※「捏造は後編配信前に」のスグリが恋心無自覚ちゃんだったら
ついに始まった、交換留学。私がどれだけこの日を心待ちにしていたことか。
久しぶりにゼイユちゃんと会えること、ブルベ学園のバトルに長けた人たちと戦うこと、そしてなにより喧嘩別れみたいになったスグリとやり直せるチャンスがあるかもしれないこと。それら全てが待ち遠しかった。
けれども、実はそれ以上に心待ちにしていたのはパルデアを一旦離れることである。パルデアのことも親友たちのことも大好きだ。しかし、キタカミでの林間学校を終えてから、なにやら熱い視線を感じるようになりここ暫く気を張る日々で疲れていたのだ。
まあ、これだけかわいいチャンピオンがいたら気にならないはずがないよね。熱視線送っちゃうのもわかる。ちゅ、かわいくてごめん。脳内埋め尽くしちゃってごめん。
けれど、ネモとバトルしてる時もペパーとサンドイッチ爆発させた時も(爆発させたのは私だけ)ボタンと木陰でゲームしてる時もあっつい視線送られると気になって気になって仕方ないのよ。
ただ、自室にいる時は流石に視線は感じず、基本的には外にいる時、それも毎日というわけではない。また、私の手持ちが威嚇したりなどの反応を示さないので悪意ある視線ではないのだろう。オレら強いから何かあったらすぐ動けるし取るに足りない視線か、と考えて放っている場合もあるが。トレーナーに似て自己愛強いのがたまに傷だからなうちの子たち。
そういうわけで気の休まらない日々からはやく抜け出したくて、このブルベ学園との交換留学を心待ちにしていたのである。流石にイッシュまではついてこれまい。それに海の中だからな。どうか離れている間に視線の主は私のことを忘れて他に粘着して欲しい。コルサさんなんてどうかな、奇特な人だから喜びそう。むしろ粘着されそう。失礼。
そんなことを考えながら歓声の響き渡るバトルコートへ足を進める。ブルベ学園のチャンピオンとのバトルだからか、会場の熱気はいつもの数倍だ。
目の前に対峙するチャンピオン、スグリ。キタカミ以来のバトルだが、あんな別れ方をしたから少々気まずい。ドドゲザンもびっくりの土下座泣きで本人より私のHPのほうが削られたからね。わかるか、心の距離が徐々に近付いてきて一緒にお祭りも行って何この気持ちは、これが恋?トゥンク……となっていたのにオーガポンとスグリの仲を悪くする間男みたいなポジションになってしまい恋心をしまわざるを得ない状況になった私の気持ちが。わからんだろスグリぃ。お前はオーガポンに夢中だったからな。初めの頃は私に夢中だったくせに。私はキープだったっていうのね。むきー!
けれど、きっと久しぶりに熱いバトルをすればいくらかあの時のような関係に戻れるはず。……いや、どうかな。これまでのバトル思い返すと、バトルして前向きになる未来ちょっと望み薄かもしれないけど大丈夫?チャンピオンとして精神も鍛えてくれた?スグリが負けた時にどう転ぶのか心配よ。1、まずオーガポンが私の手持ちにいないことにキレる。2、やっぱりおれはサクラに勝てない……!と土下座泣きする。3、サクラはやっぱり強いなにへへと笑う。どれだ、どのムーブなんだい!!
「サクラ、久しぶりだな」
「そ、そうだね」
「おれはこの時を楽しみにしてたべ。今度はおれが絶対勝つ」
「私だって負けないから」
「……どうかな。サクラはキタカミ離れてから、ずっと遊んでたみてぇだしな」
「え?失礼だね、私だってバトルに精を出してたよ」
「そうか?それ以上にペパーってやつやボタンってやつとイチャイチャしてたべな。それにネモってのともバトルしたあとイチャイチャして。チャンピオンは恋多き女なんだな」
「イチャイチャなんて……」
いきなり睨まれながらお前は色恋にうつつを抜かしていたから勝てるわけないと煽られたわけだが、大親友達とイチャイチャなんてそんなこと……。……あったかもしれないな。ペパーとサンドイッチを食べた後眠りこけた私をペパーがお姫様抱っこで運んでくれたり、ボタンの膝枕でゲームしてたり、ネモとバトルの後共同風呂で背中流しあったり……。客観的に見て確かにイチャイチャしてるわ。スグリに言われて気づいたけど、距離感バグ起こってたわ。でも別に恋じゃない。そこは勘違いしてほしくないね、好きな人にはね。
「いちゃついて見えるようなことはしてたかもしれない、けどそこに恋情はないよ親友だから」
「……ふーん、恋情はないんだべな。んだば近すぎだべ」
「それは確かにそう。客観的に見てそうだなってスグリに言われて思ったよ。けどそのセリフ彼氏か」
「かっ!?」
しまった、夢女の私が出てしまった、彼氏みたいでハッピーという気持ちが口からポロリ。
それはそれとして、もう一つ訂正することがある。私はわりとまじめにバトルと向き合っていたということだ。確かにみんなとイチャイチャもとい羽伸ばして遊んでた日もそりゃあるよ?しかし、授業だってまめに受けていたし、かわいい手持ちたちの技構成を練り直してはネモとのバトルで実践もしている。ナンジャモちゃんにバトル配信しようと言われてそこでもバトルしたし、チャンピオンとしてバトル申し込まれることも多々あったし、いろんな相手とのバトルで経験値を積んでいる。それをスグリは色恋にうつつ抜かしているなんて断言して……ん、断言して、るな。推定ではなく、いちゃいちゃしていたとまるで見たかのように言い切っている。
……もしかしてだけど、もしかしてだけど。
「何でスグリは私がペパーたちと遊んでるって言い切るのさ」
「んなのずっと見てたからに決まってるべ」
黒だー!!真っ黒だー!!驚きすぎてビュティさんばりに目玉飛び出ちゃうかと思った。パルデアで感じていた視線、お前だったのかよ!時代が時代だったらジャンピング前転で回避した後ポケモンで攻撃してたからな。それに私がどれだけモヤモヤした日々を送っていたと……。そりゃスグリならうちの手持ちも威嚇しないわ。私と同じでうちの子達もスグリとの別れ方気にしてたし、私がこれが恋かもトゥンクしてたの知ってるもの。圧倒的いい子ちゃんなのようちの手持ち。どうも、このいい子達私が育てました。
というかわざわざこっちに見にきてたなら声くらいかけてよ。声かけなかったらそれはただのストーカーなのよ。私のことそんな見つめるなんて……。ん?遠いところはるばる見つめに来てたってことはもうそれはさ。
「スグリ私のこと大好きじゃん」
「なっ?!」
「だって私のこと見にわざわざパルデアまでまめに来てくれてたってことでしょ。それはもう愛なんよ。熱烈すぎてびっくりしちゃったよ」
「お、おれは敵城視察のつもりで!」
「敵城視察でそんな度々パルデアまで通わないでしょ。キタカミで喧嘩別れしたと思ってたけど、相思相愛で嬉しいよ」
「……は?え、なん……もう一度言って?」
やば、調子に乗るなって思われたか?ブルベ学園のみんなが見てる中でもう一度言えだなんて鬼か。オーガポン大好きだもんね、鬼様にあんたがなっちゃったのか。
私たちが話していた内容は響く歓声で恐らく審判にしか聞こえていないだろうが、そうだとしても恥ずかしくて言えるわけない。久々にスグリと話せたことと、視線の正体がわかったことで気分がやや高揚していたから言えたけれど、改めて言うにはまだ気持ちが上がりきっていない。むしろ言った後にちょっと冷静になったわ。
「欲しいものはバトルで手に入れて。スグリが勝ったらもう一度言ってあげる」
「言ったな。約束だべ」
「ちなみに私が勝ったらスグリは何してくれるの?」
「サクラが勝ったら……気づいたおれの気持ちさ伝える」
「なるほど、キスしてくれんのね」
「は!?」
「OK、それじゃあ始めよう。嘘ついたらドガース丸のみだからね」
「わ、わやじゃ……まぁいいべ、絶対おれが勝つ」
私が勝った時のエンドは1〜3のパターンではなく、正解は4、私の部屋で「サクラ好きだべ、チュッ」のムーブでした。まだバトル始まってないけど。
まあ俄然やる気出た私が負けるわけない。
あとこれまで視線でモヤモヤした日々の仕返しも兼ねてるからな、覚悟しろ。これからは正々堂々私の横に並べ。
私が想像していたムーブと少し違う動きをされてとまどうまで、あと6匹。
(勝者、チャンピオンサクラ!)
(ま、負けた……けど、久しぶりに楽しいバトルだったべ)
(私もだよ。……さて、握手の最中に水刺すようだけどさ、約束忘れず果たしてね)
(……)
(どうする?あとで私の部屋に来る?それとも、)
(いや、ここでいいべ)
(は?こ、ここ?!え、まっ、)
(チュッ)
(きゃああああ!!!/うおおおおおお!!!)
(にへへ、わや照れるけどおれも押されてばっかりじゃ終われんからな。それにこれでもうサクラはおれのってことがブルーベリー学園公認になったな)
(まだ交換留学続くのに……!)
2023.11.13