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「え、え??」


どうしよう……!こんな人が食事中に倒れるなんて聞いたことがなく、為す術もない!
この人元々持病だったのかな……!?

「あ、あの……!」


揺すって見ようと手を伸ばしたところ彼は「ぶはっ!」と息を吹き返した。

「ん、??」


顔一面に米粒を付けてる彼は現状把握ができてない様子だが、恐る恐る差し出したタオルで私の腕ごと掴んで自らの顔を拭きだした。

周りは特に今の出来事には気付いた様子もなく時間は普通に流れている。い、一瞬だったもんなぁ……!

「あ、あの……!腕……!」
「あ? あぁ……わりィ寝てたわ」
「ね…? 寝てたんですか……?」
「あぁ……昔からの癖みたいなもんでな! それでお前ルフィと知り合いなのか?」
「癖……。 ルフィさんとは縁があって今船に乗せてもらってて、……お探しですか?」


疑問に思いそう聞くとピラリ、と見せられる皺がよった薄汚れた紙。"DEAD OR ALIVE"と書かれたその紙にはルフィさんの顔写真といくつもの0の数字。

「うぉんてっど……?」


wantedの意味をいくつか思い浮かべるが数字とDEAD OR ALIVEに合う意味は1つしかない。

「……ルフィさんはお尋ね者なんですか?」
「そりゃ海賊だからな! 海賊にとって懸賞金は強さ、知名度ってやつで……あー!早く会いてェなァルフィ!」
「海賊……?」
「……お前大丈夫か? ルフィの船に乗ってんだろ?ルフィの船は海賊船で、そのルフィ本人は海軍政府からのお尋ね者のルーキーだぞ」


海賊船……お尋ね者……海軍、政府……

「なにそれ知らない…………」

……私が聞いてないだけ?

ナミさんが持っていた本は海図の本ばかりで、ここが私のいた世界とは違うことなんとなく知っていた。でもそれはこの世界の地理の問題だけじゃなくて……

根本のヒーローと敵の様な、歴史の授業で学んだ海の軍隊海軍と海賊の様な登場人物がこの世界にもいたら…………

それは海賊がヴィランであって………


「そうだ……大海賊時代、」
「……、ある海賊がこの海を一周して、"この世の全てをそこに置いてきた"と言った。……今はその"すべて"を見つけるために海賊が海に多く出た時代だ」
「ルフィさんが、海賊王って……」
「…………」


ルフィさんが海賊王になるって、そんなの海賊を信じてない、知らない私にとっては言葉遊びにしか聞こえなくて

私は……

なんでまたこんな世界に来てしまったんだろう、





ーーーーーー どさっ

「!!? ね、寝た……?」

しかし、そんな呆然としてる暇もないまま


「おい!!じょ、嬢ちゃんそいつもしかして……!砂漠のイチゴを食べたんじゃねェのか!?」


まだ話は、聞きたいことはいっぱいあったのに!あったのにまた寝て……!
この人は考える時間すら与えてくれない。それはまるで破天荒なルフィさんのようで、ルフィさんの親戚だろうか?
てか、砂漠のイチゴって……?


「砂漠にな……イチゴの姿をした猛毒を持ったクモがいるんだ……。間違えて食べた暁には数日後に突然死んでしまう……」
「紛らわしいクモ……!でも店主さん!この人は……!」
「そんな事言ってる場合じゃねェ!その毒は感染するんだ嬢ちゃん離れた方がい「ぶはっ!」い……に…………」


この人寝てるだけなんです……なんて言葉は遅かった。

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