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「る、ルフィさん……!」

バクバクモシャモシャと器用に両手を使って食べる姿は圧巻で、理解する気のないこの状況に呑気すぎると戦慄する。

目の前に海軍の人が立っているのにも関わらず食べ続けているルフィさんは、少し考えた顔をしたあと思い出したようで口の中に入れたものを吹き飛ばしつつ口に一気にご飯を突っ込んだ。

そして掴まれる私の腕。

「もーーあ、あ〜〜〜お〜む〜〜〜〜!!!」
「ちょ、まっ!お金……!」

すぐさま取り出せるだけのお金を取り出して半ば投げつけるようにテーブルに置く。

「ご、ごちそうさまでした!」


どこに向かっているのか分からないが、腕を掴まれてるからには転ばない様にルフィさんの走る速度に頑張って着いていくように足を動かした。

「待てェ!!!てめェは海賊じゃねェって……!」


弁解をしようにも既に遅く逃げゼリフすら吐けない。

少し一緒に過ごしただけで分かったのはルフィさんは何を仕出かすか分からないということ。
だけど……私はそれが少し楽しいと感じている。


考えていないようで、考えていて。
真っ直ぐ進むルフィさんはキラキラ眩しいけど、その眩しさに自分の考えが霞んだ気がしてルフィさんと一緒に過ごすのが楽だった。


「なまえっ!わりィ!」
「っ!!?」


逃げてる間に増援されたらしく追いかけくる人数が増えてくる。私は拉致があかないと判断されたルフィさんに俵担ぎをされそのまま持ち前の跳躍力を武器に高い屋根に登る。

「高い……!」
「誰かいねェか!!? ゾロとかサンジとか……!」


高い屋根に登ったおかげで街一面が広角に見えた。

「ルフィさんあそこ!」

指を指した先には何故か服装を替えているゾロさん達。
ご飯食べて休憩してる時に申し訳ないけど、どんどん人数が増えて手に負えない……!


指を指した方向を確認したルフィさんは勢いをつけたまま飛び降りようとするので咄嗟に首に手を回して落ちないようにするのを忘れようにする。「ゾロ……!」とルフィさんは感動の再会みたいな声を出すが実際にはゾロさんは嫌そうな顔をしているし、ナミさんは手を頭に当てている。分からなくもないその気持ち。


「後ろに……!」
「ぐっ……!」

ルフィさんと、たぶん海賊と見做されてしまった私を捕まえようと海軍の人が技を繰り出す。
海軍の人が伸ばした腕はモクモクと煙になる。この人の個性は煙なのかな……!?

「これで海賊を捕まえるなんてなんて海軍向きな個性…!」


感心をしている間なんてほんとはないんだけど、煙と私の個性じゃ相性は良くもなく悪くもなく対処すべき技がない。そう思っていたら今度はどこから現れたかわからない陽の塊。

「なまえお前感心してる場合か……?
でもな、火の能力のおれと煙のお前の能力じゃ勝負はつかねェよ」
「エース……!?」


声の抑揚からして驚いてるルフィさんとこの人は知り合いだったみたいだが、感動の再会を果たす暇もなく海軍の人から逃げるべく船へと走る。


「ルフィさん……!あの人は……!?」
「ああ……おれの兄ちゃんだ!」

火の個性の……確かポートガス・D・エースさんはルフィさんのお兄さんで…。彼の楽しそうに企む様な顔をして笑うその笑顔は、火の個性と合っているように見えた。

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