16
ユバへの道のりはとても長い。
それは、最初は元気でジュゴンを弟子入りさせたり、頭蓋骨を見つけてはしゃいでいたルフィさんだが次第にその元気さがカンカン照りの太陽の暑さでなくなってくるほどだった。
「ア"ーーーーー」
「ルフィさんしんどそうですね」
「なまえは余裕そうね」
「うーん、体温管理が得意だからですかね」
ほら、とナミさんの腕を掴むと「つめたっ!」と可愛らしい声をあげる。
「え、これ体温管理が得意で済まされていいの!?」
ぺたぺたと私の頬やら腕やらを掴むナミさんは気持ちよさそうにしている。自分からナミさんに触らなくても分かる熱気にみんなはこれを耐えているのかと自分の個性に感謝をした。ルフィさんもウソップさんも私の腕を触り、「きもちいー」とぐだりと寄りかかる。
「……なんですか? ゾロさん、」
じーーっと視線を感じる方を振り向けば、暑さでダウンしてしまったチョッパーさんを急ごしらえで作った筏のようなもので引っ張るゾロさんと目が合った。立ち止まりゾロさんのリアクションを待てば首にペタリと触れる熱を持った掌。
「あーーー、確かにこれはいいな」
自分では分からないためそんなにいいのだろうか。
「んゴラッ、くそマリモ!! 何なまえちゃんに触ってんだ!」
「うるせー、余計暑くなるからあっちいけ」
「なんだとてめェ……!」
喧嘩するほど仲がいいという言葉があるが、この2人はそれに当てはまるのかは疑問だ。
私はサンジさんの腕を掴み自分の頬に当てた。
「サンジさん落ち着いてください、体力奪われちゃいますよ」
指の腹でサンジさんの手の甲を撫でるがやはり男性特有のゴツゴツとした手。 自分からだけど今日は人に触れる機会が多いなあ。
「なまえちゃん……!」
「あ、ごめんなさい…馴れ馴れしすぎましたね」
掴んでいた腕を離して少しサンジさんと距離を取ると、今度は向こうから腕を掴まれた。
「なまえちゃんって……誰でもそうやって…………、いやなんでもない。……なまえちゃんって距離が近いね」
「……? そうですか?」
「うん、おれとしては嬉しいけどナミさん達や俺だけにしてほしいなァ、特にマリモや腹巻きや剣士はやめとけ」
…それ全部同じ人じゃないですか?という言葉は飲み込んでおいた。
距離が近い……初めて言われたな
「きっとルフィさん達と関われたからですかね」
「…そっか」
この短期間で私は変わったのだろうか。
ずっと誰かの後ろで背中を見て歩くことしか知らなかった私は、隣に歩けてるのだろうか。
何か気の紛らわしにと、ジャンケンで荷物持ちを決めると言った笑顔に満ちあるれてあるルフィさんを目にやる。
……いや、きっと私にはその資格はないんだ。
荷物持ちのジャンケンは結局言い出しっぺのルフィさんが負けた。一切遠慮なくルフィさんに荷物を持たせるみんなに少し笑ってしまう。
「なまえもルフィに荷物預けちまえよ!……って荷物ないのかお前」
「あはは、そうなんです……ポケットに少しお金が入ってたくらいなので私のことは気にしないでください」
あ"ーあ"ー悲鳴をあげる頻度が上がったルフィさんに苦笑が漏れる。何か出来ることあったっけ、と思い浮かべ1つ思い付き私は片方の手首をくるくると回した。
「何してんだ?」
「少しでも力になれたらなと思いまして……まぁ、見ててくださいウソップさん」
くるくると回し続けるとそこから液体が球体を作り生まれてくる。
「うおっ!?」
「すごいわ……これがなまえさんの能力…!」
ある程度の大きさになった球体に今度は空いていた左手を添えるとピキピキと小さな音を立てて外側から中心へと液体が凍っていった。
「チョッパーさんこれどうぞ」
「……? エ!?なんだこれっ!?どこから出てきたんだ!?」
バテていたチョッパーさんには見えなかったらしい。
ほんとは何かコーティング出来る物や、袋があれば溶けても濡れなくて済むのだがそんな我儘はこの環境では言ってられない。
「溶けたら言ってくださいね、1度ある液体なら早く固められるので……濡れちゃうのは申し訳ないんですけど…」
「すごいぞなまえ……!おれは毛皮だから濡れても大丈夫だ! でも雪国出身だから暑さには慣れてなくて……ありがとうなまえ」
お腹に固まった氷の球体を乗せるチョッパーさんはとても気持ちよさそうで笑みが零れた。
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