16.
俺の腕の中で声を上げて泣いてたマツが段々と静かになってきた。
「…マジかよォ…」
すうすうと寝息を立てて寝てやがる…
まあ、顔色も悪いし目の下のクマがひどいからここ数日まともな睡眠を取ってなかったんだろう…
遠くからチャイムが聞こえる。腕時計を確認すると授業が終わったようだった。
「…これ、当分起きそうにねェよな……」
次の時間も授業があるが、動くに動けねェ。
寝転んだままだった体勢を、マツが起きないようにそっと上半身だけ起こし、膝枕をする。
着ていたベストを脱いでマツにかけてやる。
ポケットの中にあるスマホを取り出し、メッセージアプリを開き、文章を打って送信した。
『所用で次の2年柿組の授業に行けそうにねェ。俺のデスクにプリントがあるからそれを配って自習するように伝えててくれないか?数学係は終わったら集めて職員室に持ってこいと。』
すぐ既読になり、返信が来た。
『わかった。貸し1つな』
「チッ…すまねぇな、伊黒…」
膝の上に頭を乗せて寝ているマツの髪の毛を頭を撫で、その手をそのまま顔に下ろし、涙の跡を指で優しく拭いとる。
「辛かったなァ…」
優しく風がそよいでいた。
ーーーーーー
「ここ、どこ…」
街灯もなにもない真っ暗な道を歩いてる。
とりあえず真っ直ぐ、進む。
ほんとに真っ直ぐ進んでるのかもわからない…怖くなって立ち止まる。
「怖い…だれか、誰かいませんか?」
返事はない。
すると耳元で声が聞こえてきた。
「タケ、いいか?このまま真っ直ぐ進むんだ。次第に光が見えてくる…」
この声…
「研二!一緒に行ってくれるんだよね?」
「ごめん、タケ。俺は行けない…」
「え、なんで?」
「だって俺は………そうだ!ちょっと伝言頼まれてくれよ!」
「う、うん…」
「伊達、ゼロ、諸伏そして松田に、ヨボヨボのじーさんになって天寿全うするまでこっちくるんじゃねーぞって伝えててもらってもいいか?」
そして…
「タケ、突然いなくなってごめん。俺のこと忘れてもいいから、絶対、幸せに、なれよ…」
後ろから抱きしめられる感覚がした。フワッとタバコの匂いが香る。
「私、研二のこと、わすれるなんて、できないよ…」
「じゃあさ、無理して忘れないでいいから…でもお願いだ…幸せになってほしい。これは本音」
「うん…わかった…」
さあ、もう時間がない。行くんだ。
背中を押されて真っ暗なところに見えた光に向かって歩き出した。
「さようなら、俺の、愛しい人」
16. pray
前◯次◯小説トップ
top