15.
本当に偶然だった。
もう少しでテスト期間が始まるから、生徒たちに演習問題をさせてた時だ。
ふと窓の外を見たら屋上になんか見えた気がした。
嫌な予感がして「静かに自習しとけよォ。チャイムが鳴ったら終わりだァ。数学係は終わったら集めて職員室に持ってこい」とだけ生徒たちに言い残して教室を飛び出した。
あそこは職員用屋上…。
そこまでいくのに最短ルートを考え、走り抜ける。
屋上に続くドアを開け、庭園を見る。
誰もいない。俺の見間違いかァ?
フワッと風が吹いた。そしてほのかにタバコの匂い。
誰か、いる。
庭園にいないってことは、奥の方か…
タンクや室外機の間を通り抜け、そこに見たのはフェンスによじ登っているマツの姿。
一瞬何をやってるのかわからなかったが、こっちに連れ戻さねぇと直感で思った。
「オイ、テメェ何してやがる!!!!!」
マツの腕を引き、自分の方に抱き寄せて倒れ込む。
「は、離してください」
「離さなねェよ!テメェ何しようとしてた!?」
「私も研二のところに行くの!!もう2度と会えないなんていやだ!同じところに行くの…」
「オイ。マツ。テメェが死んで彼氏は喜ぶと思うのかよォ」
「………」
「でも…」と言葉を続けたマツを見て、気づいた。
こいつ、もしかして…
頭の中でずっと生きてる、死んでしまった、グルグル回ってて整理ができていないようだ。
背中をポン、ポン、と優しく撫でる。
「マツの彼氏は、一般市民を守ったんだろ?立派じゃねェか」
「でも、もう2度と、会えないの…声も、聞けないの」
「あァ」
「家にいたら写真や置きっぱなしのシャツやタバコを見てしまって、また帰ってくるって思っちゃうの…」
「あァ」
「最後に話したのが電話越しだったの。直接会ってないの」
その言葉を皮切りに、マツはボロボロと泣きはじめた。
「泣い、たら…本当に死んじゃったって…受け…入れてしまったみたいで…泣いちゃ…いけないと…思ってた…」
「ここには俺以外誰もいねェよ。思いきり泣けェ…」
わああぁん…と泣き続けるマツの背中を撫でながら、
最期まで会うことのなかったマツの彼氏の冥福を祈った。
15. pray
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