始まりの予感


「メルヘンの国ィ?んなモンねえよバカ」

ギンの字は昼間クラスで散々いじられたあと、帰ってきてそうそう親に追い打ちをかけられた。

「102回も同じ夢だぞっおかしくないのかよ!!?」

「ハイハイハーイ。おかしいのは君のアタマ!また矢沢先生から電話かかってきたんだよ!『おたくの息子、寝てばっか』って…よく寝る上に起きてても夢見てるからタチ悪いよ!!」

「息子の夢完全否定して楽しいか―――っ!!母ちゃん童話作家だろが―――っ!!」
「作家でもおとぎの国は信じとらん!!あんたのゴハンやメガネやエンピツのために働いとるんじゃあ―――っ!!」

「チクショウっグレるぞ!!!」
「ドロップアウトすんなら体力つけなバカ!!」



その夜。ギンの字が怒鳴られている間、私も同じように親にどやされていた。

「なんどりゃあこの点はァ―――ッ!!!数学31点、国語42点、理科12点、社会12点、英語53点!!平均だけは取れゆうとろうがァ―――!!!!」

「へいへい」
「なんじゃその言い草は!!その年なんだからせめて彼氏の一人や2人作れやこの非リア充!!」
「うっさい!!べんきょーとカレシは関係ないだろ建築オタク!!そんなんでよく親父落とせたなアホンダラ!!」
「アホはあんたじゃわれェ!!一から鍛え直したる覚悟せい!!!!」

『繋がったわ!!!!』

「なっ停電!?」
「逃げなさいアカリ!!」


《トンネル―――カイツウで―――ス♪》

「お姉ちゃん!?」

その騒ぎに宿題をしていたランが2階から駆け下りてきた。

「う、うわ…!!」


「行かなくちゃ」
「家の外は平気だよ!!何やってるんだいラン、早く一緒に逃げるんだ!!」
「お姉ちゃん早くこっちに!!」


「ラン、家の誰もが認めてくれなくても、私の話アンタだけは信じてくれたよね」
「今は別だよ!!いっちゃいけない!!戻ってきてお姉ちゃん!!」


「私には見えるの。家の中があの世界に繋がってる。――――だから行かなくちゃ」



《見えテル……みたいですネ?》

「これを逃したら、チャンスはもう二度と来ない気がするから!!」


母さんは少し黙ったあと、顔を上げてあるものを私に託した。

「ホントに行くんだね。これを持って行きなさい」



――――それは一枚の、家族の…写真だった。



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