「妹分でもなんでもない。1人の女性としてタケのことが好きなんだ。俺と、付き合ってくれ。」


ひまわりに落ちる 05



目の前の杏寿郎が顔を赤くして、だけどまっすぐ此方を見て発した言葉で私の涙腺は崩壊した。

「よもや?!!!どうした?!やはり昨晩の酒が抜けてないか?!どこか痛いのか?!」

「き…きょうじゅ…ろ……どこも…いたくない…違うの…嬉しくて…」

テーブルからティッシュを取り、涙を拭き、深呼吸をする。そして、隣に座る杏寿郎に再度体を向き直す。
杏寿郎が緊張しているのが伝わってくる。

「…私も、杏寿郎のことが好き…大好き。私でよければ…よろしくお願いします」

言い終わると同時に杏寿郎に抱きしめられた。

「タケほんとか?!よもやよもやだ!!もう離さないぞ!!」

ギュッと力強く、だけど優しく。

「私も…離れないからね…!」

また涙が溢れて杏寿郎の肩に染みる。それも気にならないくらいに私もギュッと抱き返す。

どのくらい抱き合ってただろう。
「タケ」「杏寿郎」とお互いに何度も名前を呼び合ってクスクスと笑いあう。
涙も止まり、杏寿郎の暖かさに安心しきっていた。そんな時、杏寿郎が突然声を上げた。

「よし!タケ!抱き合っていたいのはやまやまだが、俺の家に行こう!」
「え?なんで?」
「父上たちに俺とタケが付き合い始めたと報告しに行こう!」
「え…今から…?」
「こういう喜ばしいことは早めに言うべきだ!」
「う…うん!ちょっと化粧を直してくるからちょっと待ってて。」
「ああ。ここで待ってるから、うんと可愛くなっておいで。」

頭を一撫でされ、そのまま洗面所へ向かう。
鏡を見ると頬が赤くなり、にやけてる顔の私がいた。
化粧を直しながらさっきのやり取りを思い出す。
夢なのかな?夢じゃなくて現実?夢だと嫌なので頬を思いきり抓る。

「…痛い…夢じゃないんだ。現実だ…」
「一人で頬を抓って何してるんだ?遅いから見にきてみたら…」
「さっきまでのやり取りが夢のようで。頬を抓ってみたの。」
「まったく…これは現実だ。夢では大変困るな!さあ、準備できたなら行くとするか!」
「うん!!」



手を繋いで歩く。
お隣さんだからそっからそこの短い距離だけど。この前の合コンの時みたいに腕や心が痛い握り方じゃない。優しい握り方。




ああ、手を繋いでるだけなのにとても幸せ。




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