22.





「不死川先生。この前発注されてた2年生のテキストが届きましたよ。数学準備室に運んどきますね」
「あァ。わかった…って…結構量が多くて重いから俺が運ぶ」


カナエ先生とのランチタイムが終わってお昼の業務に戻ってしばらくした頃。
業者から数学のテキストが届いた。
職員室にいた不死川先生に声をかける。



「いやいや、先生お忙しいからこのくらい事務員がしますよ!」
「2年生全員で何人いると思ってンだよ」
「何回かに分けて運ぼうかと…」
「なら2人で運ぶかァ。そしたら一回で済むだろ?」
「は、はい…」





数学準備室は4階。
いつもならすいすい登れる階段が、テキスト抱えてるとこんなにきついと思わなかった。



数段先を登っているのは私の倍以上のテキストを抱えている不死川先生。


「ホラ、マツ。あと少しだァ。頑張れェ」
「は、はいぃ…」



ゼェゼェと息を切らしてやっとこさたどり着いた準備室。


「ここに置いていてくれ」
「了解です。クラスごとに分けましょうか?」
「そうしてくれるとありがたいが…時間はいいのかァ?」
「大丈夫ですよ。鱗滝さんもいらっしゃるので。先生は他の業務されてください」 
「なら頼む…」




テキストをテーブルの上に置き、名簿を預かり、クラスの人数分ずつ分けていく。




「はい!これでおわりです!」
「早かったなァ。助かった。ありがとう」
「いえいえ、このくらい慣れたもんですよ」


「ホラ、これ飲めェ」と渡されたのはマグカップに入った温かいココア。


「え、これって…」
「俺ら教科準備室にいることも多いからなァ。簡易的な給湯室もそれぞれの準備室にあるんだよ。そのマグカップも綺麗に洗ってあるから飲めェ」



そう言って不死川先生も自分のマグカップに口をつけた。



「おいしい…」
「そりゃミルクたっぷりだからなァ」
「ふふふっ…不死川先生って可愛いですね」
「アァ?なんだってェ?」
「だって…甘いものが好きなのは知ってましたけど、ココアを牛乳で作ってくれるとは思わなかったんですよ」



「ウチは昔からココアはミルク派だァ…」と言いながらマグカップを口に運ぶ不死川先生を見ながら私も飲む。


「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」
「そりゃよかった。カップはそこ置いとけェ。後でまとめて洗う」
「いえ、このくらい洗いますよ。不死川先生も飲み終わったらカップもください」


シンクにマグカップを持っていき、スポンジに洗剤を含ませて洗う。


「なんか気を遣わせてしまったなァ」
「そんなことないですよ。すぐ洗い終わりますし」


長椅子に座ってる不死川先生からカップを受け取り、一度すすいでスポンジで洗う。



「マツ…最近調子どうだァ?」
「通常運転ですね」



スポンジの泡を水で流し、水気を切る。
その後すぐにマグカップを2つ、すすぐ。



「目の下のクマ、どうしたァ?」



すすいだマグカップをカゴに入れ、ハンカチで手を拭き、不死川先生の方を向く。


「……そんな酷いですか?カナエ先生にもさっき同じこと言われて…」
「…んで、眠れてねェのか?」
「昨日はちょっと夜更かししちゃって。最近はあの頃よりよく眠れてるんですよ?」
「そうかよ」


不死川先生が椅子から立ち上がり、出入り口のドアを閉める


「え、先生?」
「ちょっとコッチに座れ」


長椅子に座っている自身の横を指して言った。


「早く座れェ」
「は、はい」


「失礼します」と一声かけ、不死川先生の隣に少しスペースを空けて座る。



すると突然肩をひかれ、目の前の風景がグワンと変わった。



私の目の前にさっきまで作業していたテーブルの脚と、不死川先生の足。
これって…膝枕…??
起きあがろうとしても肩を押さえられてて起き上がれない。


「15分。少しここで目をつぶってろォ」
「いえ、起きます…下に戻らないと…」
「みんなマツが俺の手伝いをしてること知ってるから大丈夫だァ。もし無理矢理戻ろうとするならこっちも力ずくで抑え込む」
「ひぇ…パワハラ……」
「あァ?黙って眠れェ!」
「はい…でも、膝枕、足が痺れませんか?」
「そンなヤワな足してねェよ。ほら、おやすみ」


優しい声に少しドキッとして、顔が赤くなったかもしれない。
それに気づかないふりして目を閉じた。


ココアを飲んで緩んだ心とリズム良く頭を撫でられてホッとしてしまい、私は少しの間だけ意識を飛ばした。




22. sleep




小説トップ






top