか?」と言われ、昨日の様子を見られていたことに衝撃を受けてしまった。
世間は狭い!だが美味しかったしタケも可愛かったから全て良しとした!
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