18
ルフィさんの奇行に突然襲われた私は訳の分からないまま、ルフィさんの首に手を回すしかなかった。
「つめてェーなァなまえは!」
正面に向き合ってルフィさんに抱えられる私はなんて恥ずかしい格好をしているのだろうか……!
近い!近いよルフィさん……!
「最初からこうすれば良かったんだ。背中に荷物あるから、前にしたけどなまえの顔が見れていいな!」
腕が背中から脚までぐるぐる巻きにくっつき、意図的ではなくても胸がルフィさんに当たりとても恥ずかしい。
ルフィさんにそういう考えがないこともわかってるから余計に恥ずかしくなってしまう。
「エースも言ってたけどおれもお前の目すきだ!ビー玉みてェで、海を眺めてるみてェだ!」
ルフィさんの言葉には更に恥ずかしくなり額を抑えるが、なんでこの兄弟はこんなとこまで似てしまったのか。
「あー!もう!いやだ!恥ずかしいですルフィさん!降ろしてください!投げ捨ててもいいので!」
「今走ってんだぞ?あぶねェーだろ?」
「そうですよ!なんで私を抱えて走ってるんですか!?そっちの方が危ない!」
「だってよー、岩場に着いたら休憩っていうんだ、どこにあるかわかんねェけど、あちィし、重いしなまえ抱えた方がいいだろ?」
「くっついたら暑いし、抱えたら余計重い!」
「なまえはつめてェ」
こんなコントみたいな言い合いをしたいんじゃないのに……!後ろに微かに見えるナミさんに手を伸ばしても面白そうに手を振られるだけでどうしようもない。
諦めてルフィさんに渋々としがみついていれば「岩場ァ!」と大きな声をあげてスピードを更にあげた。そして辿り着いた岩場の影にみんなの荷物を投げ出し、お約束で私を巻き込みながらごろごろと岩場の影に転がった。
「はぁ〜!なまえにくっついててもあちィもんはあちィな!」
「そりゃそうですよ……」
ごろごろと転がり終わると、満足したのか私を離してくれたのだが私の洋服は砂で汚れている。髪もギシギシするし、砂漠って大変だなあと岩場に寄っかかり目を閉じると「なまえ……鳥が!!」と、騒ぐルフィさんとバシバシ遠慮なく叩かれる肩。
ちょっと今意識が良い感じに寝そうだったのに……!
「なまえ寝るなよ!! 鳥が大ケガしてんだ!…………大変だァア〜〜〜!!!チョッパー!!!」
そう言って後ろについてきてるみんなの元へ岩場から走り寄るルフィさんに台風のようだと呆れた視線を送る。
鳥が大ケガって…………
「ほんとだ……」
ボロボロで呼吸も薄く、個性でどうにかならないだろうかと考え手を伸ばすとニヤリと笑ってバサバサと羽ばたく大ケガをして……いるはずの鳥。
「うわ!ちょっと砂埃が!!」
羽をバサバサと動かす鳥のおかげで、岩場周辺には砂が舞い上がる。何も見えないながらも少し目を開くと、その鳥はルフィさんが放ったらかしにしたみんなの荷物を抱えだした。
「ちょ!それはだめ! みんなの食料とか備品があって……!」
砂漠を越えるのは体力が必要だ。
暑さと、歩きにくい砂で覆われた地面に足元を取られ体力が減っていく。
なのにその体力を付けるための食料……特に水を取られるのは……!
「君たち鳥は空を飛べて食料を探しに行けるけど……!人間は飛べないの……!せめて水だけでも返して!!」
みんなそんなにひ弱ではないと思うけど熱中症になったりしたらこれからもっと過酷になると思うのに…!
なんとか手を伸ばして届いた1つの樽にしがみつく。
鳥が羽を羽ばたかせる音が聞こえ、宙に浮く感覚がするがなんとしてでもこの水の樽だけは……!
「なまえ!!」
身体に何か巻き付いたと同時に砂漠に転がり落ちるデジャブ。ああ、そのまま飛びそうだった私をルフィさんは引き止めてくれたのか。
「なまえ大丈夫か!!? あれワルサギだってビビが……!」
「ありがとうございます……! ルフィさんがいなくなった後に急に鳥が元気になって……!」
状況を理解しようと頭の中で出来事を思い出していると、ビビさん達が駆け寄ってきてくれて私の頭や洋服に着いていた砂を払い落としてくれた。
「ごめんなさい……荷物持ってかれちゃって……、水の樽1つしか死守出来ませんでした」
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