捏造は後編配信前に



「始まりました!ブルーベリー学園とオレンジアカデミーのチャンピオンによる、オープニングセレモニーバトル!」

司会の言葉と共に会場からわれそうなほどの歓声が上がる。その歓声を全身に浴びながらバトルコートへ歩みを進める。
ついに来た。ブルーベリー学園。だけどまさか、あんたとこんな早々に対峙するとは思ってなかったよ。

「クールな眼差しに射止められた生徒は数知れず。我らがブルーベリー学園のチャンピオン、スグリ選手!!」
「スグリくーん!!」
「いけー!スグリー!!」

久々に会ったスグリ。前は前髪を長く垂らし、おどおどとした様子だったのに、今目の前にいる彼は髪をバンダナであげ、胸を張って堂々とそこへ立っている。変わったな、スグリ。垢抜けたね。
そんな彼の紹介に飛び交う黄色い声援。え、羨ましすぎんか。ホームでの試合、ずるすぎる。
私の時もちゃんと声援あるんだろうな。黄色い声飛ばしてくれるんだろうな。これで静まり返ってたら試合放棄して帰るぞ。アウェイでバトルなんて心折れちゃうよ。それでも勝負は私が勝ちますけど。
いいかスグリ、あの日私にトラウマを植え付けたこと許してないからな。何度心抉られたことか。勝つことに罪悪感抱かせるの勘弁してくれよ。こちとらバトルセンスとかわいさが取り柄なんよ。ちなみに苦手なことはサンドイッチ作り。弾け(とぶ)いちごの香り!キュアサクラ!サンドイッチは私に恨みでもあるんかってくらいいつも弾け飛ぶの意味わからんな。
キタカミからパルデアに帰った私があまりにも浮かない顔してたもんだから、ネモ達が励まし会ひらいてくれたんだぞ。持つべきものは地元の友達。ネモの励ましバトルでトラウマ勝利上書きできたからよかったけど、私じゃなきゃ一緒に闇堕ちしてたね。お願いだから負けてもネモくらい前向きに生きてくれ。思春期拗らせんでくれ。

「対する相手は、パルデアからイッシュへ舞い降りた天使、チャンピオン、サクラ選手!」
「ようこそブルーベリーへ!!」
「がんばれー!!」

はっず!!!まって、確かに私がキュートで天才で誰をも魅了しちゃうのはわかってるんだけど、それを知らない人たちの前で大っぴらにされるのは……。正直気持ちがいいね。はいはい、ビューティーエンジェルが通りますよっと。誰もそこまで言ってない。
あと私の時も好意的な声があがってよかった。沈黙かブーイングの嵐だったら私のウルガモスが火を吹いてたところだよ。

「向こうのチャンピオン、あまり強そうじゃないな」

おっとウルガモスが火を吹くか??
おいおい聞こえてんぞ。ちらっと声のした方を見ると気まずそうに顔がそらされる。お前か!!手ェ出るよ!!ゼイユちゃんの!!姉貴、今どこかで見ててくれてるんでしょう?手ェ出るの今っすよ!!
それはそれとしてあいつの顔覚えたからな。私の勝負見てその強さに鼻水垂らして腰抜かせ。ひいひい泣いてる姿、スマホロトムで記念に撮ってやるよ。やり口が汚い。

「顔覚えたべ」
「え?」

ぼそりとつぶやくスグリ。珍しいね、今スグリと私、シンクロ率100%だったよ。一緒に使徒倒しに行けちゃうよ。
呟きの詳しい意図はよくわからないが、スグリも私と同じく失礼な言葉を吐いた生徒を見ていたし、もしかして文句言ったあいつをチャンピオンとして粛清してくれるってことか?ゼイユちゃんの背中に隠れてたスグリが?あんた、立派になって。これでもう私に負けてもへたりこんだりしないね。チャンピオンのそんな姿、きっとみんな見たくないもんね。自分が勝つこと前提で進んでる私の鋼の心よ。これで負けたらまじでへたりこんじゃうからそのときは優しく慰めて。自分にはカミッチュの蜜くらい甘い。

「サクラは強い」

突然低く大きな声でそう言葉を放つスグリ。わーきゃー言っていた周りも一斉にしんと静まり返る。
スグリ、やめなって。もしこれで私が負けたら本当、あんたにトラウマ植え付けるレベルでへたれこむよ私。わああああ!って叫ぶよ。わかってたけど……!って叫んじゃうよ?負けんけど。
もう暫くはいじり倒してトラウマの恨みはらさせてもらおうと思う。どうかルカリオとか心の読めるポケモンはこの場にいないでくれ。

「おれは強いサクラの横さ立てるように、ずっとけっぱってきた。今度は絶対、おれが勝つ」
「私だって負けないよ。アカデミー背負ってるからね」
「それでこそサクラだべ」

ニヤリと笑みを深めるスグリ。あんた本当変わっちゃったね。前はにへへってかわいらしく笑ってくれてたのに。これがBSSの弊害。私だってできるならオーガポンとスグリが笑い合ってるエンドがよかったよ。けどオーガポンにもオーガポンなりの考えがあったんだな……。あとすまん、オーガポンは手持ちにいれてないんだ。私はブルーベリー学園でもてっぺんとるつもりだから、最強メンツで来てるのよ。こんなこと言うとスグリに刺されるかもしれんから黙っとこ。何度も願うがどうかルカリオは以下略。

「オープニングセレモニーだけど、本気で行くよ。私強いから」
「軽口たたけんのも今のうちだけだべ。俺のほうが強くなったべな」
「言うようになったじゃん。けど、負けないよ?」
「んなら、賭けすっか」
「賭け?」

スグリ、そんな自分の首しめんでも……。だって、悪いけど私、このおれさまが世界でいちばん!つよいってことなんだよ!ってことだから。それは負けフラグ。
スグリの考える賭け事がどのくらいの規模のものなのかわからないが、闇落ちしたとはいえ、もとはキタカミが産んだ純粋ボーイ。私に夢中になってることをねーちゃんに暴露されて赤面したり、お小遣いでリンゴ飴買ってくれたりするような子だぞ。
おれが賭けに勝ったら、また友達として仲良くなってほしいとかそういう内容じゃないか?絶対そう。そんな賭けとかせんでもわたしゃ初めて会ったあの日からずっと友達だよ。待って、そう思ってたのは私だけだったってこと……?え、いつの間にか私、友達の称号剥奪されてたの?勝手に想像して勝手にダメージ受けた。その事実をみんなの前で晒されるってこと?勘弁してくれ。

「おれが勝ったら、」
「待って、賭けなんかしなくてもはなから私はずっとそのつもりなんだけど」
「は?!」
「そんな驚かないでよ、なんだよ、そう思ってたのやっぱ私だけだったのかよ」
「まっ、え、」
「わかるよ、あんなことがあったから……けど、私はずっとそのつもりだったからね」
「わやじゃ……ほんまにわかっとんかわからんけど、それでいいべな?」
「え、いいも何もそう思ってたって」
「んだば、サクラは俺の婚約者だからみんな手ェ出すな」
「は?」
「これはどういうことか、よくわからない間にチャンピオン同士が婚約関係になっていた!バトルは始まっていませんが、大変盛り上がってまいりました!!」

うおおおおお!!とかきゃああああ!!とか歓声や悲鳴があちらこちらからあがる。
待って、え、誰と誰が婚約者だって?司会の人がチャンピオン同士って言ってたけど、まさか私とスグリってことは……。え、そういうことなの?
スグリを見ると目を細めてにんまり笑っている。

「ほんまはおれが勝ったら嫁さ来い、って言おうと思ってたけど、そうかそうかサクラははなから嫁さくるつもりだったんだべな」
「いや、違っ、私は友達かと、」
「サクラ、おれ聞いたよな?ほんまにそれでいいかって。それともまーた嘘つくべか?」
「くっ、ずるっ!」
「おれはなんもずるしてね、サクラが勝手に話進めたんだべ」

にやにやしながらそう言うスグリ。しかも途中でトラウマ呼び起こすなんて卑怯な真似を。誰だよキタカミが産んだ純粋ボーイとか言ってたの。もうこいつイッシュにかぶれてるわ!キタカミの産んだあの無農薬スグリはどこ行っちゃったの。

「ま、それはそれとして、勝負はおれが勝つから。本気でけっぱれな、俺の嫁」
「はああ?いろいろ思うことはあるけど、一番は勝つのは私ってことよ。一瞬で終わらせるから。終わったらちょっとつら貸しな」
「いいべ、キスでもするんか?」
「なっ!」
「スグリ選手、サクラ選手を煽る煽る!これは試合後の展開も見逃せません!明日の学園内新聞の一面はチャンピオンのキスシーンか!」
「まじ、やめな!手ェ出るよ!!ゼイユちゃん助けて〜!!」
「ねーちゃんもサクラが嫁さ来るの楽しみにしてるべ。小姑問題もなくてよかったな」
「私の気持ちも考えな!ああもう!その口黙らせてくれるわ、さっさと始めるよバトル!」

ブルーベリー学園こわいよ。これが初日って私これから大丈夫か。またネモ達が心配して励まし会開くぞ。なんならパルデア組全員でカチコミの可能性も。
兎にも角にも今はこのバトルにさっさと勝ってさっさと退出する。スグリ覚えとけよ


〜〜〜
もろもろすっ飛ばして後日
(あれ?あいつあの時私に弱そうって言ったやつ。何かボロボロでね?)
(サクラ、どうかした?)
(いや、あの人、)
(ああ、サクラのことなんも知らんのに弱そうって言ったやつ。ざまあみろだべ)
(……手ェ出たんか)
(さぁな)
((否定してくれよ……))


ーーー
妄想するなら配信前になんぼでも、って聞いた

2023.10.26




 

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