帽子の石と海の向こう

 ルフィはたまに、帽子を外してながめてる。その時は決まってメリーの頭の上に座って、海の向こうを見つめてる。
 おれ、はじめは赤髪から預かってるっていう宝物の帽子を見てるんだと思ってた。もちろんそれもあるんだろうけど、でも最近、帽子についているリボンに小さな石がついているのを触ったり、ながめたりしているらしいことに気づいたんだ。

「なァ、ナミ〜」
「ん?なに、チョッパー」
「ルフィって、ああやってたまに帽子ながめてるだろ?その時、なんかちっちゃい石みたいなやつがついてるのを見てるのかなって思ったんだけど、ナミはあのちっちゃな石がなんだか知ってるか?」
「えェ、知ってるわよ。あれはピアスね」

 ナミはサンジ特製スペシャルオレンジジュースをすすりながらそう言った。
 いつも思うけど、ホント、サンジのジュースはおいしそうだ!でもおれは男だからもらえないんだけど…。

「ぴあす?」
「イヤリングみたいなものよ。そう言われてみれば、ピアスなんて船長さんらしくはないわね」
「ん?ロビンは知らなかったのか?」
「えェ」

 ロビンはおれが欲しそうにしてるのに気づいたのか、ジュースをひとくちくれた。ロビンは優しいな〜。

「まあ、ルフィも聞かれなきゃ言わなそうだしね。でも別に、隠してるわけじゃないみたいよ」
「ナミは聞いたのか?」
「うん。前、アイツの帽子に穴が開いちゃったことがあってね、その時私が直してあげたんだけど、その時にピアスがついてるのに気づいたのよ」
「へ〜」
「まあその時は、あの帽子を預けた人がつけたやつなんだろうなと思って何も聞かなかったんだけどね。でもそれからしばらくして、チョッパーみたいに、ああやって眺めてるのに気づいて、なんとなく本人に聞いてみたわけ。そしたらなんて言ったと思う?」

 ナミが急ににやにやし出したから不思議に思っていると、ロビンも不思議だったのか、二人で頭をかたむけた。

「あれはヨウ、なんですって」
「ヨウ?」
「確か、船長さんが前に言っていた、もう一人の仲間っていう人のことかしら」
「そうそう。なんか、別々に修行することに決めた時、自分の代わりにコレを持っててくれって渡されたんだって。だから、いつも必ず身につけてる帽子につけてあるんだって。いつも一緒にいれるように」
「へ〜、なんかイイなァ、それ!」
「ふふ、そうね」

 カワイイわよね、とナミも笑っている。

「いつか合流した時に返すらしいわよ」
「そっか。だからルフィはああやって海の向こうを見てるんだな。早くヨウが来ないかな〜って待ってるんだ」
「そうかもしれないわね」

 前にルフィから聞いた話だと、ヨウってやつがどんな感じなのかは全然わからなかったけど、ルフィがイイやつだって言うくらいなんだなら、きっとすっごくイイやつなんだろうな〜って思う。

「早く会いたいな〜」
「まあ、ルフィの話じゃどんなのが来るのか想像もつかないけどね」
「でも、船長さんが一番に決めた人なのだから、おもしろい人なんじゃないかしら」
「ルフィが一番に決めて、それにオーケーまで出しちゃうようなやつが、ルフィ並みにアホじゃないことを願うばかりよ」

 そのあとすぐ、ナミとロビンに特製ケーキを持ってきたサンジが、ついでに野郎どももおやつだぞ〜って言ってみんなが集まったから話は終わっちゃったんだけど、やっぱりおれは早く会いたいな。
 だってルフィが、会うのをあんなに楽しみにしてるんだから!

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