16

 実況と進行を任される彼は、どうやら自分の仕事には誇りがあるのだろう。彼の所属側が負けてもなお、滞りなくゲームは進行していた。
 “戦利品”を選ぶ段階で、迷いなくわたしを見たルフィを一度ナミが制し、彼女は三回戦に出場する“オヤビン”を取ってしまえば不戦勝で勝てるのでは、と提案していた。ただ、それは“ピーナッツ戦法”という何やら海賊の美学には反する行為のようで、ナミはブーイングを受けてしまっていた。
 まったく、海賊の美学に反するんだかなんだか知らないが、美人に口撃するとはいただけない。ま、そんなことで心が折れる彼女ではないけれど。

『さァさァしかし!泣いても笑ってもこのゲームの行方の決定権は、勝ち組の船長モンキー・D・ルフィにあるよ。さァ、誰を選ぶのかな〜〜?!』

 ただし、ナミの提案を受けるということは、同時に“オヤビン”が仲間になってしまうということで。…それは嫌だな、本当に。
 そう思うのはみんな同じだったらしく、そろって拒否しているのが見えて思わず笑ってしまった。

「ヨウ!帰って来い!」

 ルフィの呼び声に顔を向けると、ルフィとその後ろに控えるみんなの笑顔が目に入る。
 わかっていたとしても、嬉しかった。
 呼び声に応えるためにすっと立ち上がる。が、服をつかまれていることがわかって苦笑いを浮かべた。なんだか妙に好かれてしまったものだ。

「できればあなたとは、海賊とは関係なく出会いたかったなあ」
「え?」

 そうしたら、きっと友人としてお茶でもできただろう。でもそれは、もしもの話。

「いや、何でもない。…まあ、もしわたしが欲しければ、“オヤビン”が次の試合で勝ってわたしを奪えば良い。わたしはルールには従うよ」
「え?あ、うん、そうよね!そうよ!次の試合でオヤビンが勝てばヨウとはずっと一緒だわ!ふふふ、オヤビンは負けないもの。すーぐ取り返してあげるから待っててね♥」

 でも、それももしもの話。だってルフィは負けないから、絶対にね。

「それじゃあね、ポルチェさん」

 もう隣に立つことはないだろう彼女に軽く手を振って、仲間の元への帰路を急ぐ。ちなみに通りがかりに目があった割れ頭には鼻を鳴らしておいた。ホント嫌いです。
 そう長い時間離れていたわけではないけれど、形式上は別々になってしまっていたからか随分と長いこと離れていたような感覚に目を細めた。

「ただい、っとと」
「ヨウ〜ぼばべび〜〜!」
「まるで船医さんが取られていたみたいね」
「男が泣くな」
「我がプリンセス〜!全身全霊を君のために捧げた戦い見てくれたかーい?」
「にしてはハラハラさせやがって!」
「ホントよ!もう、まだあと一戦あるなんて気が滅入るわ…」

 泣きながら抱きついてきたチョッパーに、それを笑顔で見守るロビンと顔をしかめるゾロ。ハートが飛んでるサンジに、その背中をバシッと叩くウソップと、ため息をこぼすナミ。

「やっと笑ったな、ヨウ!」

 そして、わたしが海賊たる理由のルフィ。
 加わったのはつい数日前だというのに、すっかりここがわたしの居場所になっていたらしい。

「うん、ただいま」

 わたしが海賊になるきっかけはルフィだったけど、今海賊をやりたいと思うのには、彼らの内一人だって欠けてはいけないのだと、そう確信した。


『さーてさて、第二回戦誰も予期しなかった“グロッキーモンスターズ”の敗退により、両組メンバー移動はゼロに戻ったよ!』

 イトミミズの進行に従って、第三戦である“コンバット”の準備は着々と進んでいた。
 まずはフィールドメイクと称する場所決めが行われ、フォクシー海賊団の船上と決められた。二人以外の立ち入りは禁止、武器などあるものは使用可能で、船外に相手を出せば勝ち。ざっくり表現するとそういうルールだった。
 両船長によって決められた、という形にはなっているけど、彼らのやることだ。おそらくあれも作戦の一つで、もともと船でコンバットをするつもりでいろいろと仕組まれているに違いないけど、もう何を言っても無駄だろう。それに、ルフィの気合いも十分な様子だし、そう騒ぐ必要もなさそうだ。

 余興に前座に出店にと、周囲はそれなりに盛り上がりを見せる傍ら、先の試合で受けた傷をチョッパーから手当てされている二人のそばで、包帯くらいなら巻けるからとわたしも少し手伝いをさせてもらっていた。

「お疲れ様でした。二人のおかげでわたしは帰ってこられたよ、ありがとう」
「別に、お前のために戦ったわけじゃねェ」
「でも、結果的には二人が勝ってくれたおかげだからね。だからありがとう」
「おれはヨウのために戦ったよ〜惚れた〜?!」
「はは。うん、本当にかっこよかったよ。二人が戦う姿は初めて見たけど、とっても力強い戦闘だった。ねえ、チョッパー」
「ああ!あん〜なデッケー奴ら投げたり蹴ったり!」
「ゲームじゃなければ、きっともっと強いんだろうね。今回はただの見学になっちゃったから、次こそはご一緒させてもらいたいなあ」

 二人とも、強さを褒められるのはそう嫌なことでもないらしく、サンジは素直に笑顔を浮かべ、ゾロは少し表情を緩めていた。
 それがなんとなくおもしろくて笑っていると、それを見ていたロビンも笑っていることに気づいた。

「ん?」
「いえ、やっぱり何でも屋さんは緩衝役に最適な人材だったわと思って」
「緩衝?」
「ええ」

 なんだかよくはわからないけど、まあロビンが笑っているんだからまあいいかと一緒になって笑っていると、壇上で応援チアなるものをやっているポルチェさんが、こちらに向かって大きく手を振っているのに気づいて、少しだけ振り返しておいた。

「ねー」

 すると、何やらおもしろくなさそうな表情で、ナミが背後から首に手を回してきた。
 お、役得?って、違うか。

「ナミ、どうしたの?」
「ヨウったら、随分あの子と仲良さそうじゃない?そんなに気に入ったの?」

 このナミの様子、まるで、友達を取られて拗ねてるみたいな…、ん?これは、ちょっと嬉しい、かな。つまり、それはわたしのことを、仲間として大事に想ってくれている、と。
 でもそれを言葉にしてしまえば、きっと彼女のプライドに触れてしまうことになるだろうからと、少し笑みを深めるだけに留めて、距離の近い彼女の顔を見返した。

「まあポルチェさんのことは嫌いじゃないけどね。でも彼女には悪いけど、この先どんなことがあっても、一味のみんながわたしの一番であることは変わらないよ、ずーっとね」

 そう、思っていたことを素直に言葉にすれば、ナミは一瞬動きを止めて、一息ついた後にため息をもらした。

「…ねェヨウ。あんたって…」
「ん?」
「…いえ、何でもないわ」

 結局その意味はわからなかったけど、ナミがそう言えば呼んでいたんだとルフィに声をかけに行き、そのルフィは一緒にいてセコンド役に決まったウソップと共に試合の準備へと向かっていった。
 趣味の悪いピンバッジをつけているのには目をつぶって、ルフィには心配していない旨だけ伝えておいた。男には、信頼こそ最大の応援だろう。

 花火が打ち上がり、それは間も無く始まるという合図であり、サンジが見つけてくれていた席に一味で集まった。すると空には黒煙が上がり、どういう仕組みかはわからないが空にそれぞれの船長の手配書が浮かび上がる。

「わあ、すごいね」
「え?オヤビンがか?」
「まさか!あの手配書さ、よくできてるよね」
「…ヨウって、オヤビンのことすげェ嫌いだよな」
「うん。興味もないよ」

 笑顔で膝の上のチョッパーにそう返しながら、サンジが買っておいてくれたコーラに口をつける。コーラって、たまに飲むととっても美味しい気がする。

『さァそして対するは、“東の海イーストブルー”出身!少数派海賊団のリーダー!懸賞金一億ベリーの男!』

 実況の煽り文句を聞き、ついに登場かとルフィに目を向けた。

『モンキー・D・ルフィ〜〜!』

 ルフィは被っていたマントを豪快に脱ぎ捨て、雄叫びと共にその姿を現した。
 その姿は、所謂ボクシングに適した格好にアフロヘアという出で立ちで、なんとなくらしいなと笑ってしまった。

「……ウソップがセコンドについたのが間違いだろ」
「おおー!ルフィカッコイイ〜!」
「ははは、流石だな〜」
「やるなァ!ブラザー魂が燃えたぎってる」
「まじめにやってほしいわ…」
「ウフフ、素敵じゃない」

 仲間内での評価は様々だが、もうセコンドも退場らしく、いよいよ試合が始まるようだった。ルフィの方も、アフロも手伝ってかその気合いは溢れんばかりに見える。

「ルフィ勝て!とにかく勝て!!」
「ビームに気をつけるのよ!ビーム!」

 それはこちらだけではなく、相手方も同様だった。会場の盛り上がりも最高潮に達し、ここにいる全ての視線が、船首の上に立つルフィ達に注がれている。
 さあ、いよいよだ。

『“銀ギツネのフォクシー”VS“麦わらのルフィ”!
両海賊団主力対決にその全ての命運がかかるっ!
――そして今…!決戦の、ゴング〜〜〜ッ!!』

 鳴り響くゴングと共に、両者が動き出した。
 早速繰り出したルフィの攻撃をかわし、相手はすかさず例のビームを放つ。ルフィはそれを受けてしまい、遅くされている間に蓄積された攻撃の力は、その効力が切れると同時に解放される。

「うわっ!三十秒分のツケがきた!」
「ルフィ〜!」
「落ちる!下は海よ」

 そうしてその衝撃で海上まで吹き飛ばされるものの、自身の能力で船首に戻ったルフィは、闘志再び、船内の方へと入っていった。ただ、ここからでは見えないけれど、おそらく中は戦いやすいとは言えない状況のはずだ。相手はこのゲームを熟知し、それ相応の準備をあの中に用意しているはずだ。
 ルフィの戦い方は勢いのあるパワー対決には向くけど、やっぱりあの手の能力や戦闘には向かないかもしれない。

「ルフィー!ボディーだボディー!」
「お、ウソップ」
「試合はどうなってんの?!ルフィ〜」
「うーん見えはしないけど、面倒な感じだね。やりづらい相手だろうし」
「え?!」

 直後、わたし達にも見える大きな爆発が起こり、実況が伝えたのは、相手有利な状況だった。たまたま、あった砲弾での攻撃が決まった、と。決まった?いや、それは違う。

『えェ〜〜?!何と麦わらのルフィ生きているよ〜〜!
あの近距離からの大爆発を回避していた!何というスピード!こ…これが億クラスの賞金首の実力なのか!!』

 向こうは余程ルフィの力を下に見ていたのか、実況のみならず驚きの声が各所から上がっているようだ。
 まあ、まだ序盤も序盤。お互いまだ探りの段階だろう。

「あったりめェだ〜!」
「さっさとケリつけろー!」
「うん、流石。でも向こうもこのゲームには慣れてるし、あのビームもある。ルフィはあの手の敵は苦手そうだから、まあそう一筋縄ではいかなそうだなあ」
「ってヨウ!何冷静に分析してんのよ!」

 まあそう焦っても仕方がないとは思いつつ、度重なる心労でストレスフルなナミの心をえぐるのは良くないかと、軽く謝ってからルフィ達の気配を追う。
 この距離なら気配で動きを探るのはそう難しいことでもないけれど、やはり見えるほどの情報はない。まあ気休め程度というか、今は他にやることもないし。

「ん?」
「え、何?!」
「ああ、いや、落ちて……流されてる?」
「何だよそれ!ってルフィだっ!」
「何であんなトコから?!危ない!海に落ちたら敗けちゃう!」

 詳しくはわからないけど、隠し通路のようなものに落とされて、何かによって船外に排出された、ということかな。
 心配するナミをよそに、ルフィは腕を船に引っ掛けて身体を持ち上げた。

『さてさて、一難逃れた麦わらのルフィをフォクシーピンバッジが不気味にいざなう!船の中はオヤビンの庭!誘いに乗るのか“麦わらのルフィ”!』
「ルフィだめ!絶対ワナよ!色々仕掛けてあるに決まってるわ!」

 まあ、ナミの言う通りに違いないだろうけど、ルフィは素直な人だからなあ。

『麦わらのルフィ迷わず突入!戦いの舞台は船内へ!実況の私も入るわけにいかない!これこそが“コンバット”!決闘者達の一対一の!孤高の勝負が始まった〜〜!』

 うん、ルフィらしい。でもそれが彼の良いところだとわたしは思う。
 と、ナミが項垂れるのをよそにクスクス笑った。

 例え実況だろうと中の様子を見ることはかなわない。誰もが何もわからない状況で待つというのは、それなりに不安をあおるようで、一味の半数は何となくそわそわした様子に見えた。

「ヨウ、中の様子をはどうなんだ?」
「うーん。わたしも見聞きできるわけじゃないから詳しくはわからないんだけど、今は船首に近い辺りにいるみたいだね」
「ルフィ、大丈夫だよな…?」
「敗けやしねェよ……!」
「そうさ、ルフィだもんな」
「ルフィで…ーアフロだからだ!」
「ルフィだからで充分だろ……あんなクソギツネ」
「何でアフロをパワーアップだと解釈してるの?」
「だけど強そうに見えたわ」
「まあ、ボクシングのチャンピオンといえばアフロな気もするよね。あれ、でも一人だったかなあ」
「どうでもいいわよ!そんなこと」

 ナミはアフロの効果が信用ならないらしく、比較的近くにいた相手方の船員もルフィのアフロがもたらす強さに言及していることにツッコミを入れていた。
 それがおもしろくて笑っていると、大きな爆煙がルフィ達がいる辺りから巻き上がる。

『おっと甲板で動きがあったよ!
 さァ形勢はどっちだ?!はたまた勝負がついたのかな〜〜?!』

 激しい爆煙が徐々に晴れ、そこに姿を現したのは、

『立っているのはオヤビンだ〜〜〜〜!オヤビ〜〜ン!
一方麦わら!余程ヘビーなパンチを貰った模様〜〜!』

 両手を掲げて高笑いする敵と、倒れたルフィ。やはり、そう一筋縄ではいかなかったようだ。

「うわー!」
「ルフィ〜〜!」
「ばかな…」
「どうしてただのパンチでコゲるのよ!何したの?!」
「!見て」

 ロビンの声で注目すれば、再び立ち上がったルフィ。その姿は確実にダメージを負っており、少しだけ眉を寄せた。

『立った〜〜!麦わらのルフィ!もうノックダウンかと思いきや立ち上がったよ〜〜!』

 しかし、この機を簡単に逃す相手ではない。巧妙なビームの使い方で、ルフィは再び攻撃を受けてしまった。
 一つ一つの攻撃力自体はそう大したものではなくとも、それが蓄積した力になって襲ってくるのはやはり効果があるようだ。

『今度こそ…!いやまだ!
立ったァ!麦わらのルフィ〜!』

 ただし、その姿は傷だらけでフラついている。そんな身体で再度ノロノロビームによる攻撃を受けるルフィを黙って見ていられないと、席から身体を乗り出してしまうウソップの気持ちはわからないでもなかった。
 でも、

「これじゃリンチじゃねェかよォ!!」
「…ウソップ、これは勝負だよ」
「何だと?!」
「ルフィがあんなに傷だらけなのは苦しい、それはわかるよ。でもこれは勝負なんだ、そう、仲間をかけたね。よく見てウソップ。ルフィは今、戦ってるよ」

 言葉が届いたのか、ゾロがウソップを抑えていた手を離しても、もうウソップは抵抗をしなかった。
 不屈の想いで立ち上がるルフィを、皆一様に見つめている。

「…おれの仲間は…誰一人……!」

 そんな中で絞り出される、しかし、確かに聞こえたルフィの声。

「死んでもやらん!!」

 その気迫に、会場は一瞬、波を打った様に静まる。
 こぼれるようにルフィの名前を呟いたナミの声を拾いながら、わたしは思わず笑っていた。

『また立った麦わらァ〜〜!』

 そう、わたしはルフィのこういうところに敵わないなあって、彼の仲間になることを決めたんだった。こんな彼だからこそ、彼の夢を共に追いたいと、その背中を守りたいと思うんだ。

『倒されても倒されても立ち上がる!』

 仲間達が口々にルフィの名前を呼んでいる。
 きっと彼らも、あんなルフィだからこそ、仲間になろうと決めたんだろう。

『仲間の為!そうだ、これが“デービーバックファイト”!私涙で…!涙で前が見えばぜん!』

 ルフィの心意気に何かを感じたらしい敵船の船員達も、ルフィの名前をコールしている。
 ただ、空気は間違いなくルフィにあると言えるが、連続した攻撃でギリギリの状態なのもルフィの方だ。何か、何かあのビームを回避する手がないと、また同じ手を食うことになる。

『仕掛けるのはオヤビン!』

 やはり、再び仕掛けたのは敵方。ルフィはビームから逃れることはできず、再び恰好の的にされてしまった。
 ビームが解けた一瞬で逃げようと試みるも、スピードが足りずにパンチ、そして砲弾と二重の攻撃がルフィに撃ち込まれてしまった。

「なによ………!そこまでしなくても……!」
「……ナミ、大丈夫。見て」
「え?」

 確かにギリギリだ。ビームから逃れる力もない程に。

『た!た!た!…!また立ったァ〜〜〜!』

 でも、それでもルフィは負けない、絶対に。
 目をそらさずにルフィを見つめていると、何があったのかはわからないけど、ルフィの口が、おれよ勝ちだ、と動いたのがわかった。
 そして直後、両者の凄まじいパンチの応酬が始まった。それは最後の力を振り絞るような、猛烈なパンチ。

「ルフィ…!ルフィ〜!やっちまえ〜〜!」
「倒せーー!」

 着実にルフィはパンチを食らわせ、それに耐え切れなくなったかのように例のビームが撃たれた。
 もう何度見たかわからない、ビームが放たれた時に広がる光がルフィ達を包み混む。

「何だ?」
「……動かない………!」

 その緊張が場を包んだその時、膝をついたのはルフィ。
 ああ、ルフィ、やったんだね。

『た!…倒れたのは麦わら……!いや!違う!動いたのが…麦わら!これは一体どういう事だァ?!』

 倒れたルフィのグローブからこぼれ落ちたのは、鏡の破片。それはつまり、鏡でビームを反射させて逆に敵に食らわせた、ということだ。あまり考えるのは得意じゃない彼だけど、その勝負勘は流石と言える。
 最後の仕上げだと、ルフィは腕をブンブンと回し、そして、

「"ゴムゴムの… 連接鎚矛フレイル"」

 ルフィ渾身の技が顔面に炸裂した。

「はあ。うん、もうあとは待つだけだ」
「……あと八秒」
「え?………え?!」
「七…」
「なに?」
「……六…」
「うははは!五ォ〜〜!」

 気づけば会場全体に広がったカウントダウン。その終わりが告げたのは、船首で雄叫びを上げて両手を掲げたルフィの勝利だった。

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