05


「自分でもまだ使いこなせなくて持て余してる状態なんだけど、液体を操れるの。ここは海の上でしょ? 海はもちろん海水で液体だからそれを凍らせて刀を作ったの」

刀以外にもなんでもできるよ、と薄く笑ったなまえは掌をくるりと回転させるとそこには水で作ったであろう小さな竜巻を手のひらで遊ばせた。

悪魔の実の弱点は海に嫌われること。液体だからってその海水の液体を操れるって最強なんじゃねえか…!?と、周りを見渡すと冷や汗をかいてる奴もいればニヤリと笑った奴もいる。



「なまえさんすごいわ……!」
「え?」
「アラバスタはね……砂漠が国の大半を占めていて数少ない水も枯渇してるって聞いてるの…。でもなまえさんがいれば……!」


確かにそうだ。
もし何かあってもなまえの能力で水をだせれば、これから何が起こるかわからない旅の負担も減るに違いねえ。



「私からお願いしたいわ…、お願い、アラバスタを救いたいの!なまえさんの力を貸してください…!ルフィさん…!ここはルフィさんの船だから私が決めることじゃないってわかってる!でも…!」
「いいぞ!」


楽しそうに笑う我らが船長に若干諦めの視線を向けてしまうがわかりきってた事だ。


「まあウチの船に乗ったのも何かの縁よ、助けただけですぐに見捨てるようなマネをする気はないわ。ただでさえ人数が少ないし戦闘要員もたくさんいるわけじゃないんだもの…いいわよね、ゾロ」
「チッ」
「舌打ちしない!」


鈍い音を立ててテーブルの上に沈んだゾロに心の中で静かに合掌する。

「よし!なまえにはこのキャプテンウソップ様を護衛する権利をやろう!」
「自分の身は自分で守るのよ! なまえは私の近くにいなさい!」
「ブーメランだぞそれ」

おれらのやり取りを見て目を細めて笑っているなまえを見てとりあえずはなんとかなりそうだと安心する。
初めはどうなることかと思ったが、良い方向に進むだろうことには違いはねえ。

「短い間ですがよろしくお願いします」
「その前になまえはアラバスタに備えて怪我を治さなきゃダメだぞ!」
「私治癒力には自信あるから大丈夫だよ」
「この船の船医はおれだからな!おれが良いっていうまではダメだ!」

小さい手をクロスさせバツのマークを作るチョッパーに微笑むなまえはその手を取り、両手でするり、と撫でる。

「この小さな手で人を救えるのすごいね、努力の賜だ」

まだドラム島を出てからあまり日数が経ってないからか、感極まって泣きそうな顔をするチョッパーだが1つ気になる。
おれから聞くことじゃねえが、喋る動物に対して何も思わないのかということだ。

「なまえは……おれのこと怖くねえのか?」
「…それはどうして?」


チョッパーはおれ達にドラム島で説明したような事をなまえにも説明をする。その目は潤み、手は震えていた。

「なら私もバケモノだ」
「そ、そんなことない!」
「なら同じようにチョッパーさんもそんなことないよ。むしろ勇気を振り絞って一歩踏み出してここにいるんだ。勇敢だなあチョッパーさん、それに私動物とお話出来るなんて夢みたい」


そのなまえの言葉に涙腺が切れたようにボタボタと泣き出すチョッパー。周りは微笑ましそうに2人を見ているが、ナミは感心したようになまえを見ていた。

だがおれには自ら言った発言になまえは苦しんでいるように見えた。

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